参考書で<場合の数>についての解説を読んだときに気になっていることがあります。 それは<場合分けして考える>を使って解いている問題のほとんどで、場合ごとの数の合計に「掛け算」が使われていることです。
<場合の数>の単元で、<積の法則>を使うか<和の法則>を使うかという見きわめは、学習を始めたばかりの生徒が頻繁に質問に来るポイントです。
導入したばかりの時には、
・ どちらか一方を選ばないといけない場合には<和の法則>
・ 前後が独立してる多段の場合には<積の法則>
と単純化して教えることもありますが、慣れてきた生徒には次のように説明します。
「積の法則を使う問題って、実は和の法則でも解けるんだよ。
でも同じ数を足すだけなら掛け算しても同じ答えだよね?
そういう場合は繰り返しの数だけ掛ければ楽を出来る訳だ。
先生の口癖の『楽をするための努力を惜しむな』だね。 」
『楽をするための努力を惜しむな』 というのは
算数や数学の本質を示す言葉だと思います。
<場合の数>の問題は、極論を言えばすべて「数え上げれば」解けます。
数え上げるルールをしっかり守って漏れ無く・重複無くリストアップが出来れば、どんな問題でも正解が(理論的には)得られるはずです。
とは言え、
答えが2431通りにもなるような問題を一つ一つ数え上げていったら時間が掛かり過ぎますし、おそらく確実にミスをしてしまうでしょう。 だからこそ<積の法則>とか<和の法則>などの解き方を覚えて、楽に正しい答えを出そうとする訳です。
これを私は『楽をするための努力を惜しむな』と呼んでいます。
ちなみに、
いわゆる中堅校の入試問題では<積の法則>とか<和の法則>などの解き方で正解を得られることが多いですが、難関校では単純な解法の当てはめでは正解が出せないように「ひねり」を入れることで<場合分けして考える>処理を要求する出題がけっこう有ります。
逆に、難度の低い学校を受ける生徒の場合、安易に解法を当てはめて出て来た数字をそのまま書いてしまうという失点を防ぐために、あえて全部を書き出して解かせるという誘導をした方が良い場合もあります。
解説に「掛け算」が書かれている例を示します。
日本大学中学校の 2010年(平成22年)第1回入試の大問3番から部分的に抽出しました。
【問題】
図のように,上下,左右の間隔が等しい6個の点A,B,C,D,E,Fがあります。 この中から選んだ3個の点を頂点とする三角形をつくるとき,次の各問いに答えなさい。
(12) 直角三角形はいくつできますか。
【解説】
声の教育社の問題集から解説を引用します。
☆ ☆ ☆ ここから引用 ☆ ☆ ☆
点A,B,Cから2個,点D,E,Fから1個選んでできる9個の三角形のうち三角形ABF,三角形BCD以外の7個はすべて直角三角形である。
同様に,点A,B,Cの中から1個,点D,E,Fの中から2個を選んでできる直角三角形も7個ある。
よって,直角三角形は全部で,7X2=14(個)できる。
☆ ☆ ☆ ここまで引用 ☆ ☆ ☆
この解説の最後の行、、合計を出す手順でなぜ「 7X2=14 」なのでしょう? 「どちらかしか選べない場合分け」の結果なのに、なぜ「 7+7 = 14 」にしないのでしょう?
場合分けして考えるよう誘導しながら積の法則を使っているように感じてしまう計算式を生徒に見せるのは抵抗を感じます。 しかしほとんどの参考書で掛け算を使っています。
小さい事にこだわっているように見えることは判っています。
でも解答・解説というのは、その問題を解けなかった子に教えるために書かれているべきです。 場合分けさせた始末で掛け算の式を示すというのは生徒に混乱をさせます。 実際この部分についての質問を一度ならず受けています。
なぜ掛け算を使っているのか、知りたいです。 割とまじで。