昨日の記事は気象を考える基礎として、低気圧とは何かということなどを書きました。 低気圧の正体は大気の上昇、それを起こすエネルギー源は太陽、そして大きな役割を果たすのが水でした。 今日は、その水の話です。
昨日の記事はこちら
時事対策:気象の見直し用の基礎知識 - 駒澤塾:中学受験の算数・理科
私の授業準備ノートから<水の三態>の部分を切り出しました。
最初に熱とは原子や分子の動き(エネルギー)の大きさであり、その動きの度合いを表すものが温度であると教えています。 絶対零度なんて小学校で習う? 計算する問題が渋谷学園渋谷の2013年・第2回入試などに出ています。
温度が粒子の動きだと教えておくと、水溶液の溶解度に対する温度の影響で、なぜ温度を上げると固体の溶質は溶解度が上がり、逆に気体の溶質は下がるか、丸暗記で無い仕組みの理解として覚えられます。 その話はまた別の機会に。
水の三態をあらわす三角形で重要なのは熱の吸収や放出をあらわす矢印です。 教えるときは「熱を加える」方から説明すると体験と結びつきやすいようです。
鍋に水を入れて加熱すると水蒸気になる
氷を熱い石の上に置くとその熱で水になる
ただ、「融けていない氷からも水分が蒸発する」という矢印は体験した記憶が無いためか、毎回「えぇ?」という表情が見られて楽しいです。
説明の中で「カップヌードルの具の肉や野菜」の事を口にすると「フリーズドライ!」と反応する子が居ますので、その言葉の意味と製法を簡単に説明します。
固体の氷が液体を経ずに気体の水蒸気になるのも、逆に水蒸気が直接氷になるのもどちらも昇華と呼びます。 続けて質問するのが「蔵王の樹氷はどのようにしてできるのか?」です。 だいたい最初に返って来るのが「強い風で雪が吹き付けられて」という回答ですが、「それなら風の吹いて来る側に片寄って成長するはずだよね」と誘導すると勘の良い子は「あっ、昇華?」と気付いてくれます。
昨年の5月、このブログを書き始めて間もない頃にフェーン現象の説明に関連して「モンゴルのユーラシア大陸制覇」の話と「美味しい野菜炒めの作り方」の話に触れました。
休み時間など時間に余裕のある時にするのが「モンゴルのユーラシア大陸制覇と昇華」の話です。 モンゴルの冬は寒いので肉を薄切りにして干しておくだけで天然のフリーズドライになります。 元の兵士はフリーズドライにした肉を砕いて袋詰めにし、鞍にくくり付けていました。 出先でも水さえ手に入れば高カロリーの食事が簡単に取れ、兵站線の確保に注力せずに済んだことが大きなメリットになったのです。
外から熱を与えられることで氷が溶けたり水蒸気になったりする。 では、その逆では何が起きる? これが分かると様々な気象現象が「なぜ?」を説明できるレベルで理解できます。 それがなかなか難しいことなのですけれど。 水が気体の水蒸気から液体や固体になる時に熱を放出するというのは実感としては体験する機会が少ないですよね。 それを少しでも体験として感じて欲しいと考えたのが、美味しい野菜炒めの作り方の話という訳です。 相手が子供でなければドライサウナとスチームサウナの違いで説明するのですが。
最後に2018年の出来事の中から、東京での大雪の原因を書きます。
大雪といえば日本海側の豪雪が頭にうかびます。 これはシベリアからの極端に冷たく乾いた空気の吹き出しが暖流の流れる日本海から蒸気をたっぷりと吸い込み、それが日本列島にぶつかって強制的に標高を持ち上げられ→膨張→温度低下→露点→降雪という現象です。
東京に大雪が降るときに必要なのは「上空に入り込んだ強い寒気団」と「南岸低気圧」です。 南岸低気圧が湿った空気を運び込み、それが雲の中で氷の粒を生みます。 それが降って来るわけですが、その時点では地表付近はまだ暖かいため氷の粒は融けて雨粒になります。 氷の粒が融けるときに起きるのは熱の放出?吸収? 吸収ですよね。 グラスに入れた氷がジュースを冷やすように、氷の粒は融けるときにまわりの空気から熱を奪います。 関東の冬の大気は湿度が低いのでみぞれの降り初めでは蒸発する水も大気から熱を奪います。 そういった現象の結果として見られるのが、夕方にはみぞれ模様だったのが夜半頃から気温の低下と共に雪に変わり、翌朝起きるとあたりは真っ白という風景です。