駒澤塾:中学受験の算数・理科

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時計算:左右対称になる時刻の問題

時計算の第2弾です。 短針と長針が左右対称になる時刻を求める問題を<ア+ウ=ウ+イ>、<比を使った旅人算>、<シャドウ針>、<逆進針>という4種類の解法で解いてみました。 例題は日本大学中学校(日吉)の2010年(平成22年)第1回入試の大問1の(6)です。

 

<時計算>という単元に登場する設問のパターンについては、2018/05/15「解法の引き出し」というタイトルの記事に書きました。

<時計算:時刻から角度を求める問題>

<時計算:角度から時刻を求める問題:90度になるのは何分後?>

<時計算:角度から時刻を求める問題:長針と短針が重なるのは何分後?>

<時計算:角度から時刻を求める問題:一直線になるのは何分後?>

<時計算:角度から時刻を求める問題:二度目に90度になるのは何分後?>

 

<時計算>でちょっと難しくする(=正答率を下げる)方法はいくつかあります。 

まずは2018/05/11に「立教新座2012年第1回の算数:大問5番」で書いた<針の進む速度の違う時計>の問題、時計算の解法を丸覚えした生徒には解けないので出題する学校が多いです。 ざっと見ても渋谷学園渋谷の2008年、都市大付属の2011年、世田谷学園の2012年、開成の2014年などなど。

その他に<床屋の鏡に映った時計>、<目盛りの数字が取れてしまった時計>などが有り、それらは問題の見た目はだいぶ変わりますが、基本的に解法そのものはどれも同じで<角速度を使った円周上の旅人算・追いつき>です。

しかし、今日の<左右対称になる時刻を求める時計算>は解法そのものが一般的な時計算と異なります。 4種類書くうち最後の2つは、受検算数の技法として楽しいものです。

 

 【問題】

図3の時計で、7時から8時の間に、の角との角の大きさが図のように等しくなりました。 この時刻は7時□分です。 

 ↓問題の図は左上の文字盤だけ。 他は【解説】関連の図です。

f:id:komazawajuku:20180706230002j:plain

 

【解説】<ア+ウ=ウ+イ>

長針が動いた角度を とする。 すると の角度との角度の和は180度である。

図での角度との角度の大きさが等しいということは、の和も180度となる。

の角度とは、短針が動いた角度に30度を足した大きさである。

よって、長針の動いた角度と短針が動いた角度の和は 180 - 30 = 150(度) となる。

よって、150度を長針の速さ(毎分6度)と短針の速さ(毎分0.5度)の和で割ったものが答え。

  (分数の計算は文章で書きにくいので省略します。図を見て下さい。)

  (手書き解説のデジタル化を終えたところで の間違いに気付いた。あららら)

  (出題の時点で記号に を使っていること自体がヒントですね。)

 

【解説】<比を使った旅人算

この問題で求める答えは、7時ちょうどに長針と短針が同時に出発して、文字盤の6をはさんで2つの針が左右対称な角度になるまでの時間です。 したがってこれは<時間一定の旅人算>であり<速さと距離が正比例>になることを使えます。

長針の速さは毎分6度、短針の速さは毎分0.5度 ですから、速さの比は⑫ : ① です。

この比を使って左右対称になるまでに針の動いた角度(=距離)を表してみましょう。

長針は簡単ですね。 ⑫です。

短針の動いた角度は①ですから、文字盤の真下の6時から短針までの角度は ①と6時から7時までの30度を足して 30 + ① です。

長針と短針は真下の6時をはさんで左右対称ですから次の式が成り立ちます。

  ⑫ + ( 30 + ① ) = 180

よって、⑬ = 150 ということがわかります。

長針は5時間、つまり150度、つまり⑬を進むのに25分かかります。

この問題は長針が⑫進むのにかかる時間を求めれば良いので、 

  25(分) ÷ ⑬ × ⑫ を計算したものが答えです。

  (分数の計算は文章で書きにくいので省略します。図を見て下さい。)

 

【解説】<シャドウ針>

 長針と短針の真ん中に「シャドウ針」という架空の針を想定して解く方法です。

7時の短針は真上から210度進んだ所に居ますので、シャドウ針の位置は半分の105度です。

そしてシャドウ針の進む速度は長針と短針の速度の平均値です。

   つまり ( 6 + 0.5 ) ÷ 2  です。

シャドウ針が残りの75度を進んで真下の6時を指したとき、長針と短針は左右対称になります。  以上!

  (分数の計算は・・・以下、省略。)

 

【解説】<逆進針>

長針と同じ速度で逆向きに進む「逆進針」という架空の針を想定して解く方法です。

逆進針は毎分6度の速さで真上からスタートして反時計回りに進みます。

この逆進針が短針と出会うまでの時間が答えです。   以上!

  (分数の計算は・・・以下、省略。)

 

 

いかがでしたでしょう?

最後の<シャドウ針>と<逆進針>、ちょっと抽象度が上がりますので誰でもという訳にはいきませんが、御三家・難関校を狙うなら使えるようになっておくと応用力が増えます。 解法の引き出しが増やせます。 習得しておくことをお勧めします。

などと四の五の言う前に、こういった解法が使えるようになるのは楽しいものです。 中学受験の指導を始めた頃にこの2つの解法を知って私は感動を覚えました。  生徒も「解く楽しさ」に目覚めた子は目をキラキラさせて聞いています。

 

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