駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

つるかめ算 四谷合不合20240407大問5

つるかめ算>は中学受験の算数で、基礎になる解法です。

旅人算>や<売買損益>など他の単元との複合形式でも多く出題されます。

今日の記事は、<つるかめ算>に関する解説から入りますが、メインテーマは学習塾のカリキュラム難化に関する話です。

 

昨日の記事では大問5の(1)を題材に<樹形図>のことを書きました。 

樹形図の利用 四谷合不合20240407大問5 - 駒澤塾:中学受験の算数・理科

今日は同じ大問の枝番(2)です。 
この(2)もまた、最後の(3)につながる導入問題的な易しめの問題です。 
ところが正答率を見ると、男子48%、女子33%という低い数字でした。 
つるかめ算>は難しい解法ではないので、不思議です。 

 

【問題】

ある回転寿司の店が,マグロの寿司30個,サーモンの寿司を30個,エビの寿司を30個作
りました。
そして,この90個の寿司を45枚の皿に2個ずつのせました。
このとき,皿にのっている2個の寿司の組み合わせは,同じ寿司が2個の場合も含め,すべての組み合わせがあります。
また,次のことがわかっています。
・マグロの寿司がのっている皿は,全部で21枚ある。
・マグロの寿司がのっていない皿のうち,サーモンの寿司がのっている皿は全部で10枚ある。
これについて,次の【 】にあてはまる数を答えなさい。
(2)マグロの寿司が2個のっている皿は【 イ 】枚あります。 

 

【解説】

2個のっている皿の数を尋ねられていますから、逆に「全部の皿にマグロ1個」として考えます。 
マグロの個数は30個ですから、その場合は30枚になるはずです。 
でも「現実は21枚」です。 
皿の数が9枚減った理由はマグロが2個のった皿があるからです。 
面積図を書くと、こんな感じ。 

求める枚数は、斜線部分の面積を求めて高さで割れば得られます。 

 ( 30 - 21 × 1 )÷( 2 - 1 ) = 9

よって  9枚  


つるかめ算として難しい問題ではありません。 
にもかかわらず正答率が低かったのは、次のような理由だと思います。 
★ 問題文で説明されている状況が整理できなかった 
★ (1)の<場合の数>で心が折れた 

 

★ 状況の整理
この問題では多くの情報が一度に示されます。 
ところが、人間が同時に取り扱える情報は最大で7個までです。 
これを「マジック・ナンバー・オブ・セブン」と言います。 
参考記事 2018-05-05:慶應中等部2012年理科:大問4 

慶應中等部2012年理科:大問4 - 駒澤塾:中学受験の算数・理科

多くの生徒が「紙の上に書いて考える」という作業をしません。 
腕を組んで問題をにらみながら考えようとしています。 
情報過多の問題を解くには「紙の上に書いて考える」練習が必要です。 

 

★ (1)で心が折れた 
情報過多で整理ができず、<樹形図>の解き方を思い出せず、
問題を解こうとする心が折れた生徒も多かったかも。 

 

それはさておき、この大問5番のメインディッシュは(3)です。 
前回の(1)や今日の(2)は導入問題の位置付けの前菜とスープ。 
その二つが思いのほか低い正答率になり、はからずも相当数の生徒が重要な解法を未修得であるとあぶり出されました。 

 

大問5番の枝番(3)については解説を次回の記事で載せます。 
男子が9.8%、女子が6.5%という正答率でした。 
そんな出題からどうやって丸をもぎとるか、具体的な手順を解説します。 

 

 

★★★ 以下は四谷大塚のカリキュラム難化に関する考察です ★★★
★★★ 2000文字も有りますので、興味の有る方だけ、どうぞ ★★★

 

今回の合不合判定テストの算数、平均点は男子89.1点、女子82.5点でした。 
過去の回と比べて平均点は高めでした。 

四谷大塚の合不合判定テストは、2021年12月の回から異常に難化していました。 
2022~04~13:合判の算数、難易度がなんか変? 

komazawajuku.hatenablog.com

2021年度は四谷大塚の予習シリーズ全面改訂が4年生用からスタートした年です。 
2021年12月にテキストに先行して合不合判定テストの難度が大幅に上がりました。 
2022年度の5年生用の予習シリーズを見て私はかなり驚きました。 
2022年5月に何本か記事を書いています。

2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧 - 駒澤塾:中学受験の算数・理科

 

合不合判定テストに関しては2022年の秋から難易度が以前のレベルに戻りました。 
でも、カリキュラム自体は(若干の微調整は有りましたが)難化したままです。  
どの科目も前倒しの詰め込み進行になり、記載事項も追加され、
上位レベルの演習問題が増え、基礎レベルが減らされています。 
基礎レベル問題減少の端的な例が基本演習問題集が無くなったことです。 

2023~08−11:四谷大塚の基本演習問題集 

komazawajuku.hatenablog.com

 

2021年度の4年生から四谷大塚のカリキュラム難化がスタートしました。 
今年、2024年度は新カリキュラムで学んだ生徒達の受験本番でした。 

カリキュラム難化の効果は出たのでしょうか。

 

四谷大塚準拠の早稲田アカデミーは御三家難関校の合格者数を大幅に増やしました。 
経営者視点では大成功と言えると思います。 
経営者視点としては・・・ 

 

ですが、生徒及び保護者の立場から見るとどうなのでしょう。 
圧倒的多数を占める中堅層から見て、良い改革だったのでしょうか。 
テキストも問題集も高難度が厚くなり基礎レベルが薄くなってます。 
中堅層が基礎を見直すための教材のボリュームが大幅に減っています。 

 

御三家難関校の合格者数は大幅に増えました。 
中堅層の合格率はどうだったのでしょう。 
YTテスト・Aクラス在籍生の合格率はどうだったのでしょう。 
まだ、その分析はできていません。 
前年度までの実績と同じ視点で数字を比較するのが難しいです。 

 

と言うわけで、ここからは仮説がかなり混じります。 

もし中堅層の合格率が下がっていなかったとすると、それは各教室の先生が相当に頑張った成果だと思います。 
基礎力強化に使える教材が減った中で、中堅層を受け持つ先生は新たな創意工夫が必要になったはずです。 

 

カリキュラムから合不合判定テストに目を移してみると、面白いことに気づきます。 

 

四谷大塚の合不合判定テストは極端に難化した後、昔のレベルに戻りました。 
なぜでしょう? 
難化の弊害が出たからです。 
模試の難度が適正でないと、データの信頼性が悪くなってしまいますから。 
易しすぎると上位生の偏差値に差が付けられなくなります。 
難しすぎると下位生の解ける問題数が少なくなりすぎます。 
2022年秋からの極端な難化は学習塾側の都合(プロダクト・アウト)、
その再調整は生徒層に合わせた調整(マーケット・イン)の動きです。 

合不合判定テストには大きな再調整が入りました。 
今後、カリキュラムそのものに大きな再調整は有り得るのでしょうか。 

カリキュラム難化の傾向は「よほどのこと」が無ければ変わらないと思います。 
学習塾の人気は、御三家難関校の合格人数でほぼ決まりますから。 

もしも再調整が入るとしても、それには10年単位の時間がかかるでしょう。 
中堅層の生徒が流出しはじめて、初めて企業側は弊害に気づくはず。 

 

カリキュラムの難化は小規模塾や家庭教師にとっては需要増を生みます。 
志望校から逆算して学習計画を示せる先生の価値はもっと高まるはず。 

 

それらセカンドオピニオンに頼る前に生徒・保護者のできる自己防衛策は? 
すぐにできるのは「宿題」の活用だと思います。 

2024-02-17:中学入試の変化:出題が難化? 

komazawajuku.hatenablog.com

 

 

 

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