駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

攻玉社2013年の理科:月の動きを完璧に

<地学><天体>の連投第2弾です。 今回の解法ノウハウで「皆既日食になりかけの太陽の形」を解けるようにします。 それが出来れば「地平線近くの月の形から月齢と時刻を求める」問題なんて瞬殺が可能になります。 攻玉社2013年(平成25年)第1回入試の理科:大問4のAパートの(2)です。 

 【問題】・・・(部分的な引用になるので、問題文をすこし変更しています。)

昨年(註:2012年)5月21日の朝に日本全域で日食が見られ、九州から関東地方の太平洋沿岸部では金環日食が見られました。 日の出からしばらくして太陽がかけ始めました。 東京において、かけ始めて金環食になる前に見える太陽の形として最も適当なものを、次の(あ) ~ (え)から1つ選び、記号で答えなさい。

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【解説】

この問題、2月1日の第1回入試の問題ですから早慶の受験生が流れ込んでくる2月2日の第2回入試よりも点が取りやすい回のはずなのですが、理系の大学生でもサクっと解ける人ってどのくらい居るのでしょうか・・・

これの前の(1)は5月21日という日付から考えさせて日の出の方向は真東よりどちらにずれているかというサービス問題でした。 

続く(3)は部分食になった新潟での日食の見え方に関する設問で、太陽と月と地球の空間での位置関係を把握できないと答えられない難しめの問題でした。 

それらにはさまれたこの(2)は攻玉社さんとしては「うちの受験生なら、正解してよね。」というレベルなのかな。 中学受験って凄いね。

 

さて、それではこの問題をサクっと正解できるようになるための解法に入ります。

日食や月食というのは太陽と月と地球の位置関係によって起きる現象です。 ということは軸になる知識は<しじまか表>になります。 私はこういった表を丸覚えさせるのが嫌いなので、どのレベルの生徒にもまず最初にこのイラストを見せています。

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左からカッコの中に入るのは[立待月]、[居待ち月]、[寝待月]です。 このイラストで生徒の記憶に染み込ませたいことはひとつだけ、「月の出は、毎日数十分遅くなる」ことです。

 

月の出が遅くなって行くということが浸透したら、有名な<しじまか表>の登場ですが、この表は生徒に穴埋め作業をさせる前に、新月の3個全ての時刻と満月の月の出の時刻までは書いてしまっておいてと良いと考えます。 

新月は太陽と同じ動きだし、満月は「おっ出たでおじゃる」で18時だというイメージが既に持てていますから、それらからスタートして矢印の向きに残る数字を埋めて行かせることで「仕組み」で表を覚えさせています。

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<しじまか表>に続けて一気に導入してしまいたいのが<月の形の作図>です。 

これは直前に書かせた<しじまか表>を見ながら順に作図させます。 

新月と満月はすぐに書けるはず。

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新月と満月の次に書かせるのは上弦の月の図ですが、あえてイメージしやすい日暮れ時の18時ではなく昼の12時で作図させます。 

次に書かせる三日月の図を新月上弦の月の12時とそろえることで、月と太陽の位置関係がすこしずつどのように変わって行くのかをイメージさせるのが目的です。 

 

<立待月>と<月の形の作図>に慣れてきたら<日食の欠け方>まではあと一歩です。 月と太陽の位置関係の変化を生徒自身に考えさせます。 

月は、太陽に対して右(西)の方からじわじわと近づいてきて、新月で脇をかすめた後にじわじわと左(東)の方へ離れて行く、だから月の出は月齢とともに遅い時刻になって行く。 

日食というのは新月の時に太陽の脇をかすめるのではなく重なってしまう現象だ! ってことは

日の出から間もなく始まる日食での太陽の欠け方は ・・・ (い) !

 

<しじまか表>と<月の形の作図>が出来るようになれば「地平線近くの月の形」の図から観察された時刻と月齢を答える問題も解けるようになります。 

日食の欠け方と並んで正答率の低い月食の欠け方の問題は、次の記事( 女子学院2002年の理科:透明半球と太陽の動き) で書く予定の<三球儀>を学んでからの方が理解しやすいと思いますが、<月の形の作図>だけでも「空の上にある地球の影に月が入って行く」という状態を考えることで解けます。 ただし月食の場合は日食には無い次の3点の注意が必要です。

1:月と地球の半径の大きさ

2:地球の影には本影と半影がある

3:地球の大気の影響(夕焼けの空はなぜ赤い?)

 

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