速さの問題で兄と弟が短距離走をして、二人が同時にゴールするためには兄が何メートル後ろからスタートすれば良いかという問題は、比を利用する典型題です。 速さ・時間・距離のうちのどれが一定か考えれば解けます。
速さの問題(旅人算)で解き方に迷った時、<状況図>や<ダイヤグラム>を書かせることが多いのですが、この問題に対しては<一定を探す>の作業だけで解けます。
今回の解説では、この<一定を探す>をして、<きはじ表>を使って解く方法を解説します。
例題として取り上げるのは、明大明治の2015年(平成27年)の大問1の(2)です。
【問題】
A君とB君が300m競走をしたところ, B君がA君に50mの差をつけて先にゴールしました。
2人が同時にゴールするには, B君はスタート地点より[ ]m後ろからスタートすればよいです。
ただし, 2人はそれぞれ一定の速さで走ります。
【解説】
この問題の解説をする時、最初に尋ねるのは「距離・速さ・時間のうち、この競争で一定なもの、つまりA君とB君で同じ数字になるのは何かな?」です。
多くの生徒が自信満々に「速さ」って答えます。
そこで、気づきのヒントを出します。
「先生の質問は何だった?
A君とB君で同じ数字になるのは何かな? だったよね。」
「それじゃ、二人の動きを確認してみよう。
A君とB君は『よーい、ドンっ!』の合図で 同時に スタートするよね。
そしてB君が ゴールした瞬間に A君はゴールの50m手前に居たんだよね?
さて、A君とB君で同じ数字になるのは、距離・速さ・時間のうちどれかな?」
このヒントで「あっ!」と言って気づいた様子の生徒には自力で答えまで出させます。
まだ「?マーク」が顔に浮かんでいる場合は、<テントウ虫>と、<きはじ表>を書きながら説明します。
<テントウ虫> 時間が一定なので、距離と速さは正比例
<きはじ表>
B君が300m走ってゴールした 瞬間に A君はゴールまで50mの場所まで行った。
つまりA君が走った距離は 300m ー 50m = 250m
よって、A君とB君が走った距離の比は 250m:300m = ⑤:⑥
これは二人の走る速さの比でもある。
ここまでが、この問題を解く作業の前半です。
ここから後半の作業、2人を同時にゴールさせるためにB君に何メートルのハンディキャップを与えれば良いか考えます。
今回も『よーい、ドンっ!』の合図から『ゴール!』までの時間は一定です。
今度はA君が300m走る時間でB君は何メートル走れるかを考えれば良い訳です。
という訳で、
300m ÷ ⑤ × ⑥ = 360m
360m ー 300m = 60m
<速さの問題><旅人算>は動きを複雑にすることで正答率の低い問題を作ることができますが、その場合にも動きを小さい単位に分割して、そこで速さ・時間・距離のうちのどれが一定か考えれば、正解へのルートが見つかります。