駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

Sapix模試の複写販売で書類送検

Sapix模試のコピーを作って販売した著作権法違反の容疑で、国立市の夫婦が書類送検されました。 模試や組分けテストの事前練習は是か非か、考察しました。 

 

学習塾、とくにSapixの過去問には強い需要があります。 

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今回の事件ではネットオークションで仕入れ、これのコピーを作って多量に販売し、Sapixからの警告を受けていったんはやめながら、期間を空けて販売を再開したということで、悪質な法律違反であると言えます。

 

www.jiji.com

 

模試の過去問以外にも、オープンテストやマンスリーテストの他人への譲渡に関して否定派・肯定派が入り乱れて繰り返し議論が起きていますが、視点を明確にしながら整理してみましょう。

 

【 視点1:法的な観点】

テキストや問題などの他人への譲渡は有償・無償を問わず合法です。 ただし、持ち帰り禁止の試験問題を黙って持ち帰ったり、塾との契約書に「問題等の他者への譲渡はしません。」といった条項が無い範囲で、ですが。

 

今回のようにコピーを作って販売したら、あきらかに法にふれます。 日本で言う「著作権」に対する英語の単語は「copyright」ですよね。 つまり「機械的複写物を作る権利」、ですから。

ちょっと歯切れの悪い表現になっているのは英米型の法体系であるアメリカの「copyright」と、大陸型の法体系である日本の「著作権」が厳密に対応する関係ではないためですが、それを書き始めると長くなるので、省略。

 

 

【視点2:モラル的な観点】

インターエデュのサピックス掲示板では定期的に「オープンテストや組分けテストの過去問を買って対策をする人が居る。ずるい。」という議論が巻き起こります。

書き込みを読んで反対派の根拠を推定すると、「過去問を買って対策をして、良い偏差値を出したり、上のクラスに行ったりするのは、ずるい。」という理屈らしいです。

そういう生徒が上のクラスに入ってしまうことで、自分の子供が上がれなかったら損だという感覚も沸くのでしょうが、過去問を買って対策する人が何百人も居るならともかく、冷静に考えればそのせいで自分の子が上がれないというのは無視できる影響だと判ると思います。

 

つまり根拠となるのは「ずるい」という感情だという事ですね。

これについて理解はできますが、同時に強い危惧も感じさせます。

在籍クラスはあくまでも志望校へ合格させるための「手段」です。

「ずるい」という感想から感じるのは、在籍クラスが「目的」になっている危険性です。

もちろん、生徒のモチベーションのために在籍クラスを意識的に「目的」にしているなら問題ありませんが、その場合には実力以上のクラスに在籍することで、どのようなデメリットが生じるのか考えて、その対策を採っておくのが必須になります。

 

 

【視点3:生徒自身のためには】

実力以上のクラスに在籍することのデメリットにも関係する話としては、こんな記事を書きました。

komazawajuku.hatenablog.com

Sapixは学習塾の中でも特に上のクラスに在籍「してしまった」場合に、デメリットをこうむりやすいカリキュラム体系だと思います。

 

 

Sapixという学習塾】

私は、Sapixとは御三家(クラス)に特化して、それ以外を思い切りよく切り捨てた受験塾だと思います。 ネガティブな感想ではありません。 むしろ、その思い切りの良さに好感を覚えます。

大人がデメリットをしっかり認識し、そのフォローをしっかりできるなら。

 

それについて書いたのが以下の記事と、その前後の一連の記事です。

komazawajuku.hatenablog.com

この記事では何かの理由によって「遅れ」が出てしまった場合のフォロー方法にからんで、数万円も払ってSapixの教材テキストを買うということを検討しています。 また、関連してSapixが受験ドクターを訴えた裁判の判決についても書いています。

 

 

【まとめ】

書類送検された夫婦がSapixの過去問を売ったのは、それが高く売れるからです。 時事通信の記事にも、きっかけは自分たちの子供の使ったテストが売れたからだと書いてありました。

高いお金を出して過去問を買ってしまう側の気持ちも良く判ります。 偏差値がいくつかでも上がるなら、クラスが上がるなら、数千円の出費が惜しくないというのは、私も自分の子供のことだったら同じ気持ちになったかも知れません。

ですが、偏差値も在籍クラスも志望校に合格するための「手段」であり、決してそれらが「目的」ではないという事も常に意識に置いておきたいです。

その意味で、受験の本質を理解しているはずの、理解していなければならない、学習塾や家庭教師が広告の冒頭で「Sapixのクラスを上げます! そのための対策を準備しています!」と謳っているのを見ると・・・違和感を覚えます。 クラスは上げる事を目的にするものではなく、結果として上がってしまうものだと思います。

 

 

【模試対策:四谷大塚の合判の場合】

「二月の勝者」で、模試の過去問を半分のページで破りとって、前半だけを事前に演習させるエピソードが有りました。 

 

四谷大塚の合不合判定テストの場合には、事前に過去問を使って練習をするのは良いことだと思います。 そう思う理由は、Sapix四谷大塚の受験生の想定レベルに差が有ると考えているからです。 Sapixは御三家(クラス)だけを対象として想定し、四谷大塚は全レベルを対象として想定していると感じます。 

 

Sapixの模試の場合、受験生は御三家(クラス)ですから「捨て問」は有りません。

 

四谷大塚の模試の場合、受験生は幅広いレベルです。 特に下位生の場合には、手をつけてはいけない「捨て問」を見分けて、得点すべき問題に資源を集中させることが重要になります。

偏差値50でしたら、大問の1番、大問2番の(8)以外、大問3番と大問4番をしっかり得点し、後は余裕が有れば大問5番以降の(1)からひとつかふたつの丸を取れれば充分ですよね。

 

そもそも四谷大塚自体が前年の問題を販売しています。 なぜ、正規に販売しているか。 模試の出題スタイルを過去問を演習することで知り、そのうえで受験する事を推奨しているからでは?

 

ただ、この販売されている冊子に対しては要望もあります。 問題ごとの正答率や、点数からの偏差値換算表を付けて欲しいなぁというのが私の望みです。

 

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