光の性質に関する授業をしていて「すりガラス」の話をした時に、きょとんとされることがあります。
もしかして、今の子供たちって「すりガラス」を知らない?
凸レンズの作る「正立虚像」や「倒立実像」について授業をする際に、そもそも「像ができる」というのは何なのかという事を説明をしない先生が意外に多いです。
いきなり「ほら、ここに線が集まるだろう、だからここに像ができるんだ。」と言い切ってしまうわけ。
「レンズの反対側で1点に集まる時にはスクリーンを置けば倒立実像ができ、観察物の側で1点に集まる時には正立虚像ができる」と、現象の結果だけをいきなり教えてしまいます。
私が授業をする場合は「光が1点に集まるとはどういうことか」という話から授業に入ることが多いです。
その時に話す内容の骨格は、この記事で書きました。
komazawajuku.hatenablog.comと言っても、その一回の説明で仕組みを理解する生徒はほとんど居ないです。
教えた時には理解できなくても、しっかりノートを取らせておくと、必要になった時に「ああ、こういうことだったんだ。」と思い出せます。
どのような時に、この知識が必要になるか?
たとえば望遠鏡や顕微鏡など「対物レンズが作った虚像」を接眼レンズで観察する入試問題を考える場合などです。
(これが出題されるのはかなり難度の高い学校です。)
さきほどの「像ができるのではない、ピントが合うのだ」の話の中ですりガラスがどのように登場するのか、具体的な説明のすすめ方の一部を書きます。
たとえば「ピントが合って、くっきり見える」の逆、「物がぼやけて見える」という状態を説明するために「すりガラス」を通る光の進み方を使って説明するのです。
その時に何度も生徒のとまどう顔を見たわけです。
どうやら今の子は「すりガラス」というものを知らないらしい。
写真はLIXILのWebサイトから
私が子供の頃、風呂場などの窓ガラスにはすりガラスを使う事が多かったです。
ところが最近では視線をさえぎる必要がある場合、ブラインド、フィルム貼り付け、型板ガラスなどを使っていることが多く、街中ですりガラスを見る機会が激減しました。
以前、この記事の最後のところで偉そうなことを書きました。
2022−02−06 円弧をフリーハンドで書かせよう
円弧をフリーハンドで書かせよう - 駒澤塾:中学受験の算数・理科
記事の最後に私はこう書いています。
教えるということは、「相手が何を知らないか」を把握するのが最初の一歩、基礎の基礎です。
教える側が「生徒が何を知らないか」を充分に考えずに授業をしたら、生徒達から返って来るのは「わからない。」の大合唱になるのがあたりまえです。
今回のすりガラスの話は、「生徒がすりガラスを知らない」ということを、あらためて私に教えてくれました。
やはり、
私にとって生徒は最高の先生です。