駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

叱ると褒める:その3

『叱ると褒める』について過去2回、書きました。 今日は「北風か、太陽か」という指導の方向性について考えてみました。

 

どちらが旅人に外套を脱がさせることができるか賭けをした北風と太陽の話。 生徒の指導における方向性も、保護者様や、その意を受けた先生の方針が大きく影響します。 過去2回の記事は以下のような内容でした。

 

『叱ると褒める』

成績が低いことを叱らない。 叱られたときに子どもは何をすれば良いか判らないから。 成績は上がったときに褒めるために使う。 叱るのはやるべき事をやらなかったときに、すぐにそれを叱る。 そうすれば子どもは何をすれば良いか明確に認識できる。

komazawajuku.hatenablog.com

 

『叱ると褒める:その2』

学習予定の作り方と未達成の場合の叱り方、勉強量を増やすときの注意、勉強やテストでの「手抜き」の叱り方、感情的に叱らないための工夫、数十年前の深沢塾での思い出。

komazawajuku.hatenablog.com

 

今日のテーマは「北風か、太陽か」です。

それぞれの指導方法の利点について挙げて見ると・・・

【北風方式の利点】

・ 特に工夫をせずとも実行できる。

・ 効果が出るのが早い。

【太陽方式の利点】

・ こと細かな管理をしなくても良くなる。

・ 受験寸前期での伸びが大きい。

 

それぞれの【利点】の裏返しが【欠点】ですよね。 それでは裏返してみましょう。

 

【太陽方式の欠点】

・ 指導方法に工夫が必要である。

毎日一定量の課題をやらせるなら、叱りつけた方が早いし楽です。 基本的に叱ることをせずに太陽方式で毎日の学習をさせようと思ったら、生徒が何に反応するか見極めて、そのスイッチを入れる方法を試行錯誤し、褒める・認めるなどの褒章を約束どおりきちっと実行・・・してもキッチリとやってくれるかどうかは半々だったりします。

・ 効果が出るのが遅い

太陽方式で学力を上げて行くには P:指示を出す → D:実行させてみる → C:成果を確認する → A:褒めて次のサイクルの指示範囲を検討する というPlan・Do・Check・Actionのサイクルを何度も廻して行く必要があります。 効果が出て来るのは何回目かのサイクルが廻ってからになりますので即効性の面では劣ります。

 

【北風方式の欠点】

・ こと細かな管理が必要になります。 厳しく叱られるのを恐れるあまり、形だけ宿題を終わらせる生徒を集団塾でたくさん見て来ました。 これを防ぐためには解答・解説のページをテキストから切り取って管理するくらでは駄目です。 「テキストを2冊買って宿題の範囲を終わったという宣言の後に目の前でテストしてみる」というレベルまで管理すれば形だけの演習は防げるでしょうが、今度は勉強の時間そのものが不足になります。

・ 受験寸前での伸びが小さくなる傾向があります。 6年生の秋に志望校の過去問を解いたとき、ほぼ全員が合格者平均点に及ばないわけですが、不正解を叱られて受身で解き直し(だけ)をする生徒と、どうやったら合格者平均に届くか積極的に質問して来る生徒では最終段階での伸びが違います。 

 

利点と欠点を洗い出すために極論に近いかたちでまとめてみました。 どちらか一方だけが正解という問題ではなく、ふたつのバランスが重要なのはもちろんです。 

中学受験は何年もかかる難しいプロジェクトです。 生徒本人・保護者様・そして先生のトライアングルが調和して働いたとき、最高の結果が得られます。

北風と太陽のバランスに関する最適値はご家庭によって全部違います。 現時点から受験本番までどのようにデザインするか、保護者様と先生という「おとな」がどのように役割分担するか、利点と欠点を具体的に見据え、将来をも想定したプランを立てられるか、この「正解の無い、最適解に近付くことが目的の検討」の一助になれば思い、今日のとりまとめをしました。

 

「叱ると褒める」のテーマ、まだまだ続きます。

 

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