今朝、NHKの朝の番組を見ていたら今年度(2020年度)の麻布中学の入試問題が取り上げられていました。 そして取り上げられた理由が、今日が初代はやぶさ帰還の10周年だからでした。
そうか、もう10年になるのですね。
当時はmixiに連日のように書き込みをしていました。 当時の書き込みを見るために、さきほど(たぶん数年ぶりに)ログインを試みたら、しっかり日記や書評が残っていました。
人類が初めて小惑星に着陸させた探査衛星「はやぶさ」は、その旅路をリアルタイムで追っていました。 いやぁ、いま見直しても波乱万丈でしたね。
「ほとんど致命的なトラブル」
「通信途絶」
「奇跡的な自律復旧」
「通信復活と『こんなこともあろうかと』準備しておいた対策の実施」などなど、
何週間も何ヶ月も音沙汰が無くなり、もう駄目だろうとあきらめた頃になっての解決の発表、それが繰り返し何度も起きたわけで、テレビでやっているリアル(風)ドラマなんか足元にも及ばない「ドラマ」でした。
はやぶさの目的地は光の速さでも往復に数十分もかかる遠隔地ですから、地球から一つ一つの指示を出して動かすのは無理です。 そこでトラブルが発生した場合にはどうするか、自律プログラムが搭載されていました。
たとえば、もしも高指向性のアンテナが地球を見失っても、「僕はここに居るよ。僕はここに居るよ。」という信号を出しながら地球からの電波を探しなさい、というような行動が仕込まれていた訳です。
真っ暗な惑星間の空間で迷子になり、何週間も何ヶ月も弱い信号を出しながら地球からの電波を探す様子、そして、はやぶさが何億キロも離れた場所で活動を続けていた事を発見した運営チームの気持ちを想像すると、心がゆさぶられます。
日本人は無機物の中にも心を感じ取る傾向が有りますが、プロジェクトの川口さんが書かれた本のタイトルにもそれは現れていますね。
『はやぶさ そうまでして君は』
さて、今朝の番組で取り上げられていた麻布中学の理科の入試問題です。
麻布中学 2020年(令和2年) 大問4 (1)
クレーターに関連して述べた文として最も適当なものを、次のア~エから選び、記号で答えなさい。
ア.月では、古い時代に作られた表面ほど、クレーターの数が少ない。
イ.地球を宇宙から見ると、月に見られるよりも多くのクレーターがある。
ウ.地球では、形成されたクレーターが消えてなくなってしまうことはない。
エ.人類は地球以外の天体にものをぶつけて人工クレーターを作ったことがある。
大問4は「風化」に関する設問が並んでいます。
それに気付けば、月の表面には地球と違って大気圏(特に水)が無いので風化作用が非常に弱いという知識から ア、イ、ウ はどれも間違いだと気付けるはず。
そして更に、選択肢エも広い意味では「風化」に関連する記述です。
それは、今回の「はやぶさ2」がリュウグウを尋ねた目的につながる話です。
小惑星探査の目的で、私が注目しているのは「生命の起源」の研究です。
生命の根幹をなすタンパク質は、水素、酸素、炭素、窒素などが複雑につながった分子ですが、そのような複雑な構造の分子がどのように出来たのか、まだ定説は有りません。
小学生の頃に学研の「△年の科学」で、太古の海の中で巨大な落雷のエネルギーを得て「偶然に」原子が結びついたという説のイラストを見た記憶が有りますが、何億年もの時間を掛けたとしてもエネルギーの変換や自己複製などの機能を持った巨大分子が「偶然に」生まれるものなのか?
手塚治虫さんの「火の鳥」の中に、死を奪われた男性が生命の絶えた地球に次の生命の種子となる一つかみのタンパク質を撒くというエピソードがありました。 生命の起源も、個々の原子からスタートしてではなく、タンパク質の部品となる有機分子が惑星外からもたらされる事で最初の数ステップをジャンプしたのではないかという説が有ります。
すなわち、
地球上の生命は、個々の原子が「偶然に」結びついて生まれたのではなく、太陽系が出来るはるか以前に宇宙のどこかにあった惑星から飛んで来た有機分子が種子になって、という説です。
火星と木星の間にある小惑星帯は、惑星になりそこねた破片の集まりです。 その破片の中にタンパク質につながる有機物の「部品」が有ったら?
小惑星帯の破片は3種類あると見られています。
C型小惑星:炭素質
S型小惑星:ケイ素質(岩石質)
X型小惑星:金属質
下記の記事で書いた、渋谷区文化総合センター大和田にあるプラネタリウム にはロビーの展示ケースにそれらの小惑星に由来すると見られる隕石の標本が展示されていましたが、今も有るのかしら。
はやぶさ2が訪れたリュウグウはC型小惑星です。 その表面からサンプルを採取するにあたり、数十億年という長い間、太陽風と呼ばれる粒子の噴出しや、太陽の光エネルギーの影響を受けた表層を吹き飛ばし、小惑星が出来た当初の粒子を得るために小さなクレーターを人工的に作りました。
太陽風や輻射エネルギーによる物質の変化、これも広義では「風化」と言える訳ですね。
「はやぶさ」と「はやぶさ2」の話は、いくら書いても終わりません。
「はやぶさ」は人類が飛ばした初めての「ニュートン力学だけでなくアインシュタインの相対性理論を反映させて航跡管理が必要だった飛行体」であることとか、 「なぜ、日本は隕石の研究が世界トップクラスなのか?」などなど。
今日の最後にあとひとつだけ。
はやぶさは本来はサンプルを入れたカプセルを地球に投下した後も飛行を続けて様々なミッションをこなす予定でした。 しかし数々のトラブルの結果、地球に帰還した時には満身創痍になっており、チームはサンプルカプセルの確実な回収を優先し、カプセルの切り離し後に本体も大気圏に突入し燃え尽きるというコースを選択しました。
チームはカプセルの切り離し後、最後のミッションとしてはやぶさの向きを大きく変え、カメラを地球に向けて帰って来た故郷の姿を見せるという選択をしました。
はやぶさの送って来た最後の映像を見て、大気圏突入の瞬間に映像の途切れた写真を見て、匿名掲示板2ちゃんねるに投稿したのが以下の25行です。
やっとカプセルを送り出せたよ。
TCM-4は、しんどかったなぁ。
最後だから頑張れたけど・・・疲れた。
それにしても最後の管制、相変わらず職人すぎ。
ウーメラのチーム、驚くぞ。
針の穴を通すとか、そんなレベルじゃ無いもんな。
くくくく
あっ、うすださんから連絡だ。
・・・
え?いいの?キセノンも電池も無くなっちゃうよ。
・・・
そうか、僕にはもう要らないんだ。
たいせつに、たいせつに使ってきたけど、もう要らないんだ。
もう、好きなところに顔を向けて良いんだ。
うん判った。
・・・
見えた。
見えたよ。内之浦だ。
僕はあそこから来たんだね。
帰りたいなぁ。
痛、いたた。
もう少し、もう少しだけ向きを変えさせて。
あともう少しで見えるはずなんだ。
相模原が
あと少しで。
2022-06-07:追記 アミノ酸が検出されました!