駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

上手な質問のやり方

問題演習で「解けない」とき、生徒はそれを「わからない」と表現することが多く、たとえば先生のところに質問に行くときには「先生、この問題がわかりません。」と言います。 この質問のやり方は間違っています。 今日は上手な質問のやり方を書きます。 ご自宅で保護者様が質問への対応をする時にも使っていただきたい方法です。

 

生徒からの質問を受け付けると、初めはほぼ全員が「先生、この問題がわかりません。」と言いながらテキストを持って来ます。 どこがわからなかったか尋ねると、テキストを開いて問題の番号を指差しますが、そこに解こうとした跡は有りません。 その際にパパッと問題を解いて「ほら解けた。答えはこれだろ。」と言うと、生徒は「わーい」って戻って行きます。 これで生徒は問題を解けるようになるでしょうか。

 

すこし意識の高い先生は、「わーい」って戻って行く生徒の背中に「かならず自分でも解いてみろよぉ」と言います。 言われただけで自分でも解きなおしてみる生徒は半分も居ません。

『正解を手にしたことで満足してしまうのです』

 

もうすこし意識の高い先生は解説する途中で生徒に質問を投げて、どこがわからなかったのか探りを入れます。 次々に正しい答えが返ってきて、あれ?何がわからなかったのかなと不思議に思っていると、単に問題文の説明がわからなかっただけだったりします。 時間を無駄にしたことにガックリします。

 

生徒が「まったくわからない。全部わからない。」と主張することもあります。 「先生にもう一回、授業をやれってことかい?」と尋ねると、ニコニコしながら「はいっ!そうです!」って言います。 授業ノートを持って来てもらうと、テキストと見まがうほどきれいに書いてあります。 で、どこがわからないのか指差してもらおうとすると「ぜんぶ!」 ・・・ガックリします。

 

得点力を上げる質問をするためには、生徒がやっておくべき事があります。 これは教えないとわかりません。 そこで質問のやり方についてフロー図を作って指導しています。

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図が小さくて文字がつぶれていると思いますので、そこに書かれた事をそのまま文字にしながら説明します。

 

最初の枠の中は、そもそも質問する目的は何かという「理念・目的」にあたる「宣言」です。

『質問をする目的は、

 次に類題に出会ったときに、自分ひとりで解けるようになること。

 「解けるようにしてもらう」のではない。「解けるようになる」のだ。』

 

最初の分岐は『問題を解こうとした跡が有るか?』です。

分岐の右には補足説明を箇条書きしてあります。

『・「解こうとすること」が大切。』

『・先生は間違えた跡を見たい。』

『・図や表には書き込みをする。』

『・汚い字で良い。読めれば。』

これをせずに質問に来た生徒は、出直してもらいます。

 

次の分岐は『解答・解説を理解しようとした跡が有るか?』です。

『・途中式の書き写しをしてある。』

『・図への書き込みも解説から書き写してある。』

『・解説の不明部分に赤線や?マークなどの印がある。』

これも、していなければ出直しです。

 

質問に行く前に生徒自身がここまで実施していると、生徒の心の中にしっかりと「?」マークが出来ています。 そこに先生からの解説が届くと、乾いた砂に水が染み込むように知識が入ります。

ようやく、『質問対応の実施』です。 

その枠の右側には『・「わかった!」と思っても油断せずに、もう一度の解き直しをしておきましょう。』と書き添えてあります。 これは意識の高い子に向けた駄目押しです。 これを出来る子は上位クラスに行けます。

 

基本的には「自助努力」を強いるループを組んであるのですが、各分岐から左に「ぜんぶ、わからない。」と言う子へのエスケープ・ルートを作ってあります。 それらの矢印の行き先は最下部の枠で、そこには以下のように書きました。

『まったく判らない、という場合も大歓迎です。ただし・・・
 ①その知識を学ぶための方法を伝えます。
  ( 要点の説明、テキストの単元指示、プリントの提供など)
 ②持ってきた問題そのものに関する解説は基本的にしません。

  指示された勉強をしてから演習をして、質問が有れば来てください。』

テキストの解説の途中からならともかく、一行目からわからないと断言する子の場合、いきなり「問題の解き方」を説明したら、本人は満足し、対応も短時間で終わりますが、解けるようにはなりません。 生徒からのかたくなな「わからない」という発言に対して指導する側に「なぜ?」の意識が足りないと、そのような悲劇が起きます。

 

中学受験塾によっては授業終了後に生徒に列を作らせて、ひとり一問の限定で対応する所があると聞いています。 貴重な一問を最大限に活用するためには自助努力が必要です。

授業時間外に長時間の補習をしてくれる塾でも、正解を出す手順を見せてもらうだけという補習と、自助努力で残った疑問点だけを質問する補習では学力の伸びが大きく違います。

 

ご自宅で勉強を見る場合について触れます。 

家庭で宿題をする手順を以前に書きました。

komazawajuku.hatenablog.com

1: 5分考えて解けなかったらすぐに解説を読む。

2: 解説を読んで解けそうに思えたら、解説を閉じて解いてみる。

3: 解けなかったら、できるだけ意味を考えながら解説の式を書き写す。

4: 書き写した式の数字と問題文に登場する数字の対比を調べてみる。

この手順はほぼ質問のフローを生徒側から見た場合の自助努力分に相当します。 宿題等の自宅学習ではこの手順を守らせるだけで成績向上への第一歩になります。 問題の解き方そのものは指導できなくても宿題をどのようにやっているかは見てわかるはずですので、ぜひ指導してあげてください。 

 

 

【おまけ】塾の先生や家庭教師を始めたばかりの人は、今日のフロー図を生徒に徹底してみましょう。 成績が上がるだけで無く、質問への対応がすごく楽になりますよ。

 

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