地質柱状図は、入門編から高難度の問題まで自在に調整でき、関連知識を問う設問も作りやすいので多くの学校で出題されます。 そこで、まずは出題のパターンと基本的な解法テクニックを整理してみました。
地質柱状図とは、ボーリング調査によるサンプル(ボーリングコアといいます)の岩石分布を棒グラフのような図にしたものです。
以下のような要素が重なり、苦手と感じる生徒が多いジャンルです。
★限られた情報からの推理を必要とする。
★柱状図の二次元情報から三次元の立体を考察する。
★「地表からの深さ」というマイナスの数値を扱う。
今日はまず出題のパターンと解き方のコツまで書きます。
それぞれの詳しい解き方に関しては、過去問を使って改めて解説します。
基本のパターン:地表は平坦、地層に傾き
地質柱状図に関する入試問題の最も基本的なパターンは、平坦な土地の地下に東西または南北どちらかに傾いた地層が埋まっている、というものです。
このレベルの問題は、凝灰岩か火山灰の層に注目して、その深さを平面図に書き込むというのが基本的な解法テクニックです。
出題者が正答率を下げたい場合、地層の傾きの向きを単純な東西や南北ではなく、「南東に向かって下がる」といったような斜めの方角にすることがあります。
その場合も解法テクニックは同じです。
応用パターン:地表に起伏有り
ボーリング調査をおこなう土地が平坦でなく、山あり谷ありの起伏の有る地形になると正答率が、がくっと下がります。
世田谷学園2007年第二次試験 での出題例
この形式になると解法テクニックが変わります。
まず、地図ではなく柱状図の方に書き込みをしましょう。
書き込むのは地層の上面または下面の「標高」です。
各地層の標高は、ボーリング調査地点の標高から深さを引いて求めます。
この作業によって「海面(=標高ゼロメートル)」という基準点を意識できるわけです。
その後に特定の地層(たぶん凝灰岩か火山灰の層)にターゲットを定めて、その「標高」を平面図に書き込む作業をして地層の傾きなどを考察します。
応用パターン:水平に何m掘ると指定の地層にぶつかる?
ボーリング調査は地表から下に向かって掘りますが、谷間から水平方向に掘った場合に何メートルで指定の地層にぶつかりますか、という出題もあります。
解法テクニックは単純、断面図を書いて平面図形問題として解くだけです。
【脱線】
「水平に掘って目的の地層に達する」というのは個人的に惹かれます。
北海道にあった下川鉱山という金属鉱山が、立坑ではなく谷間の坑口から水平坑道で切羽に向かうという珍しい構造でした。
ここ、私にはちょっとした縁が有るので・・・
【脱線終了】
応用パターン:逆転がある問題
あるひとつの層の中にわざわざ粒の大きさが書かれている場合、褶曲(しゅうきょく)による地層の逆転が起きている可能性が99%ですね。
おそらく設問にはその地点の水深変化の判定も入っていると思います。
泥岩、砂岩、礫岩によって水深変化を判定する問題の解き方も、いずれ別記事で書きます。
地層の逆転を受験生に気付かせるためのパターンとしては、「生物による巣の穴の化石」というのも考えられますね。
「生物による巣の穴の化石」が下を向いていたら、地層の逆転が起きた証拠です。
応用パターン:凝灰岩か火山灰の層が複数
・地質柱状図が何本か有る。
・凝灰岩か火山灰の層も複数有る。
・どの柱状図にも有って基準として使える物が無い。
こういう場合の解法テクニックは、凝灰岩か火山灰の層に記号(名前)を付けることです。
どれとどれが同じ地層かは、地層の並び順から判定します。
具体的な例題を使わないと説明が難しいので、詳細は別記事で・・・
ところで、深さの変化を追うターゲットに「凝灰岩か火山灰の層」を使う理由も、地質柱状図の学習中に確認しておきたいです。
これは示準化石の3要素を再確認する為に活用できます。
示準化石の3要素
・生存期間が短い →その地層の時代が特定できるから
・世界中に分布した→離れた地域の時代を特定できるから
・数が多い →見つけやすいから
凝灰岩か火山灰の層も大規模な噴火による物は要素を満たしています。
・期間が短い:噴火は短期間に終息する
・広く分布 :世界中ではないが広く火山灰が散る
・量が多い :大規模な噴火では膨大な量が噴出
同じですよね。
知識と知識を類似性で結びつけるのは、以前より書いている「知識のネット化」です。
ある閾値(しきいち)を越えると、知識の習得が急激に楽になります。