前回の記事で「整理表を書いて解く」というのは、漫然と「表にして解きなさい」と指示して解かせることではないと書きました。 当然、じゃどうすれば良いの?という質問が出るはずです。 という訳で、続編です。
物事を表にして考えるというのは、大人にとってはあたりまえに経験していることですが、子供にとっては初めて学ぶ知識である可能性があります。 やり方を教えなければわからない場合も多いはずなのに、それに気付かずに無理強いをすると弊害が出る危険性が大きいです。
「表を書いて解きなさい。」と言って、子供がそれをしようとしない場合、もしかしたら原因は「単純な反発」とか「なまけ心」ではなく、「書き方が判らない」とか「わからなまいまま書いてみたけれど正解が出せなかった経験」かも知れません。
それに気づかずに単純に𠮟りつけたら?
整理表を使って解かせる場合、表のフォーマットをしっかり準備してから与え、それを使って正解を出せたという体験を本人に積み重ねさせるのが理想です。
たとえば、A × B = C という関係を表として書かせる場合、現在、私は必ずCを一番上の行にして書かせます。 下の2行にAとBを書く順番はわりと重要でなく、<テントウ虫>を音読する時の口調の良さで決めたりしています。
実は何年か前までは、この順番を私は適当に書いていました。
例えば、速さの問題では単に口調の良さから<はじき表>と呼んで、整理表も上から順に「速さ」「時間」「距離」と書かせていました。
一方、割合の問題では<くもわ表>、整理表も上から「くらべる量」「もとにする量」「割合」という順番にしていました。
速さでは 「速さ」×「時間」=「距離」
割合では 「くらべる量」÷「もとにする量」=「割合」
このように計算の順番がバラバラだったのです。
それを改めたきっかけは、ある生徒が問題を解いている様子の観察でした。
その生徒は、何を何で割るのか、何と何を掛けるのか、という計算の順番で悩んでいました。 つまり「整理表を書けば、表が解き方を教えてくれる。」という機能が、まだ十分に働いていない、ということに私は気付かされたのでした。
ほんとうに、生徒が問題を解いている姿は私にとって最高のお師匠さんです。
という事でそれをきっかけに、考えました。
・整理表の行の順番に一定のルールを作ろう。
・ルールの目的は「整理表を書けば、表が解き方を教えてくれる。」ということ。
・行の順番はテントウ虫と一致させよう。覚える事はシンプルが一番!
・テントウ虫で重要な要素って何だろう?
出て来た結論は、A × B = C の Cを最初に持って来よう、ということです。
Cは特別な値です。 Cと下の2つ、AとBはどちらも正比例の関係です。 下のAとBは左右どちらに書いても互いに反比例の関係です。 だからCはテントウ虫のてっぺん、整理表でも最初の行に書けば、3つの数値の関係を記号の配置や順番の中に織り込めます。
それまでの呼び方を変更しました。
速さの<はじき表>は<きはじ表>に
割合の<くもわ表>はそのままで
濃度の<ぜのし表>は<しのぜ表>に
などなど、以降はこのルールで教材を書いて来ました。
簡単で、単純なことに見えますが、教えて来た生徒の解答能力の伸び具合を見ていると、順番の統一および、テントウ虫と整理表の順番一致をした効果は明瞭に出ていると感じています。
比例関係を使った解き方以外にも、表で整理するのが有効な問題はたくさん有ります。 たとえば消去算、他の参考書などには載っていない適用例です。 算数の先生でも「なんで、そんな面倒な解き方をさせるの?」と言った人が居ました。 おそらく、式の変形が簡単だと思い込んでいる方なのでしょうが、マーケティング用語で言えばプロダクトアウトな人ですね。 教育はマーケットインであるべきです。
今回の記事は算数中心の話でしたが、理科も(そしておそらく社会や国語の入試問題も)与えられた情報を表で整理すると解ける問題が数多くあります。
このブログでも開始して6本目の記事は理科での例でした。