講師側からの受験ブログを読んでいると、「かならず分からせます」とか「解き方の丸暗記は駄目です」とか、断定口調で言い切っているものがけっこう有ります。
それらの意見は、ある視点からは正しく、ある視点からは正しくないと思います。
今日は、そんな話。
中学受験の準備としての勉強は、入試で合格ラインより1点でも多く得点することが目的です。
戦略の立案は、ターゲット、つまり目標の姿を具体的に描くことから始まります。
入試問題が受験生の何を知ろうとしているのか、算数を例にして整理してみます。
算数の入試問題をレベル別に3グループに分けて、考えました。
《基本クラス》
学校が問うのは「登場する知識を知っているか、知らないか」です。
・場合の数なら、並べ方と選び方の違いが分かっている、とか。
・速さとは、 距離を時間で割ったものだと分かっている、とか。
・5時12分の長針と短針の作る角度が計算できる、とか。
そういったレベルの「わかる」にどのくらい抜けが残っているかが、入試での得点に大きく影響します。
《中堅クラス》
入試に登場する単元の概念は、ほぼ抜けなく知っている所がスタート地点です。
このレベルの受験生に得点の差を付けるため、学校は解法の習得度合いを問うて来ます。
「楽をするための努力」をどこまでやったか、頑張ったかが問われます。
・場合の数では、和の法則、積の法則を正しく使いこなせるか。
・旅人算では、直線路・往復・円周路など様々なパターンで、出会い・追いつきを正しく処理できるか。
・時計算なら、短針と長針が270度になるのは5時何分か計算できるか。
このクラスでは「分かっている」のは当り前ですから、どれだけ「解法を覚えているか」が点数の差を生む原因になっていたりします。
そのことが、怖ぁい弊害を生んだりするのですが、それはまた別の記事にて。
《難関クラス》
そもそも解法に関する知識は網羅していて当たり前のレベルです。
学校側としては、得点に差をつけるために工夫をします。
問題にいぢわるを仕込んだり、本質の理解をしているかを問う出題をして来ます。
・場合の数では「場合分け」を漏れなく・重複なく・素早く処理して正解を出せるか。
・旅人算なら、説明だけで10行を超えるような複雑な動きを正確に把握できるか。
・時計算なら、短針ひとまわりが10時間、1時間が100分の変則時計算を解けるか。
このレベルになると「分かっているか」を問う出題が、再び登場して来る訳です。
気を付けたいのは、塾の上位クラスに在籍している場合に、《難関クラス》の問題ばかりを演習するのは危険だということです。
難関クラスの応用問題を学ぶのは、中堅クラスの解法をしっかり身に付けた後です。
詳しくは 2018-07-09:問題のレベルに注意 を。
今日のテーマに戻ります。
学習塾や個別指導の広告でも「かならず、わからせます!」と、うたっているものが数多くあります。
私は断定なんて怖くてできないです。
だって、生徒ひとりひとりで、その子への最適の対応は変わるから。
わからせるのか、覚えさせるのか、さらに深くわからせるのか、その子のレベルと目標校と、そして受験までの残り時間によって、対応が大きく変わるはずです。
「わからせます」という表現を見た時に、どのレベルの生徒を対象に言っているのか、ということに気を付けて読んでみると、見えて来るものがあるはずです。
営業戦略で言う「マーケット・イン」Vs「プロダクト・アウト」の視点です。