駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。駒澤大学とは関係ありません。

中和:濃度を考えさせる問題

中和に関する問題で最も基本的な出題は塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の中和について双方の量が表になっていて、その表の中に完全中和の数字も明記されていて、設問は化学物質としての性質やpH指示薬の色を尋ねるものなどです。

出題者が正答率を下げる工夫のひとつが「水溶液の量」ではなく「濃度」を考えさせることです。 過去問の例として青山学院の2010年(平成22年)の大問5をとりあげました。

 

【問題】

18g の塩化水素と 20g の水酸化ナトリウムはちょうど中和し、このとき 29g の食塩と 9g の水ができます。
(1) 塩化水素と水酸化ナトリウムは、室温ではそれぞれどのような状態ですか。 固体,液体,気体で答えなさい。


(2) 次の文の空らん①、②には適当な数字を入れ、③には器具名を下から選んで答えなさい。
「 4%の水酸化ナトリウムの水溶液を 50g つくるには、①   g水酸化ナトリウム②   g の水を③   ではかり、よく混ぜる。」
〔器具名〕
ア ビーカー  イ メスシリンダー  ウ こまごめピペット  エ 上皿てんびん


(3) 5% の水酸化ナトリウムの水溶液 100g と、 5% の塩酸 100g を混ぜた水溶液について、次の問いに答えなさい。
① BTB液を加えると何色になりますか。
② 水を蒸発させると何が残りますか。適当なものを選ぴなさい。
 ア 食塩
 イ 食塩と塩化水素
 ウ 食塩と水酸化ナトリウム
 エ 塩化水素と水酸化ナトリウム
 オ 塩化水素と水酸化ナトリウムと食塩


(4) 容器に 36% の塩酸 100g を入れ、水酸化ナトリウムを少しずつ加えていくと、激しい反応がみられました。 ちょうど中和したところで、水酸化ナトリウムを加えるのを止めて、 20℃ にな るまで放置しました。この容器内の物質について、次の聞いに答えなさい。
 ① 容器内の水の重きは何gですか。
 ② 容器内には食塩の白い沈殿が生じていました。 この食塩の沈殿の重きは何gですか。 なお、20℃ のとき、 100g の水にとかすことができる食塩の重さは 36g です。

 

【解説】

(1) 溶質の室温における状態

   塩化水素   気体  

   水酸化ナトリウム   固体  

 

(2) 濃度の計算

水溶液の濃度の計算式は 《全部(=溶質+水)の重さ》 × 《濃度》 = 《溶質の重さ》 ですから、

50g × 0.04 =  2g ・・・①

50g - 2g =  48g ・・・②

量り取る器具については誤答した受験生が多かったはず。 登場する単位はすべて重さ(グラム)ですから、メスシリンダーではなく  エ 上皿てんびん  だけが正解です。

 

f:id:komazawajuku:20180804143942j:plain

(3) 片方の余る中和

《濃度》 × 《全部の重さ》 = 《溶質の重さ》  に双方の100g と 5%を入れると、塩化水素も水酸化ナトリウムも 5g になります。

18g : 20g = 4.5 : 5  ですから、塩化水素が 0.5g 余ります。

① よって混合液は酸性になりますので、BTB液の色は   黄色  

② 余剰となる塩酸の溶質「塩化水素」は気体ですから、水を蒸発させるといっしょに気体となって無くなります。 よって残るのは  ア 食塩  だけです。

 

(4) 中和の生成物、溶解度

36% の塩酸 100g に含まれる塩化水素は、《濃度》 × 《全部の重さ》 から 36g です。

これは問題冒頭にある説明のちょうど2倍ですから、中和によって生成する水は 9g × 2倍 = 18g です。 それとは別に 36% の塩酸 100g に含まれる水が 100g - 36g = 64g 有ることを見落とした受験生も多かったかも。

① 18g + 64g =  82g  

 

「溶解度」と「濃度」の違いは理科における重要ポイントのひとつです。 水の量で 20℃における食塩の飽和溶解度 36g を比例配分して 36 × 82 ÷ 100 = 29.52 が溶けている重さ。 中和によって生成する食塩の重さは 29g × 2倍 = 58g ですから、その差が答えです。

② 58g - 29.52g =  28.48g  

 

今日の冒頭に書いたように、中和に関する問題で最も基本的な出題は塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の中和について双方の量が表になっていて、その表の中に完全中和の数字も明記されているものです。 これは基本中の基本の問題になりますので、受験する学校のレベルを問わず解けるようにならなくてはなりません。

 

一段階難しくする場合、塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の表に完全中和の場合の欄が無く、受験生に数字と数字の間を補完する計算をさせます。

また「2分の1の濃度に薄めた塩酸」の場合に必要な量を計算させるなど、濃度を変えた場合を考えさせる出題も多く、今日の問題もこのバリエーションのひとつですね。 最初から溶質の重さを提示している分、難易度を上げすぎない工夫を感じさせます。

 

また、溶質の性質(塩化水素は気体、水酸化ナトリウムは固体)の違いを使った出題としては、水分を蒸発させて残る固体の重さをグラフにしたものがあります。 塩酸に水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加えて行った場合と、水酸化ナトリウム水溶液に塩酸を徐々に加えて行った場合で残る固体のグラフの形が変わります。 片方は完全中和の後に固体量のグラフが水平になり、片方はゆるやかな傾きで増加します。 どちらがどちらになるか、確認しておくことが重要です。

 

変り種の出題としては、説明文を読みながらpHを計算させる入試問題がありました。

また、今日の例題の末尾にも「激しい反応」とありますが、固体の水酸化ナトリウムを使って中和反応をさせたときに生じる発熱を考えさえる入試問題もありました。 それらも追って紹介して行きたいと思います。