駒澤塾:中学受験の算数・理科

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震源距離と初期微動継続時間は正比例

日本列島は長い活動の休眠期から目覚めつつあります。 志望校選びでも「徒歩で帰宅できる距離」という項目を重視する保護者様が増えています。 今日は地震の初期微動継続時間から震源までの距離を求める問題です。 とりあげる例題は、実践女子の2009年(平成21年)の第3回入試から大問の4番 です。 

 【問題】

図1は地震のゆれを調べる地震計のしくみを表したもので、図2は地震計を使って、ある場所でのゆれを記録したものです。 たて方向がゆれの大きさ、横方向が時間の経過を表しています。 この図から、地震のゆれには2種類あることがわかります。 地震が起こると、震源から速さのちがう2種類の波が同時に発生し、まわりに伝わっていきます。 速いほうの波をP波、おそいほうの波をS波といいます。 次の各問いに答えなさい。

問1 図1の装置で地震のゆれを記録できるのはなぜですか。 正しいものを次の(あ)~(え)から1つ選び、記号で答えなさい。

 (あ) 地震によっておもりが動くが、記録用紙は動かないため。

 (い) 地震によって記録用紙が動くが、おもりが動かないため。

 (う) 地震によっておもりも記録用紙も動くが、おもりのほうが大きく動くため。

 (え) 地震によっておもりも記録用紙も動くが、記録用紙のほうが大きく動くため。

問2 同じ場所で記録した場合、P波とS波では、どちらの波のほうがゆれは大きいですか。 次の(あ)~(う)から1つ選び、記号で答えなさい。

 (あ) P波   (い) S波   (う) どちらも同じ

 

グラフは、地震が発生してからの時間と、2種類の地震の波が伝わる距離との関係を表したものです。

問3 P波とS波の伝わる速さはそれぞれ毎秒何Kmですか。

問4 P波が到着し、S波が到着するまでの時間が30秒でした。 この観測地点から震源までの距離は何Kmですか。

問5 震源からの距離が 300Kmの地点では、P波が到着してから、S波が到着するまでの時間は何秒ですか。

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【解説】

地震に関する問題は全てのレベルの学校で頻繁に出題されます。 震源までの距離の計算問題はしっかり解けるようになっておきたいです。 

P波とS波に関して私は「プライマリー」と「セカンダリー」という単語を使ってしまいます。 暗記の強制まではしませんが、何度か口にしているうちに生徒たちは覚えてしまいます。 「セカンド」という単語は野球の二塁とか、セカンド・ライフとか、セカンド・オピニオンなど日常的に耳に入る機会もありますし、それが「2番目の」という意味だと教えるとすっと記憶に入るようです。

記憶は、とっかかりのポイントが出来ているとそれに関連した知識が覚え易いという例ですね。 

 

問1 地震計のしくみ

なぜ、おもりはゆれないかということの説明で地震のゆれの周期にの話をできると印象付けられます。 特にまだテキストには記述の少ない長周期地震動にふれておくと良いです。 

 a) おもりがゆれないのはおもりのゆれの周期が長いから

 b) 建物を積層ゴムで浮かした免震構造

 c) 長周期地震動と高層ビル上層階の大きなゆれ

 d) 長周期地震動と石油タンクの油面のゆれの周期が同期したことによる災害

  答えは   (い)  地震によって記録用紙が動くが、おもりが動かないため。 

 

問2 ゆれの大きさ

P波はたて波、 S波は横波、 という知識を大げさな体の動きをそえて説明します。

P波は、たて波だから、ドン・ドン・ドンって突き飛ばされて早く伝わるけど動きは小さめ。

S波は、横波だからワッサ・ワッサと大きく揺さぶられるけど伝わるのは遅め。

  (い)  S波  

 

問3 グラフの読み取りと速さの算出

グラフの問題に対して生徒の耳にタコが出来るほど尋ねる質問をここでもします。

グラフの問題のポイントは?

 ポイント1: 直線とその両端で何が起きているか考える。メモを書き込む。

 ポイント2: たて軸と横軸に数字が書いてある点に注目する。(ゼロの点(原点)を忘れずに)

今回の問題では25秒でP波もS波もぴったり目盛り線の交点を通っていますので、そこの距離をたて軸から読み取って割り算をするだけです。

P波  200(Km) ÷ 25(秒) =   8 (Km/秒) 

S波  100(Km) ÷ 25(秒) =   4 (Km/秒) 

 

問4 震源までの距離の算出

今回の例題では登場しませんが「初期微動継続時間」という用語も暗記必須ですので、演習をさせる場合にはここで名称を尋ねます。

いろいろな参考書で類題の解説を見てみると、距離から計算したり、旅人算の速さの差集め算のような計算をしたりしていろいろな解き方をしています。 なんでわざわざ難しい解き方をさせるのだろう? 私はシンプルに地震の基本的知識である <震源までの距離と初期微動継続時間は正比例の関係にある> を使って解かせます。

グラフから200Kmの地点での初期微動継続時間は 25秒です。

これが 30秒の場合を尋ねられているので、単純に比例配分の計算をして

 200(Km) ÷ 25(秒) × 30(秒) =   240(Km)  

 

問5 初期微動継続時間の算出

これも単純に比例配分の計算をして

 25(秒) ÷ 200(Km) × 300(Km) =   37.5(秒)  

 

 

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