恒星と星座に関する入試問題で、御三家クラスで合格点を取るために必要な知識をまとめました。 例題としては女子学院の2005年(平成17年)の大問1を取り上げました。
絶対必須の恒星と星座に関して、以前こんな記事を書きました。
komazawajuku.hatenablog.comこのブログの中で検索エンジンからの来訪者の多いページのひとつです。
今日の記事は、必須の10個を覚えた「後に」どのような知識を「付与するか」の話です。
【問題】
次の問いに答えなさい。
1 地球の自転によって、星が図のように動いて見える。
1図は、日本のある地点における星の見え方と動きを示している。
2図は、地平線から上の空の状態を表している。
(1) ある地点で観測したとき、次のように見える星はどれか、ア~エからすべて選ぴなきい。
① ひと晩中夜空に見えている星
② 夜空に見えている時間がもっとも短い星
(2) ウの星は,東から昇り,西に沈むまでに,およそ何時間地平線の上にありますか。
2 図は、ある夜、北極星とその付近にある星座を時間をおいて2回観測し、スケッチしたものである。
(1) 北極星を中心に移動している図の星座の名前は何ですか。
(2) この星座の動きは、 AとBのどちらですか。
(3) 星座は1時間におよそ15°ずつ移動していく。 2回目に観測したのは、最初に観測したときから、およそ何時間後ですか。 角度は自分で工夫して測ること。
(4) 北極星の位置を調べるもう1つの星座を選びなきい。
3 冬、南の夜空にオリオン座が見える。
(1) オリオン座が西の地平線に沈むときの形として考えられるものを選ぴなさい。
(2) オリオン座の三つ星は1年を通して常に真東から昇り真西に沈む。
ある場所で1月のタ方に見えた三つ星は2カ月後にどのように昇りますか。
時刻・・・ア 早い イ 遅い ウ 同じ
方角・・・ア 真東 イ 真東より少し北 ウ 真東より少し南
4 夏の大三角形が天頂近くに見えた。
西に沈んでいくときにどのように見えますか。
図を見て考えなさい。
(図の点線は東の空にあることを表す)
【解説】
1 《透明半球》
透明半球に関しては、次の記事に図の書き方を含めて書きました。
komazawajuku.hatenablog.comこの図の学習で上位生は、単に太陽の季節による動き方だけではなくて、次のような事柄も覚えておきたいです。
☆ 透明半球の地平線よりも下側の動き(=今回の1図)
☆ 季節による月の動き(満月は太陽の逆。南中高度は夏低く、冬は高い)
☆ 恒星や星座は透明半球上の位置が固定されていること
(1)の① 解説は要らないですよね。 ア、イ です。
(1)の② これも解説不要。 エ ですね。 この問題を見て即座に「これの例は、さそり座のアンタレスだ。」と言えるようになるべき。
(2) 真東から出て、真西に沈む、つまり春分の日や秋分の日の太陽と同じで 12時間
2 《北極星》
(1) カシオペヤ座
(2) A (反時計回り)
(3) 「角度は自分で工夫して測ること。」という指示がおもしろい。
目分量でもおよそ45度とはわかりますが、どうやって測ります?
この年の理科の解答用紙には、用紙の角を半分に折った跡が多かったのでは?
45度を1時間あたりの天球の回転角15度で割り算して、 3時間後
(4) これは間違えた受験生はいなかったのでは?
ひしゃくの形をした「北斗七星」であすから ウ
ちなみに、アのはくちょう座とオのさそり座は簡単。
イはふたご座、エはしし座です。
3 《オリオン座の動き》
冬の代表的な星座、オリオン座から南の空以外での見え方に関した出題です。
このあたりから御三家っぽい出題になって来ました。
(1) オリオン座が南中した頃の見え方が イ というのは常識。
では東の地平から昇る頃と、西の永久に沈む頃の形は?
2つの知識で、この問題は解けます。
ひとつは上弦や下限の月の動きにて学んだことです。
(参考:月の見え方に関する記事)
komazawajuku.hatenablog.com上弦の月、下限の月についてジェスチャーで覚えると良いです(いずれ、書きます)
もうひとつは
「オリオン座の三ツ星は東の地平線から昇る時にはほぼ垂直にならび、
西に沈む時にはほぼ水平にならんでいるように見える。」という知識です。
これは覚えていないと正解を選ぶのが難しいです。
以上から、西に沈む時の星座の形は オ
(2) 季節と時刻による見え方
北極星を中心に考えると、同時刻の星座は1ヶ月に15度、反時計回りに位置を変える。
つまり透明半球の下半分(地平線の下)に居る星座を考えると、地平線に近付いて来る。
つまり 東から昇る時刻はだんだんと早くなって行く。
よって、時刻・・・ ア 早い
恒星という名前は「恒(つね)なる星」です。
透明半球上の位置は変わりません。
そして三ツ星の右側の星「ミンタカ」は春分・秋分の日の太陽と同じ動きをします。
よって、方角・・・ ア 真東
4 《夏の大三角の配置》
夏の大三角については天の川との位置関係で判定させる出題が多いです。
今回は3個の恒星の配置から西に沈む時の配置を考えさせる問題でした。
南の空にある時の配置を覚えていれば、それを西の空に移動させるだけで正解できますが、
問題文の透明半球の図から考えても正解にたどりつけます。
透明半球を見ると、一番先に沈むのは最も西に近い黒丸のベガです。
つまり選ぶべきなのは黒丸が下側にあるイまたはウとなり、
白丸のアルタイルの位置関係から イ です。
ちなみに、南の空に見える時の正しい配置は今回の選択肢のアを左右逆にしたものです。
夏の大三角を覚えるときは「デネブ・ベガ・アルタイル」と順番も決めて暗唱すると有利です。
この順番に南の地平線から見上げた時の高度が大きいです。(順に99度、93度、63度)
また、アルタイルのデネブとベガを結んだ線対称の位置に北極星が有るという覚え方も便利です。
さて、
この年度の女子学院の天体に関する入試問題は、ひととおり天体の勉強をした受験生がその先に何を学ぶかを問うてくる良い問題でした。
あとは「星座を構成する恒星の明るさと色で順番を並び替える問題」とか「星座早見」の使い方を見直しておけば、かなりのレベルになると思います。
最後にいくつか、関連の質問です。
Q1:夏の大三角のうち、どの星が一番長く夜空に見えるでしょう?
Q2:季節の星座は、それぞれの節季の日の真夜中頃に南中します。 なぜでしょう?
→答え 2022-01-15: 順番は必ずデネブ、ベガ、アルタイル
Q3:入試問題で出題される夜空の時刻は真夜中以外に午後8時が多いです。 なぜでしょう?
→答え 2022-04-20: 4個の惑星が夜空で接近