7月に入り、今年の入試問題を収録した過去問が発売され始めます。 いわゆる「銀本」を使った演習を始める塾も有りますが、これは「過去問を使った演習」であって「過去問の演習」ではありません。 今日は、そのふたつの違いについて書きました。
過去問の演習を開始する時期については、こんな記事を書きました。
その際に私は「過去問の演習は秋頃から」と書きました。 その意見は今も変わっていません。 夏期講習の前に志望校の「過去問の演習」をするのは良くないと考えています。
しかし「過去問を使った演習」は、やっても良いと考えます。
「過去問の演習」と「過去問を使った演習」は、「その演習から生徒が何を得るか」という目的が違います。
「過去問の演習」
自分が受験する学校に直結する知識や技能を得るのが目的です。 試験時間、問題文の文字数、解答の形式、難易度、出題される単元など、学校によっては癖の強い出題をするところも有りますので。 ただ、先の記事に書きましたが、生徒が「僕の受ける学校には、これ、出ないから。」などと言うようになると最悪ですから、夏期講習の前に始めるのは反対です。
「過去問を使った演習」
具体的な学校名のついた問題を手がけることで「受験」への意識を明確に持たせる効果があります。 四谷大塚の教材でも小6下巻の副教材に「入試実戦問題集」というのがあり、これをやらせると生徒の目の色が変わります。 私も理科と算数については、単元に分けたMS-Excelのシートに過去問を貼り付けるという整理を続けており、タイミングを見て生徒に演習させています。
SAPIXのように「有名中学入試問題集」(いわゆる「銀本」)を全員に買わせて、そこから学校名で指示して演習をさせる場合、入試問題を一題ずつ演習させる場合と違った注意が必要です。 たとえば、解き直し。
入試問題では受験生の平均点が満点の6割から7割前後になるように難易度を設計します。 つまり、得点できなくても良い問題が3割から4割も有る訳です。 自分が受験する予定の学校の「過去問の演習」をする場合には合格に必要な目標点を物差しにできますから、演習を終えた後の解き直しでは重み付けを自分で判断できます。
「7割の得点で良いのだから解き直ししなくて良い問題が有る」と言っているのではありません。 同じ単元の難易度を下げた問題が出る可能性は高いので、受験する学校に関しては全ての問題について確認が必須です。
しかしSAPIXのように今年度の入試問題を丸々やらせる場合、解き直しの重み付けを自分で判断するのは困難です。 もちろん塾からも難易度とAB区分で表に整理した「この学校をやりなさい」という指導はされます。 最上位のαクラスの生徒なら「失点した問題は全部を解き直し」ですからシンプルですが、中位の生徒の場合は問題単位でしっかり解き直しをすべき物と簡単で良い物の仕分けをしないと貴重な勉強時間の配分に無駄が出てしまう危険性があると感じます。
入試問題を丸々使って「過去問を使った演習」をさせるなら、学校名の単位だけではなく問題の単位で解き直しの判断基準を示して欲しいです。 生徒のレベルごとに「大問1はしっかり解き直しまで、大問2は関連知識の見直し程度で・・・」といった感じで表をまとめてあれば演習の効果を最大にできるのではないでしょうか。 簡単な作業ではありませんが、本社部門で科目ごとに専任をあてて作業させれば「銀本」一冊分の問題番号単位の整理表は、一週間くらいで作れると思います。