駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

Sapix等の塾のZoom授業:現状と見通し

ゴールデンウィークの前半が終了し、いくつかの大手学習塾で予告されていたZoomによる授業がどのように始まったか、ブログを巡回してみました。 思ったより記事の数は少なかったですがそれらへのリンクとZoom授業に関する私の意見をまとめました。

 

【全体像】

学習塾の対応に関する全体像なら、『中学受験の下書き』さんがダントツです。

www.jukenlab.net

 

以下、個々の学習塾に関して書かれた記事やインターエデュなどの掲示板から見つけた情報です。

 

サピックス

G.W.前の発表では5月7日「以降に」「順次」Zoom授業を導入とのことでしたので、一挙に全クラスという状況ではないようです。 学年とクラスは不明ですが、本日の5月8日にZoom授業への参加方法やアプリのインストール方法の連絡メールが順次到着しているという書き込みがありました。

 

『中学受験のけんきゅうしつ』さんに現在公表されている仕様から想定される問題点が書かれていました。

chujulab.com

★ 生徒数が60人から80人

★ 算数が含まれていない

★ 低学年に非対応である

これらは利用者から見れば強い不満が出る点だと思います。 思いますが、大きな法人組織としてずいぶん頑張っているなとも私は思いました。 これについては後で【まとめ】で書きます。 

 

 

 

【中学受験ドクター】

『中学受験のけんきゅうしつ』さんには、5月8日付けでこんな記事も有りました。

中学受験ドクターで無料Zoom集団授業 四科目 各50名限定

chujulab.com個別指導の塾で、無料で、50名限定で、オンライン授業・・・ 何を目的としているか瞬時にわかるプロモーションですね。 

 

 

早稲田アカデミー

現時点で大手塾の中では群を抜いてZoom利用の授業が導入されています。 これは今回の新型コロナウィルス被害顕現化の前に英会話の遠隔教育などの目的でほとんどの校舎にタブレット、ヘッドセットなどの機材が潤沢に配備され、それを用いた授業の経験者も居たことが大きなアドバンテージになっているからです。

なんらかの理由で合同クラスになってしまった例を除き、おおむね通塾時と同じクラス編成、同じ授業時間でZoomによる授業が行われ、授業の回ごとに先生の工夫が織り込まれて行っているそうです。

なんらかの理由でZoomの授業が受けられなかった場合は動画による補講が視聴できますが、これが5月から四谷大塚の予習ナビになったとのこと。 使用料をどのくらい払うのか興味の沸くところですが、大きなパラダイムシフトに発展させられる動きかも知れません。

パラダイムシフトの内容についてはとても長くなりそうなので今回は省略しますが、以下の記事に書いたこと関連です。 

キーワードは「反転授業」です。

komazawajuku.hatenablog.com

 

日能研

日能研の状況は本部系か関東系かだけでなく、校舎によっても対応の進捗に差があるようで、塾全体としてこうだろうなと推定できるのは、これまでのZoomによる質問教室に加えて通常授業の時間帯でZoomによる授業を始めることまでです。 

ただしZoom授業は300名規模で、初日はその半数くらいがログインしていた模様。 百数十名? 高性能のパソコンを使ってもZoomのギャラリービューモードで並べられる生徒の画像は49枚のはず。 これを双方向と呼ぶのはいささかアレですね。

goodweatherx.hatenablog.comこちらのブログ記事から読み取れるのは、日能研ではZoomの「ブレークアウトルーム」という機能を使っていることです。 

「ブレークアウトルーム」に関しては次の記事に書きました。

komazawajuku.hatenablog.comこの「ブレークアウトルーム」という機能はうまく使うと色々な不足を補えるのですが、さてどの塾が早い時期にそれに気付くかな?

 

 

【まとめ】

 

【早稲アカ以外のZoom導入について】

以下の内容は4月15日の時点でこのブログに書いた記事の抜粋です。 

家庭教師は要請対象外:東京都 - 駒澤塾:中学受験の算数・理科

 

学習塾のオンライン授業について、早期の実現は可能でしょうか。
大手学習塾においては、早期の導入は難しいと考えます。


最大の理由は、先生用の端末を始めとした機材が揃えられないからです。
iPadなどのタブレットを使えばカメラもマイクロフォンも内蔵されていますが、たとえば校舎が50あったとして、仮に1校舎あたり10クラスが同時並行的に授業をするとすれば、最低でも500台を調達する必要があります。


デスクトップ・パソコンの広い画面を使えるなら、授業の運用面では1台で可能ですが、パソコンにカメラが内蔵されていなければWebカメラが数百台必要になります。

タブレットの場合もパソコンの場合も生徒との音声でのやりとりを織り込もうとしたらヘッドセット(ヘッドフォンにマイクがついたもの)が必須になります。
Webカメラやヘッドセット、店頭から姿を消しています。 理由のひとつは在宅勤務の急激な導入、そしてもうひとつは「Made in China」であるが故の入荷の遅れです。

加えて、
タブレットにしろパソコンにしろ、大手学習塾で導入しようとしたら先生の大部分はZoom未経験者であり詳細な操作マニュアルと教育が必須になるはずで、しかも数百台の端末に初期設定を行うことも考えると・・・
オンライン授業に用いる端末は一つの機種に統一しないと、システム担当部署の運営の手間がたいへんなことになるはずです。

必要な機材を入手し、セキュリティの設計と検証をし、模擬授業を実施して授業手順を確定し、初心者でもわかる操作マニュアルを先生と生徒用に作成し、先生への教育研修と生徒へのオリエンテーションと練習を実施し、ここまでやってようやく授業開始。
ある程度まで試行錯誤が許容される小規模塾と違って、大規模進学塾での早期導入は難しいと私は考えます。

 

以上、『家庭教師は要請対象外:東京都』からの抜粋でした。 これを書いた4月15日の時点で私は導入はほぼ無理と言い切っています。

サピックスをはじめZoomの授業を一部であろうとも始めた学習塾は大変な努力をしたと思います。 前職で企業の情報システムと社内統制を担当し、4月初旬から自分でもZoomのホスト構築の設定を調べた者としてその大変さが想像できる分、頭が下がります。

ですが、個人レベルの小規模学習塾と異なり、組織としての動きを要求される大規模塾で早期に授業のサービスレベルを現実に近づけるのは、上に書いた理由で難しいとも思います。 これはやる気うんぬんの問題ではないので、本社にクレームの電話を入れれば改善されるものではありません。

 

学習塾や家庭教師に何を求めるかによって大きく変わりますが、遠隔授業の環境構築に対しては小回りの利く個人や小規模塾のアドバンテージがしばらくは続くでしょう。

 

4月9日に書いたZoomに関する最初の記事で【啓理学舎】の事例を紹介しましたが、個人でこれと同等、またはこれを越える授業環境を構築している先生がたくさん居られます。

komazawajuku.hatenablog.com

ただ、ブログ記事の中にはタブレット一枚を使っただけの経験からZoomによる授業の限界を語っているものが小数ですが見受けられ、残念です。

 

 

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