駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

中和の計算問題は、えすしすこ

中和の計算問題が得意になる解き方を説明します。 取り上げた例題は、四谷大塚の週テスト、6年・上・第11回・S問題です。 完全中和のポイントを計算で出さなければいけないので、難易度を松竹梅で表すなら、松レベルの問題です。 

 

酸とアルカリを混ぜた中和の問題は、苦手とする生徒が多い計算問題です。 

その原因の一つが、正解に至る道筋の「見通しの悪さ」だと考えます。 

 

☆ 塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の中和で食塩ができることは、知っている。 

☆ 塩酸の溶質が塩化水素という気体であること、水酸化ナトリウム水溶液の溶質が水酸化ナトリウムという固体であることも、知っている。 

☆ 混合する水溶液の何と、生成される固体の何が比例するか、知っている。

 

必要な知識は全て、知っている、でも正解を出せない。 

解けなくて困っている生徒を見ると、問題の表にちょこちょこ数字を書き足したり、余白で筆算を一生懸命にしながらも、方向性を見失っています。 良く言えば試行錯誤、悪く言えば行き当たりばったり。 

 

と言うわけで対応策です。 

見通しが悪くて道に迷っているのなら、地図を作らせれば良いのです。 

中和の問題で提示される水溶液の量は、多種多様な書式で示されます。 

横方向の表だったり、縦方向の表だったり、グラフだったりしますし、BTB溶液の色は、問題文の中で言葉による説明である場合が多いです。 

 

問題を解こうとする生徒は、それらを「頭の中で」整理しようとします。 

その結果、目についた数字を行き当たりばったりで計算して、行き詰ります。 

マジック・ナンバー・オブ・セブンのワナにはまる訳です。 

 

ならば、決まったフォーマットの整理表に書き直してやれば、情報の見通しが良くなるはずです。 

そしてそれだけでなく、整理表そのものが解き方を教えてくれるはずです。 

そのフォーマットが今日の提案、「えすしすこ」です。 

 

例題で説明します。 

例題は、四谷大塚の週テスト、6年・上・第11回・S問題です。  

ここで取り上げられていたので解説を作りました。 

www.yamachanjj.com

 

【問題】

7つのビーカーに, A液(塩酸)を50㎤ずつとり,そこにB液(水酸化ナトリウム水溶液)を体積を変えて加えよくまぜた後,ガラス棒で1 滴とって少量の緑色のBTB液に加え,色の変化を調べました。その後,ビーカーの液をすべて蒸発皿にとり,加熱して水分を蒸発させてから,残った固体の重さをはかりました。これらの結果をまとめると, (表)のようになリました。これについて,次の問いに答えなさい。ただし,A液もB液も1㎤あたリの重さを1gとし,ガラス棒でとった液の量は無視できるものとします。 

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問1  ① • ⑦のビーカーの溶液には,何が含まれていますか。 下から選び,それぞれ記号で答えなさい。 
(ア) 塩化水素と食塩

(イ) 塩化水素と水酸化ナトリウム

(ウ) 食塩と水酸化ナトリウム

(エ) 食塩だけ

 

問2 (表)の(あ)~(え)にあてはまる色の組み合わせとして,正しいものはどれですか。下から選び,記号で答えなさい。

 (ア) (あ)黄 (い)緑 (う)青 (え)青

 (イ) (あ)黄 (い)黄 (う)青 (え)青

 (ウ) (あ)黄 (い)黄 (う)緑 (え)青

 (エ) (あ)黄 (い)青 (う)青 (え)青

 

問3 A液50㎤にB液を50㎤加えた液をすべて蒸発皿にとリ,水分を蒸発させると,何gの固体が残りますか。数字で答えなさい。


問4 この実験で使用したB液の濃さは何%ですか。数字で答えなさい。


問5 A液50㎤と完全中和するB液の量は何㎤ですか。数字で答えなさい。

 

問6 (表)の①と⑥のビーカーの液を1 つのビーカーに入れてまぜ合わせました。この液を完全中和させるには,A液, B液のどちらの液を何㎤加えればよいですか。A・Bを記号で答え,加える体積を数字で答えなさい。


問7 問6で完全中和させた液の一部を蒸発皿にとり,水分を蒸発させたところ, 2.4gの固体が残りました。このとき,蒸発皿にとった液は何㎤ですか。数字で答えなさい。

 

【解説】

まず、<えすしすこ表>の項目を説明します。 

 え:塩酸の量

 す:水酸化ナトリウム水溶液の量

 し:食塩の重さ

 す:水酸化ナトリウムの重さ

 こ:固体の重さ合計

最初の2つが混合する水溶液の量で、後の3つは混合液を加熱して蒸発乾固させて残る固体の重さです。 

さっそく、このフォーマットで今回の問題に登場する情報を書いてみましょう。 

黒字で書いたのが問題文で提示されている情報です。 

赤字は、表を書きながら書き足して行く情報です。 

 

表の一行目は、問題には無い水酸化ナトリウム水溶液がゼロの場合です。 

あたり前の内容ですが、この行を追加するだけで解く時間が早くなった生徒が居ました。 

 

④と⑤の間に空白行が入れてあるのは、ここに完全中和、私の呼び名では「ぴったりポイント」が入るからです。 

なぜ、そこに空白行を入れて良いか、それを直感させるために最初のうちは必ず右の備考欄の文章を書かせましょう。 

 ☆ 表の上の方は、あきらかに「塩酸あまり」の状態である

 ☆ よって水酸化ナトリウムは全て反応する

 ☆ つまり固体の重さ=食塩の重さは、水酸化ナトリウムに比例する

 ☆ つまり固体の増分が水ナトに比例しているうちは、水ナト不足が続いてる

比例関係が崩れる所に完全中和のポイントが有るわけです。 

明解でしょ? 

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問1 反応後のビーカー内の溶液 

  「熱して残る固体」ではない事に注意! 

 ①  (ア) 塩化水素と食塩  

 ⑦  (ウ) 食塩と水酸化ナトリウム  

 

問2 BTB液の色

   (イ) (あ)黄 (い)黄 (う)青 (え)青  

 

問3 A液50㎤にB液を50㎤での固体の重さ

  まだ完全中和の前ですから、水酸化ナトリウム水溶液の量に比例します。

  0.6 ÷ 15 × 50 =  2.0 g  

 

問4 B液の濃さは何%

  ⑤から下は、塩酸不足・水ナトあまりですから食塩の重さは増えません。 

  よって重さの増分は全て水ナトです。 

  0.7 ÷ 25 × 100 =  2.8 %  

 

問5 A液50㎤と完全中和するB液の量

  私なら、この部分を<旅人算>に置き換えて考えさせます。

 

まず完全中和する前と後では、固体量の増加スピードが変わることを固体量のグラフの違いから思い出させます。 

この問題を解こうという生徒なら、水ナトに塩酸を入れる場合と、塩酸に水ナトを入れる場合の固体量のグラフを読み取る問題を解いた経験が、一度はあるはず。 

塩酸に水ナトを入れる場合には、完全中和した後も「じわじわと」固体の重さが増えて行くことを思い出させるわけです。 

 

次に増加スピードの計算。 

完全中和前は 0.6 ÷ 15 =  0.04

完全中和後は 0.7 ÷ 25 =  0.028

 

そして④と⑤の間を見てみると、水ナトは 100 - 75 = 25(㎤)

固体の増加は 3.76 - 3.0 = 0.76(g)

 

これを<旅人算>で考えてみれば

最初 15分間で0.6Km つまり 0.04 Km/分 で移動していた人が

途中から25分間で0.7Km つまり 0.028 Km/分 になったので

④から⑤の区間では、25分間で0.76Km移動した。

0.04 Km/分 で移動していたのは何分間? って問題だよね。 

 

という訳で

問5 は<速さのつるかめ算>で答えを出せます。 

  (0.76 - 0.028 × 25 ) ÷ (0.04 - 0.028)=5

  75 + 5 =   80(㎤)  

 

問6と問7の筆算を青い字で書き足しました。 

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問6 (表)の①と⑥の混合液を完全中和させるには?

  混合液は、塩酸が100㎤、水ナトが140㎤

  完全中和の両者の比は 5:8 だから  B液  を

  100 ÷ 5 × 8 - 140 =  20(㎤)  

 

問7 完全中和した液、何㎤なら2.4gの固体?

   説明、めんどくさい。 式だけで良いですよね?

  (50 + 80) ÷ 3.2 × 2.4 =  97.5(㎤) 

 

 

中和の問題で、ぴったりポイントを案分計算しなければならない問題に対して、旅人算への置き換えで考えてみました。 

旅人算への置き換えは、ニュートン算を苦手としている生徒にも使っています。 

ニュートン算:確定版の解法・たとえ話編 - 駒澤塾:中学受験の算数・理科

 

数学的な答えを出したいときに、習得済みの解き方に「あてはめて」解くというのは代数学よりはるか昔から有る解法なのですが、それについてはまた別の機会に書きます。 

数学はなぜ生まれたのか?

数学はなぜ生まれたのか?

 

 

 

本日の単元「中和」に関しては、こんな記事も書いています。 

中和:濃度を考えさせる問題 - 駒澤塾:中学受験の算数・理科

中和:反応熱の問題 - 駒澤塾:中学受験の算数・理科

また、下書きを見ていたら早稲田中学の過去問でpHを計算させる問題や、混合液でアルミニウムを溶解させるという複合問題なども、解説が下書きリストの中に有りました。 

 

また整理表で解く方法に関しては、金属の溶解による気体の発生に対して<えこガあまり表>という解き方を提案しています。 

気体の発生計算は、えこガあまり - 駒澤塾:中学受験の算数・理科

合判(第1回) 理科:気体の発生を解く技 - 駒澤塾:中学受験の算数・理科

 

以上、ご参考として各記事へのリンクを載せました。 

 

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