駒澤塾:中学受験の算数・理科

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鏡の傾け問題は法線に注目

光の反射で、鏡を回転させた時の角度の問題を苦手にする生徒は多いです。 この問題を解くポイントは、鏡に直角な線(法線)を書き込む事です。 例題としてラ・サール中学2019年の問題を取り上げました。 

 

鏡による反射に関する出題は「鏡に写る範囲」「全身を写す鏡の寸法」「複数回の反射(潜望鏡)」「反射像」「鏡を回転させた時の影響」「曲面鏡」などのバリエーションが有ります。 

 

「鏡に写る範囲」を、シャドウの作図で説明した記事がこれです。 

komazawajuku.hatenablog.com

その記事が、Smile2021中学受験さんのブログで紹介して頂けました。 ありがとうございます。 (って言うか、今日の記事はそれにインスパイアされて書きました。)

smile2021.hatenablog.com

 

 

さて、それでは「鏡を回転させた時の影響」を問う入試問題です。 

ポイントは単純で、鏡に直角な線(法線)を書き込む事です。

この書き込みテクニックを使うと「曲面鏡」の問題も解けます。 

 

今回は、反射の単元の中で、やや難しい分類に入ります。 

例題はラ・サール中学の2019年入試から大問4番の[A]です。

同じ年に早稲田中学でも鏡を傾ける問題が出題されています。 

 

【問題】

鏡に向かって進む光を入射光,鏡ではね返った光を反射光といい,入射光と面に垂直に立てた直線とのなす角を入射角,反射光と面に垂直に立てた直線とのなす角を反射角といいます。 図1のように,光は平らな鏡で反射すると入射角と反射角が等しくなるという性質を持っています。
この性質を用いて,以下の問いに答えなさい。

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(1) 図2のように水平な面から30度傾けた鏡に,水平な面と平行に光をあてました。 

   このときの入射角と反射角の和となる角aは何度ですか。

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(2) 図2の状態からさらに鏡を10度傾け,水平な而と鏡のなす角度が40度となるようにした後,水平な面と平行に光をあてました。 

   このときの入射角と反射角の和は,(1)の角aから何度だけ減少しますか。

 

 

次に,図3のように鏡Aを水平に,鏡Bを鏡Aに対して垂直に置いたところに光をあてることを考えます。 水平な面と30度の角をなす光を鏡Aにあて,さらに鏡Bで反射さ
せました。

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(3) 鏡Bで反射した光は水平な面と何度の角をなしますか。 

   ただし,答えは0度から90度の間で答えなさい。

(4) 鏡Aを固定し,鏡Bを鏡A側に倒していったところ,鏡Bで反射した光が水平になりました。 

   このとき鏡Bを図3の位置から何度倒しましたか。 

(5) (4)よりもさらに鏡Bを鏡A側に倒していったところ,鏡Bで反射した光が水平な面と垂直になりました。 

   このとき鏡Bを図3の位置から何度倒しましたか。

 

 

【解説】

(1) 30度傾けた場合

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丸数字の順番に計算します。

① 鏡が30度回転するのだから、法線も左に30度傾く。 

② 傾いた法線(黒の点線)と入射光のなす角は 90 - 30 = 60度 

③ 入射角が60度だから、とうぜん反射角も60度。

④ 入射角と反射角の和は 60 + 60 =  120 (度)  

 

 

(2) さらに10度、合計で40度傾けた場合

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ちょっと図がごちゃっとしましたが、計算の手順は(1)と同じです。 

① 法線は鏡に連動して左に40度、傾く。

② 入射光となす角は 90 - 40 = 50度  

③ 入射角と反射角は等しいから 50度

④ 入射角と反射角の和は 50 + 50 = 100度

⑤ (1)の角aから減少するのは 120 - 100 =  20(度)  

 

この(2)で差の値を答えさせているのは、鏡を10度傾けると、反射光は倍の20度変わるという事を確認させるためです。 

おそらく後に続く(4)や(5)でこの知識を使って答えを出すことを想定しているのだと思いますし、参考書の解説でもその流れで説明している物を多く見ます。 

でも私の解説では、その知識は使わずに答えを出してしまいます。

反射光の動きが2倍になるという知識を使って答えを出すというのは「間違い」ではないし、シンプルな流れなのですが、「解法の丸暗記」で留まってしまう気がするので。 

 

という訳で、2倍になるという知識は暗記する必要は有りません。 ただし、その「感覚」を持てていると難関校の出題への対応能力が上がります。 つまり、必須ではないが、持っていて無駄にはならない知識って感じです。 

 

 

(3) 合わせ鏡 

鏡Aと鏡Bの法線を書き足して、角度を順に書き込めば簡単に正解を得られます。 

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鏡Bで反射した光が水平な面となす角度は、  30度  です。

ちなみに、90度の合わせ鏡による反射を再帰性反射と言い、光は必ず来た方向に戻ります。 これを利用したのが自動車や自転車の反射板ですね。 

今回の例題では尋ねられていませんが、この状況で鏡の中に見える像にちょっと面白い特徴が有ります。 さて、それは何でしょう? 

 

 

(4) 反射光を水平にするには? 

このあたりから正答率がグッと下がって来ますが、手順に沿って書き込みをすれば簡単に正解が得られます。 

まず鏡Aから出て行く反射光と、問題文の指示である水平に出て行く最終的な反射光を図に書き込んでしまいます。 

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そして、それを実現するための鏡Bの法線を角度を二分する位置に書き込むと・・・

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正解は、図中の30度を二等分する

  15度  です。

さきほどの2倍になるという知識でも解けます。 

最終的な反射光が反時計回りに30度動けば良いのですから、

鏡の動きは半分の  15度  という事ですね。 

 

 

(5) 反射光を鉛直にするには? 

鏡Aから出て行く反射光と、最終的に得たい光の向きを最初に書き込みます。 

鏡Bを倒す方向の指示から考えて、求めたい水平面に垂直な光は「下向き」である事に気付けるかどうかがポイントです。

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そして、それを実現するための鏡Bの法線を角度を二分する位置に書き込むと・・・

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これ、解説が要ります?

って言うか、細かい所に数字を書き込むのが面倒臭い・・・

鏡Bが反時計回りに60度傾くと、光は真下に向かいます。 

よって正解は  60度  

 

 

いかがでしたでしょう?

大人でも全問正解するのは難しいかも知れないレベルの問題です。 

でも、入射角=反射角の基本を身に付けて、法線を書き込んで考えれば解ける問題です。 

「光の動きは鏡の2倍」という解説を読んでも納得できない生徒に、この作図の手順を実施させて見ると「なんか判った気がする」と言う事が多いです。 

 

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