生徒が天体の単元に苦手意識を持つ理由のひとつが、「空を見上げる視点」と「宇宙から地球を見おろす視点」を行ったり来たりして考えなければいけない事です。
これはつまり、空の様子を主観的に見上げる天動説的な把握と、その自分の姿を客観的に宇宙から見つめる地動説的な把握を結びつける「空間の感覚」を要求されている訳です。
今回は、この二つの視点を四谷大塚の予習シリーズでどのように取り扱っているか、調べてみました。
予習シリーズは、現在、大幅なカリキュラム改訂が進行中です。
昨年度の4年生から新版に切り替わり、現在、小5の上巻まで出ています。
今回の確認には新版の方を使いました。
新旧の表紙は、こんな感じです。
予習シリーズの改訂に関しては、算数を含めていろいろと感じる点が有ります。
小5の下巻が手に入った時点で取りまとめをしてみたいと考えています。
どの参考書でも、天体に関する学習は「空を見上げる視点」から始まります。
子どもたちがこれまでの10年間で見慣れて来た空の様子から入る訳で、当たり前と言えば当たり前ですね。
そこで「宇宙から地球を見おろす視点」が、どこから予習シリーズに加わって来るのか、という事を軸にして調べてみました。
【予習シリーズ理科 小4上 第7回 太陽】
天体について学ぶ第一弾は「太陽」です。
太陽や地球の姿や大きさを説明する図以外では、ほぼ全てが地上から見た空の様子や、棒の影の図です。
唯一の例外は、これ。
南中時刻の地域差に関する説明図です。
指導を始めて最初の頃、この図を見て違和感を感じました。
いきなり「宇宙から地球を見おろす視点」だし、本来は球面上の事なのに家から家へと道を歩くポスティングのおじさんのように太陽を書いているし。
でも、これまで教えて来た生徒で、この図を「分からない」と言った子はひとりも居ませんでした。 これ、なにげに興味深い。
【予習シリーズ理科 小4上 第17回 星座をつくる星】
【予習シリーズ理科 小4上 第18回 星座の動き】
当然ながら、ほぼ全てが「空を見上げる視点」からの図です。
唯一の例外は、これ。
北極星の周りの星は反時計回りになる説明図ですが、この時点ではそこからの発展問題はほとんど出て来ないので、私はこの図を飛ばしてしまうことが多いです。
【予習シリーズ理科 小4下 第11回 月】
月が満ち欠けする理由の解説で、三球儀の図が登場します。
そこには、ボールを手に持った実験が詳しく解説されています。
ここで「空を見上げる視点」と「宇宙から地球を見おろす視点」が結びつく訳です。
大人から見ると当たり前の知識ですが、こうやって見直してみると主観的な観点と客観的な観点を結びつける重要な記述だと分かります。
丁寧に教えてあげるべき項目だと思います。
ここまでが小4で習う知識でした。
ご覧のようにほとんどが「空を見上げる視点」からの説明です。
小5からは急に「宇宙から地球を見おろす視点」が入って来ます。
中学受験の塾通いを小5から始める場合、注意の必要な点だと感じます。
【予習シリーズ理科 小5上 第4回 季節と星座】
星座の話は「空を見上げる視点」からの説明ですが、北極星の話で「宇宙から地球を見おろす視点」が入って来ます。
小4上の第18回で登場した北極星の図からつながる知識ですね。
私はこの回の授業ではここを軽く扱います。
北極星の向きが地球の自転軸の延長であるという話は、三球儀で自転軸が23.4度傾いているという話が登場した時点でたっぷりとやります。
その分の時間を次の透明半球に使うことが多いです。
(予習シリーズのこの図、好きです。 透明半球が透明全球として描かれてるから)
この単元では透明半球を、自分で素早く書けるようになるまで徹底的にマスターさせます。
参考記事:
2018-05-20:女子学院2002年の理科:透明半球と太陽の動き
この単元では、季節によって見える星座で、三球儀が本格的に登場します。
以降の単元では「宇宙から地球を見おろす視点」が説明の中心になり、「空を見上げる視点」は、地上からはどのように見えるかという結果を見せる為に使われる場合が多いです。
【予習シリーズ理科 小5上 第14回 太陽系の天体】
【予習シリーズ理科 小5上 第19回 地球】
それらに関する解説は、また改めて書きます。