駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

出題者のするいぢわる:算数編

入試問題は基本的に満点の7割くらいが平均点になるように設計されます。 当然、人気の高い学校は、問題が易しすぎると皆が満点を取ってしまいますから、何らかの方法で点数を取れなくする「いぢわる」をしなければなりません。

今日は出題者がどんないぢわるをするのか、それに打ち勝つ方策は?という話です。

 

 【1:複数の単元を組み合わせる】

<仕事算>や<旅人算>の難度を上げるのに<つるかめ算>と組み合わせるのは、定番中の定番ですね。 「途中まで歩いて後は走ったら〇〇分でついた。歩いたのは何メートル?」とか典型的な複合問題です。 

戸惑う生徒の多い<流水算>も<旅人算>と<和差算>の組み合わせですし、複雑な形状の水槽に水を入れる<水深のグラフ>も<速さ><立体図形><グラフ><比の利用>など複数単元の組み合わせ問題です。 

難関校の入試問題では<〇〇算>を何種類も組み合わせて、その中の一つでも抜けていたら答えにたどり着けない、といういぢわるをして来ます。

このいぢわるに打ち勝つには、なによりも「苦手な単元を残さない」ことです。 苦手な単元を残さないというのは「時間をかければ解ける」という事ではありません。 難関校を目指すならば小6の夏期までには「全ての単元で基本問題なら1分で正解できる」というレベルまで仕上げておきたいです。 

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【2:複雑な動きを整理させる】

「マジック・ナンバー・オブ・セブン」を利用したいぢわるです。 小4までは、問題を読んで、いきなり筆算を始めて、さっと正解を出せていた生徒だったのに、小5の上期あたりから急に解けない問題が増えるという原因のひとつが、これです。 

たとえば<旅人算>で、動きの様子を説明する文章が10行にもおよぶ問題が、難関校の入試では出たりしますが、これを腕を組んで頭の中だけで整理出来たら・・・神業です。 

このいぢわるに打ち勝つには、神業ならぬ紙の業が強い武器になります。 紙の上で整理する「方法を覚え」それを試験で「実施する」ことが正解への道です。 <塩水算(濃度)>の問題でその例を紹介した記事が、これです。

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【3:たった一本の道をさがさせる】

上のような複雑な動きの問題に、更にもう一段のいぢわるを重ねたい場合、出題者の先生は消しゴムを手にして、問題文やグラフ上や図形上の数字をギリギリまで消して行きます。 時には必要な数字を消してしまい、何かの処理をしないとその数字が得られないようにしたりします。 

たとえば<図形問題>の場合、中堅校では正解に至る道筋が複数あったりするのですが、難関校では唯一の数値から一本だけの正しい道筋をたどらないと解答にたどり着けないような問題が出ます。 

このいぢわるに打ち勝つには、参考書の解説を逆から読んでみるのが良い訓練になります。 

参考書の解説は、判っている知識から正解に向かって一本道の流れを書いているだけで、試行錯誤の道筋は書かれていません。 

それを補うために、知りたい数値から「それを知るためには何が判れば良いか」という逆向きの流れをシミュレートすることで、「知っていること」と「知りたいこと」の二つが出会うまでの時間を短縮するための訓練をする、という訳です。 

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 【4:公式の背景を問う】

成績が中位の生徒に求められるのは公式を漏れなく覚える事です。

難関校を受験する成績上位の生徒は「覚えているのがあたりまえ」ですから、なぜ、そのような式で答えが得られるのか、その理解のレベルを問う問題が出ます。 

たとえば<時計算>なら、1時間が60分でない時計とか。

komazawajuku.hatenablog.comこのいぢわるに打ち勝つには、公式を暗記して安心するのではなく、なぜ、そのような式になるのかを説明できるようになっておくことが必要です。

特に<場合の数>や<数の性質>の単元では公式の背景を問う問題が頻出です。

 

【5:とんでもない数字が正解】

開成中学桜蔭中学などでは、ちょっと見には簡単そうなのに、とんでもなく桁数が多かったり、分母が3桁の分数になるような問題が出ます。 

学習塾で受けて来たテストは、採点の手間を優先して単純な数字が正解である場合がほとんどですから、とんでもない数字が出て来ると本能的に(?)不安に陥ります。 あせって最初から解き直しをして貴重な時間を浪費してしまう受験生が毎年います。 

このいぢわるに打ち勝つには、自分の出した答えに絶対の自信を持てるレベルまで仕上げて受験本番にのぞむ、という私の嫌いな精神論になってしまうのかも・・・

 

 

【6:考える時間を与えない】

算数に関して、このキーワードで頭に浮かぶのは女子学院ですね。 

驚くような量の問題を、受験生たちはわずか40分で解き切ります。 

これをいぢわると呼ぶのは不適切ですが、打ち勝つには「苦手な単元を残さない」だけではなく、「全ての単元で基本問題なら1分で正解できる」レベルに早期に到達し、その上に応用力を載せて行く、という作戦がベストだと考えます。 

(2019年の入試は例外と思いたいです。) 

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 【まとめ】

出題者が正答率を下げるために、どんないぢわるをするのか、それに打ち勝つ方策は?という話を書きました。 

2月から受験年度に突入した新小6は、夏期講習の終わりまでにどこまで基礎を固めておけるかが秋以降の得点力向上に大きく影響します。 

今日の記事で列挙した「打ち勝つには」も、基本は全て基礎力の確立です。 

それを前提として、出題者の仕込んでくるいぢわるを、あらかじめ知っておくことは役に立つはず、という意図で記事を書きました。

 

 

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2021-03-03追記:続編(受験生からの対抗策)の記事です。

komazawajuku.hatenablog.com

 

 

 

 

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