四谷大塚の合不合判定テスト第1回の理科、大問3の問6は男子でも正答率がひとけたの問題でした。 でも、実は表にして整理すれば難しい問題ではないのです。
今回使う解法の技は えこガあまり表 、既にご紹介済みです。
四谷大塚 2020年 第一回 合不合判定テスト 理科
大問3<化学・気体の発生>は、ひとつの反応について問う問題ではなく、複数の知識を組み合わせて答えを探させるという構成の問題でした。 <必要な情報を読み取る力>を求める要素が大きかったと言えます。
今回の記事では枝番の設問を二つだけ使って解法を説明しますので、他の枝番の答えを使って計算する部分は【解説】で補足しました。 そのため、以下に引用した部分の問題文だけでは解けませんのでご注意を。
【問題】
く実験2>炭酸カルシウム2gにいろいろな量のうすい塩酸を加えて気体Yを発生させた。
加えたうすい塩酸と気体Yの発生量の関係は( グラフ2) のようになった。
問5 炭酸カルシウム 5g に,<実験2>と同じ濃さのうすい塩酸50cm3を加えました。
これについて,下の問いに答えなさい。
(1) どちらの物質がどれだけ反応せずに残リましたか。
あてはまる物質名と単位を〇で囲み,残る量を数字で答えなさい。
ただし,どちらも残らない場合には, 0 という数字だけをかきなさい。
(2) 気体Yは何cm3発生しますか。 数字で答えなさい。
問6 く実験2>と同じ濃さのうすい塩酸 100 cm3に,水 60 cm3を加えてうすめました。
この塩酸を何cm3か取リ出し,十分な量の炭酸カルシウムに加え,問4で発生させた気体Xと同じ量の気体Yを発生させようと思います。
取リ出す塩酸の量は何cm3ですか。 数字で答えなさい。
【解説】
問6で「問4で発生させた気体Xと同じ量の気体Y」と書かれている量は 240 cm3でした。 問4は正答率が男子29.5%、女子19.9%だったのですが、問4で間違えた受験生は自動的に問6も失点する訳です。
なぜそのような構成にしたのでしょう。 問6まで問題を作ってみたけれど得点が高くなり過ぎそうだったので正答率を下げようとしたのかな。 理科の問題では問1で得た数値を使って以下の設問全部を計算して行く場合があり、これはとても恐いです。 問1でミスをすると大問ひとつが丸々失点になりますから。
さて、引用した部分について えこガあまり表 を書くとこうなります。
ある程度まで勉強がすすんでいてあと一歩の生徒なら、この表を見ただけで解き方がわかると思います。
表の最初の2行は(グラフ2)からデータを転記したものです。
今回は使いませんが、ゼロの点(グラフの原点)の行も入れてあることにご注目を。
グラフの読み取り問題は、「縦横の軸に数値を読み取れるポイントに注目する」というのがコツですが、原点もまた数値の明確なポイントである事を意識に根付かせるために、この行を入れています。
問5(1) 正答率 男子:41.5% 女子:31.7%
固体(炭酸カルシウム)の量が 5g ですから、ぴったりポイントの行を2分の5倍します。
ぴったり反応する液体(うすい塩酸)の量は
15 cm3 × ( 5g ÷ 2g ) = 37.5 cm3
うすい塩酸は 50 cm3 加えましたから余ります。
50 cm3 - 37.5 cm3 = 12.5 cm3
よって 薄い塩酸 が 12.5 cm3 あまる
問5(2) 正答率 男子:48.3% 女子:39.2%
ぴったりポイントの二酸化炭素の量を2分の5倍します。
480 cm3 × ( 5g ÷ 2g ) = 1200 cm3
問6 正答率 男子:6.8% 女子:2.8%
えこガあまり表に問題文の 240 cm3 を書き込んで見れば、ぴったりポイントの 480 cm3 のちょうど半分であることは一目瞭然です。
もとの濃度の塩酸ならば 7.5 cm3 でぴったり反応しますから、水で薄めた塩酸は当然もっと多くの量が必要になるはず、そう考えれば「量が増える」計算式が間違えずに作れます。
7.5 cm3 × ( 100 + 60 ) ÷ 100 = 12 cm3
どうでしょう? 表で整理してみれば難しくない問題ではないでしょうか?
【補足】
今回この設問を取り上げたのは「難しい問題を解かせるため」ではありません。 このブログで公開済みの技を使えば「難しい問題でも解けてしまう」ということです。
この二つには大きな違いがある、という事を書いたのが次の記事です。
難関校に合格する生徒は難しい問題も解けるけれど、それ以前に基本的な問題は決して失点しません。 難問を解けるというのは結果であって手段じゃありません。 手段と目的をしっかり見極めましょうということです。
同様に、受験指導をする先生も、難問・奇問をちゃっと解ける先生が良い先生なのではなく、志望校を聞いて「じゃぁ、この問題とこの問題は解けなくて良いよ」と断言できるのが良い先生だと思います。