昨日、CanonのインクジェットプリンタをB200エラーから脱出させた話を書きました。 試行錯誤で解決して「しまった」ので、根本的な原因は判りません。 しかし、その試行錯誤は色々と考えさせてくれるネタをくれました。
前回書いたようにB200エラーが表示されて電源のオン・オフで復帰しない場合、プリンタが表示する対処方法は、電源ケーブルを抜いて修理に送る事だけ・・・だそうです。
本当にそうでしょうか?
ネット上でたくさん見つかるB200エラー解決の体験談を読むと、いくつもの推定が書かれています。
★このエラーコードはプリントヘッドの異常を示す。
★異常のひとつはヘッドの加熱なので冷却で復帰する。
★異常のひとつはヘッドの詰まりなので温水洗浄で復帰する。
★温水洗浄したら数日放置して充分に乾燥させること。
★低品質な互換インクが原因・・・と考える人が多い。
さて、どれが正解なのでしょう?
私の場合は状況から見て、あふれたインクがプリントヘッドの基盤か端子を浸して不具合を発生させた、と考えています。
結果だけ見れば、大したことは無い整備でトラブルから脱出できました。
komazawajuku.hatenablog.com1siou試行錯誤をするにあたっては、検索で得られた情報を参考にさせてもらいました。 先人達の情報共有に感謝、です。
大したことは無い整備で復旧できたのに、それについての情報がメーカーからは得られない。 これ、腹が立ちませんか? 表示されるB200エラーの指示は「電源抜いて、修理に出してね」だけです。
なぜ、このような食い違いが起きるのか?
それは「異常とは何か」という認識がメーカとユーザの間で一致していないからだと思います。
ユーザがやりたいのは「多少の問題ありでも印刷はなんとか出来ること」ではないでしょうか。 しかしB200エラーのメッセージから感じられるメーカ側の意思は「問題の何も無い印刷ができなければそれは異常、印刷はさせないよ。」です。
この基本方針、間違いだとは思いません。
パソコンやプリンタの利用者が昔みたいに専門知識を持っている人ばかりでなくなった今、クレームを避ける最も合理的な方法は・・・
・ユーザに余計なことをさせない。
・修理はメーカーのセンターで実施する。
・サポート期限切れは買い替えてね。
メーカーの立場から見れば、経費を最小限にできる方針です。
考えてみれば、プリンタに限らず、コピー機の修理も、自動車の修理も、メインの対応は部品交換よりもアッセンブリ交換が中心になっています。
修理どころか工場における製品の組み立てすらも、昔みたいに基盤に部品をハンダ付けして可変抵抗や可変コンデンサーを職人芸で調整する、なんてのは無くなり、アッセンブリを組み立てるだけで設計通りの性能が出せてしまいます。
そもそも、修理のために分解するということ自体が出来ない製品も多いです。
大学院生の頃、科学技術文献速報という科学論文の抄録誌をぱっぱっとめくって、所属研究室のテーマにからみそうな発表をチェックするということをしていました。
目にとびこんで来たのが自動車エンジンのスタッドボルトに関する研究報告。
スタッドボルトを、弾性限界を超えて降伏点の手前まで締め付ける、という設計をすることによって最大の強度を出させれば、ぎりぎりまで細い(=軽い)部品に出来るという研究でした。
それを読んで思いました。
弾性限界を超えて締め付けるという事は、そのスタッドボルトは一回組み立てたら変形してしまうわけで、再利用はできないってことだ。
あぁ、もうすぐ修理のためにエンジンブロックをばらす、そういう作業が出来ない時代が来るんだなぁ。
ちょうどその頃、エンジン不調のホンダCB-125JXを自分の手で修理していたので、なおさら感慨深いところが有りました。
当時、ホンダのSF(サービス・ファクトリー)ではオートバイ車種ごとのメンテナンスマニュアルとパーツリストを買うことが出来ました。
SFの窓口では数十円のパーツでも取り寄せることができ、対応してくれる油じみのついたつなぎを着たメカニックさんは誰もが機械いじりが大好きで、窓口でのちょっとしたやり取りが楽しくて参考になるものでした。
そういうことが出来なくなる時代がやがて来る、と感じたわけです。
今、まさにそうなりました。
手先の技、つまり工学的な技能は今でも重要な位置を占めているとは思います。
ですが、科学知識が有れば何かを作れると考える人が増えているのも事実でしょう。
先日、生徒からDr.STONE(ドクターストーン)という作品を知っているか、理科の先生としてどう思うか、尋ねられました。
Dr.STONEというのは少年ジャンプ連載の漫画でアニメにもなっています。
私から生徒への返答
うん、いちおう、知っている。
科学用語もいっぱい出て来るし、ひどい間違いも感じなかったし、用語に慣れるという面だけなら良いんじゃないかな。
ただねぇ・・・
キャラクターとかストーリー展開は(しょせん)少年漫画だから許せるんだけど、製造の現場を知っている先生から見ると
「ものつくり、なめんるじゃねぇっ!」って感じてしまいます。
この話に出て来るいくつものエピソードは、工学的な目で見ると絶対に無理です。
という事で、これこそまさに「科学知識が有れば何かを作れると考えるお話」ですね。