凸レンズによる光の屈折に関する問題は、図を漫然と書き写しただけの生徒と、書き順を含めて書き方をしっかり覚えた生徒では、得点力に格段の差が出ます。
書き順のルールは単純です。
手順1:光軸に平行な線を引く
手順2:レンズの中央を通る線を引く
手順3:それら2本の線の交点を調べる
以上です。
作図の基礎になる知識もとても単純で、2つだけです。
1:光軸に平行な光は反対側で必ず焦点を通る。
2:レンズの中央を通る光は方向が変わらない。
たったこれだけの知識で、書き順を守って作図ができれば問題は解けてしまいます。 ところが、参考書を見ると、
・観察対象物の位置による場合分けが最低で5種類あり
・その位置ごとに像が出来るか出来ないか示されて
・さらには像が出来る場合に向き・大きさ・明るさ
といった情報がバラバラに書かれていたりします。
「うわぁ、これ全部覚えなくちゃいけないの?」と、生徒の表情が曇るのを何度も見て来ました。
凸レンズが作る像について、一覧表を丸暗記する必要はありません。
作図の手順、そして「像が出来るというのは、一点に光が集まる、または一点から光が四方八方に放射している、そのどちらかだということ」を覚えておけば、作図で解けます。
入試問題で説明します。 例題は、青陵中学 2015年(平成27年)第1回B試験の大問1からの抜粋です。
【問題】
鏡や凸レンズによってできるカードAのいろいろな像を観察しました。下の各問いに答えなさい。
凸レンズによってできる像について調べました。 この凸レンズに軸と同じ向きに左側から太陽光線を当てると点fに光が集まりました。
問4 カードAを位置aに置くと、右側の軸上にあるスクリーンに像ができました。 このときのスクリーンの位置はどこですか。 図中のe~hより1つ選び、記号で答えなさい。
問7 カードAを位置dに置くと像ができました。
① この像ができる位置はどこですか。固中のa~hより1つ選び、記号で答えなさい。
② この像の面積は、カードAの面積の何倍となりますか。
【解説】
太陽光線が点fに集まったということから、この凸レンズの焦点距離は目盛り2つ分であることがわかります。
問4
さっそく手順に沿って作図をしてみましょう。
手順1:光軸に平行な線を引く →下図の赤い線です。
手順2:レンズの中央を通る線を引く →下図の緑の線です。
手順3:それら2本の線の交点を調べる
この作図をする時は、必ず光軸に平行な光(赤色の線)を最初に書いてください。 この赤い線はカードAが左右どこに移動しても変わりません。 緑の線だけが変化し、それに伴って2本の線が交わる点が移動します。 これが凸レンズの問題を解くコツです。
2本の線は、レンズの右側で点hの距離で交わりました。
「像が出来るというのは、一点に光が集まること。」から、ここにスクリーンを置けばくっきりとした像が出来るということが判ります。
よって、正解は h
授業で教える場合には、カードAを点c、つまり焦点距離の位置に置いた図も書かせて、緑の線が赤い線と平行になることを確認させます。 これが「像が出来ない」状態ですね。
問7
作図の手順は同じです。 違うのは、レンズの左側に延長線を書くことだけ。
「像が出来るというのは、一点から光が四方八方に放射していること」と合わせて図を見れば、レンズの右側にいる観測者から点cの位置に2倍の大きさでカードAが見えるということが判ります。
という訳で、
① 像が見える位置 c
② 像の面積は元の 2 × 2 = 4倍
基本的な問題は、ここまでの方法で解けてしまいます。
応用問題への対応力を高めるためには、今回の作図を出発点にして(しっかり身に付けてから)いろいろなパターンの作図を自分で書いて行くのが良い方法です。
パターン1:カードAの上端だけでなく、中段や下端から出る光も書いてみる。
これにより、レンズの右側にできる像が倒立実像であること、
左側にできる像が正立虚像であることが実感できます。
パターン2:カードAの上端から、レンズの様々な場所を通る光を書いてみる。
ある1点から出た放射光は、レンズのどこを通ろうとも反対側で1点に集まる、というルールを説明してから作図させます。
レンズの一部を覆った場合、像の形は変わらず明るさが減ると覚える目的です。
パターン3:カードAとレンズまでの距離を変えて、像の大きさを調べてみる。
倒立虚像、正立実像の両方について三角形の相似を使って倍率を計算します。
2007年度の聖光学院など、上位校で倍率を計算する出題が有りました。