駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

図形の規則性:その4

図形の規則性に関する問題の解き方、その4です。 

4回に分けて<図形の規則性>の中学入試としての解き方を記事にしました。 一連の最後に、普通の子が難問を解けるようになるための方法、出題者の先生が仕込む「いぢわる」とそれへの対処法などを書きます。  

 

今回、整理表に対してする作業は単純なものです。 

  手順4:並んでいる数字同士の差を書くなどしてルールを探す 

「差 AはBより」の行の数値に対して引き算をし、整理表に書き込んでみました。 

分かりやすくするために、例示を6番目まで追加しています。 

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整理表を見れば、ルールはあきらかですね。 

3番目の図形の1から始まって、9、21、37、・・・ですから、

8、12、16、・・・という増え方をしています。 

 

(ここからは答えを出すための計算なので、読み飛ばして大丈夫です。)

整理表から見つけられたルールは、

nが4以上の場合において、 

2から(nー2)までの連続した整数の和を求め、

求めた和を4倍して、1を足したもの、です。 

 

よって、与えられた1009から逆算すると、 

 1009 - 1 = 1008

 1008 ÷ 4 = 252

 252 + 1 = 253

 253は 22の三角数 よって2を足して  24番目の図形  

はい、正解が得られました。 

(ここまで読み飛ばして大丈夫です。)

 

 

4回に分けて<図形の規則性>の解き方を記事にしてみました。 

そこから得られること、感じたことをまとめました。 

 「普通の子」が難問を解けるようになる方法、出題者の先生が仕込む「いぢわる」と対処法などを書きます。 

 

【整理表を書くということ】

<図形の規則性>という単元を苦手とする生徒は多いです。 

それは、なぜでしょう?

演習中の様子を見ていると、腕を組んで考えるだけ。 

つまり、実戦的な整理の手順を使っていないということです。 

そこで作ったのが、整理表を書き、数字を書き込みながら考えるための手順です。 

手順1:図形の下に表の枠を書く

手順2:図形から読み取れる個数などの数値を図形の種類ごとに書き込む

手順3:問題文の指示に従って和や差などの行も追加して数値を書き込む

手順4:並んでいる数字同士の差を書くなどしてルールを探す

手順5:ルールが見つからなかったら、数字を式の形にしてみる

手順X:ルールが見つからなかったら、図形を追加してみる 

 

【必須となる知識】

指示した手順で整理表を書いて、それでも解けない場合、原因は知識の不足です。 

知識とは、たとえば今回登場した<三角数><等差数列>など。 

問題を解く時にルールに気づけるのは、そのルールを知っているからです。 

中学受験の準備として、数字の並びを見た時に次のような物はどれに該当するのかを即座に気付けるようになって欲しいです。 

<等差数列><三角数><平方数><階差数列><等比数列><フィボナッチ数列

 

【表を書こうとしない場合】

数字の並びからルールを見つける力を付け、整理表を書く手順を覚え、整理表を書けば解けるという体験も積んで・・・ でも表を書こうとしない生徒がいます。 

ここまで来ると、これは好き嫌い、感情の問題です。 

なぜ、そんなに嫌ってしまうのでしょう?

 

原因は、正解に至るまでの道筋が複数ある、という点じゃないかと感じています。 

今回の例題でも複数の解き方が有りました。 

つまり、試行錯誤を要求される出題であるということです。 

まじめな性格の生徒の中には、まじめであるが故に試行錯誤を嫌う子が居ます。 

 

だからシンプルなルールで整理表を書かせて、途中の成果を可視化させたいのです。 

考えの流れを可視化することで堂々巡りを防止できますから、強制的にでも書くことを繰り返し実行させることで、「解ける」という感覚を味合わさせるのが対処方法だと考えます。 

 

【ひらめきと積み上げ】

今回の例題のような問題で、パッと市松模様に気付いて解ける生徒もいます。 

面倒くさい整理表なんか書かずに、しばらく腕を組んで考えただけでいきなりパパっと筆算をして正解を出してしまう生徒がいます。 

あこがれますね、うらやましいですね。 

どうやったら、ひらめきを身に付けられるのでしょう。

 

おそらく、その生徒にとって算数の勉強は「苦行でなく修行」なのではないかな。 

(「苦行と修行」については、改めて書きます。)

思い浮かぶ姿はSapixの上位生。 

算数の教材をフルに使う場合を考えると、デイリーサポートの「デイリーアプローチ」で演習をし、「確認編」をDまできっちり仕上げ、冊子(デイリーサピックス)で復習をし、更に次の回のデイリーサポートでの「復習と演習」まで、同じ問題の数字替えを何度も繰り返して解きますよね。 

一週間の期間にこれだけの演習をこなせる生徒とは、正解を出すだけなら大丈夫な問題に対して、もっと早く、もっと楽に解く方法は無いかな? と考えられる性格の子なのではないでしょうか。 

 

では、その境地まで至っていない生徒はどうすれば良いのでしょう。 

「苦行でなく修行」の生徒と同じことをさせるのは、間違っています。 

komazawajuku.hatenablog.com

私からの提案は、今回の連続記事でも提唱した「基本を大切に」です。 

・明確な手順に従って紙の上に書いて整理すること

・数字の並びを見たときに即座にルールを思い付けること

この方法で難問を正解できるようになるかは勉強量しだいですが、すくなくとも導入問題や中ぐらいの難度の問題は確実に得点できるようになります。 

入学試験の合格者平均点は、およそ満点の7割です。 

得点すべき問題で着実に点を取り、それにどれだけ上積みできるかが合否を決めます。 

 

【事例を書き足すこと】 

今回の記事では、できるだけ「ひらめき」要素に頼る部分を減らしたかったので、コツコツと整理表を書きながら解きました。 

解いた後、ルールが判ってから例示の図形を見ると「あれっ? なんで気付かなかったのだろう?」と感じる部分がかなりたくさん有りました。

この「気付き」が即座に出て来るのがさきほどの「苦行でなく修行」レベルの生徒であり、どこまで早く気付けるようになれるかという訓練が普通の受験生のする受験準備だと思います。  

 

その気付きを助けてくれるのが、事例の書き足しです。 

どのように書き足すべきかは、問題のレベルと生徒のレベルの組み合わせによって変わって来ますので、手順では優先順位の数字を付けずに「手順X」として入れました。 

 

なぜ、書き足しが有効なのか。

それは出題者の先生が事例を消すからです。 

 

【出題者のいぢわると対処法】

出題者の先生は、正答率を下げようと思ったら消しゴムを手にするのです。 

提示する事例を問題が成り立つギリギリまで減らし、さらにヒントになる設問を省略することで、同じ素材を使っても問題の難易度がグッと高くなります。 

 

事例を見せた方が早いですね。

今回の例題から(1)と(2)を省略し、例示も4番目の図形を消して3番目までにするとどうなるでしょう。 

 

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  出展:市松模様が高校入試に - 高校数学の解き方 の掲載図を改編

 

元の問題から一部分を消しただけですが、それだけで難易度がはね上がっています。 

いきなりこれを見て、すぐに正解が出せたら御三家レベルだと思います。 

 

対処法は明確。

出題者が消しゴムで消すなら、それを復活させれば良いのです。 

 手順X:ルールが見つからなかったら、図形を追加してみる 

です。

 

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