生徒は問題を読んで、どうやって解き方を知識から引き出すのでしょう? 多くの場合「あっ、これはたぶん△△算だ。」と考えて、その解法で解けるか試してみるのではないでしょうか。 つまり、『問題文を読み取り、対応する解法を引き出す』という処理をスムーズに出来るよう情報を整理出来れば、得点力は上がるということです。
まれに、その処理手順を必要としない生徒が居ます。 話を聞くと、問題を読み進めながら頭の中に正解に至る道筋が浮かび上がって来るそうです。 まるでプロの棋士が詰みまでのイメージを瞬時に描けるように。
ですが、そこまで「仕上がる」受験生は、一部のトップクラスだけです。 問題演習の訓練をする前からそんな生徒ばかりだったら、塾の先生は要らなくなります。 普通の生徒が直感レベルで解法手順のイメージが頭に浮かぶようになるまでには、膨大な演習、それも言われるままにやっただけでは無い、自主的・自発的な演習が必要です。
逆から見てみましょうか。 学習塾の講師の中に問題を見た瞬間に正解が浮かんでしまう人が居た場合、その人は良い先生でしょうか。 生徒が解法手順のどこで引っかかっているか、何を教えれば解けるようになるか、発見できる先生に成り得るでしょうか。
また、問題を見た瞬間に正解に至る解法手順が頭に浮かぶまで演習を積み重ねろ、と言う先生も居ます。 それに応える生徒も居ます・・・小数派ですが。 そのレベルにあこがれて、そのレベルを目指すのは悪いことではありません、受験までの時間がたっぷり有るなら。
私自身は平凡な人間なので、問題からの情報を順を追って整理しながら対応する解法を「△△算」のレベルで思い出して解いて行くタイプです。 具体的なイメージで言うと、たとえば2月2日の昼過ぎ、入試応援を終えて塾の事務所に顔を出し合否の連絡電話を待っている所に同僚の先生が難関校の入試問題を持ち込んだとします。
その学校が今年どんな出題をしたか興味有るし、電話が来るまで暇だし、コピーを取らせてもらって解きますわな。
まずすることは、手を伸ばして裏紙を何枚か手元に引き寄せることです。 裏紙に整理表とかダイヤグラムとか図形の書き写しなどをしながら解く訳ですが、心の声で流れを再現すると・・・
「おっ、今年はニュートン算ですか。」
「ふむふむ、<じはしみはじ表>に載っければ解けるかな。」
「えっ、でもこの学校がそんな簡単なはずないぞ。」
「・・・」
「げっ、整数の性質との複合問題かよ。」
こんな感じで、頭の中で解法の引き出しを開けながら適合しそうな解き方を思い出している訳です。
問題を解いている最中の自分自身の心のイメージは、油屋の釜爺です。 天井まで壁に並んだ解法の引き出しから薬草(解法)を取り出して、やげんでゴリゴリひいて薬湯(正解)を得るっていう感じ。
算数の得点が上がらないという生徒の多くは、頭の中の解法の引き出しの棚に空いた所がいっぱい残っていたり、あるいは引き出しのラベルが適当なためにどの引き出しを抜けば良いか分かっていない生徒です。
引き出しのラベルが適当ってのは、本当は速さの差集め算なのに、きはじの関係式に適当に当てはめて計算してみて、整数の答えが出て来たらそれで終えてしまう、など。
得点力を上げるためには、本屋さんの例えで言えば在庫を充実させて、目的の本にすばやく行きつけるように棚の配置やジャンルの看板を整理してあげることだと思います。
「習うより慣れろ」とか「覚えるんじゃない、理解するんだ」という方法で伸び悩んでいる場合、解法の引き出しと言うイメージで何が抜けているか見直し、それを埋めて行くという対策がお勧めです。
具体的な手法については、これまでも書いて来ました(ある意味で私のブログのメインテーマかも知れません)、今後も書いて行きます。