今回(2023年7月)の算数を題材に、こう変えて欲しいという事を書きます。
変えて欲しい事を書くためには、現状の構成のどこが駄目なのかを書くことになります。
これは非難が目的ではなく、生徒たちにより良い模試を提供したいからだとご理解頂けると幸いです。
という訳で、希望する事を書きます。
今後も継続を希望するのが
【4月と7月の出題範囲の明示】【無答率の表示】です。
変更を希望するのは大きく分けて二つあり、
【設問の「ひねり」】と【問題の順番】です。
【4月と7月の出題範囲の明示】・・・継続希望
首都圏模試は4月の第1回と7月の第2回に対して出題範囲の明示が有ります。
今回の7月に対しては以下の単元が予告されていました。
整数・小数・分数の仕組み・四則計算、数の性質、規則性、場合の数、面積を求める問題、角度を求める問題、面積と辺の比、平面図形の移動・回転、比と比の性質、ニュートン算、水量変化とグラフ、流水算、倍数算
9月以降の模試は全範囲が対象となります。
4月と7月に範囲の明示が有るのは、学習塾によって学習スケジュールに差が有るためです。
四谷大塚と栄光ゼミナールは今回の改定で大幅な前倒しになりました。
(日能研はまだ調べていませんが、独自の模試が有るので置いておきます。)
カリキュラム前倒しによって中堅層から下の層が苦しんでいます。
(算数でなく理科の話題ですが、この記事で取り上げました。)
komazawajuku.hatenablog.comテキストの難化に伴って、これまで予習シリーズ準拠で教えて来た中堅層向けの学習塾が別のテキスト(カリキュラム進行に余裕の有るもの)に切り換えたという話を耳にしています。
大正解だと思います。
心配なのは首都圏模試が四谷や栄光の改訂にひっぱられて「全範囲」になること。
4月と7月に関しては、来年度以降も出題の範囲指定を続けて欲しいです。
それがメインターゲットとする受験生の層に適合したやり方だと思います。
【無答率の表示】・・・継続希望
首都圏模試の分析帳票には正答率の数字だけでなく、誤答率と無答率も有ります。
無答率とは解答欄が空欄だった割合です。
この数字はとても参考になります。
他の模試もまねをして提示して欲しいデータです。
【設問の「ひねり」】・・・変更希望
7月の首都圏模試に私が求めたいのは「基本的な解き方の習得状況」の確認です。
その観点から「正答率を下げるためのひねり(いぢわる)」がどのように入っているか、大問2(小問集)を正答率・誤答率・無答率とともに見てみました。
おどろくことに大問2の中で正答率が80%を超えたのは(1)だけでした。
あとは全て30から55%です。
これは低いです。低すぎます。設問の設定が難しすぎだと思います。
結果として解答欄が空欄だった無答率が16から28%もありました。
この難度設定で解き方そのものの習得度合いを確認できるでしょうか。
比較のために四谷大塚の合不合判定テストのデータを書きます。
2020年7月の大問2(小問集)に含まれた6問の正答率は、
92% 88% 95% 68% 48% 62% でした。
今回の首都圏模試には極端に低い正答率が並んでいます。
これでは力試しになりません。 修正して欲しいです。
文句を言うだけなら誰にでも出来ますね。
以下、大問2に対して「こういう出題にして欲しかった」を書きます。
手元に問題が無い方は読み飛ばしてください。
(1)リボンの値段 長さによる比例計算
正81% 誤16% 無3%
単価計算の元になる長さを小数にしたのはいぢわる。
「2.5mで100円」ではなく「3mで120円」で良かったのでは?
(2)3と7で余りが1 除余算
正37% 誤45% 無18%
余りは同じ1でなく「3で割ったら1、7で割ったら2」の方が混乱しない。
また「100に最も近い数」でなく「小さい方から2番目の数」で充分。
(3)三人のシールの枚数 倍数算
正55% 誤18% 無28%
「倍数算」とされているが、出題されたのは「3者の比の合成」でした。
兄と弟の所持金で兄だけがノートを買った問題くらいで充分だったはず。
(4)分数の積が一定 逆比
正39% 誤43% 無17%
典型題ではありますけれど、もう少し易しい出題でも良かったのでは。
分母と分子の和が132で約分すると5/17になる分数は?とか。
(5)半円の回転 図形の回転移動
正31% 誤45% 無24%
これも典型題ですが、正答率が31%で4人にひとりが空欄でした。
回転移動させる図形は半円でなく三角形で良かったのでは。
(6)①水槽に注水 水深のグラフ
正54% 誤30% 無16%
(6)②水槽に注水 水深のグラフ
正35% 誤42% 無23%
なぜこれが①と②の枝番まで作って大問2に入れられたのでしょう?
これをこんな形でねじ込むくらいなら、予告された出題範囲の中から
カードを並べて数字を作る問題とか、単純な流水算などを入れて欲しかった。
「出題のひねり(いぢわる)」に対する適応能力を調べるにしても、それは後半の出題に織り込んでもらえれば十分です。
そしてその後半に至る問題の構成にも違和感を感じています。
【問題の順番】・・・変更希望
この時期、大部分の生徒は「問題を1番から順番に」解きます。
途中の難しい問題に引っかかって、その後ろの解けたはずの問題を落とします。
☆ 解ける問題から解いて行く
☆ 時間配分に気を付ける
というのは「教えてやり」「練習をさせる」のが必要なテクニックです。
たとえば四谷大塚の合不合判定テストに対しては、次のような指示を出します。
大問1の計算問題は時間を使って確実に点を取れ
大問2は最後の1問を飛ばして次へ行け
大問3と4は確実に点を取れ
大問5以降は順番に解いてはダメ、解けそうなものを探して解け
ただし、
大問8と9の(1)だけは解いてみよ。導入問題の可能性がある。
首都圏模試の場合は、次のような指示・・・でした。
大問1の計算問題は(3)まで解いたら次へ行け
大問2は飛ばして大問3と大問4を解け
そこまでやったら後は、大問1の(4)以降、大問2、大問5以降から解けそうなものを探して解け
この7月の模試では、その取り組む順番の指示が裏目に出ました。
大問3がニュートン算
たしかに出題範囲には明記されてます。
ですけれど、なんで大問3がニュートン算なのでしょうね。
大問5以降で扱う解き方でしょう、これは。
何年か前に都立一貫校でニュートン算が出題された影響なのかな?
(1)は導入問題。 牛が食べた総量を答えさせる穴埋め形式。
正65% 誤26% 無9%
(2)は頭数を変えた時の日数を問う本来の「ニュートン算」
正11% 誤53% 無36%
いきなり正答率がガタ落ちします。 当たり前です。
首都圏模試の受験生には(2)の設問の前に次の二つをはさむべきです。
・牛が食べた総量の差は何か考えさせる設問
・最初にはえていた牧草の量を答えさせる設問
大問4は平面図形の平行移動
典型題です。 ですが正答率が酷いことになっています。
(1)8秒後の重なっている部分の面積
正10% 誤72% 無19%
(2)面積が最大になる時間帯
正38% 誤33% 無28%
面積が最大になった時の面積
正27% 誤34% 無38%
大問4の(1)で正答率が10%って・・・
8秒後ではなく7秒後にしていれば、かなり違った結果になったはず。
大問5以降についても色々と思うことは有るのですが、首都圏模試のターゲットゾーンである偏差値50前後の受験生に大きく影響した問題に関してまとめました。
首都圏模試が今回のような難化の方針で行くとすると、困ります。
とても困ります。
受験生の中堅から下の層に受けさせる模試が無くなってしまうので。
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