私は表を使って問題を解かせるのが好きです。 算数の<消去算>も、それが苦手と言う生徒には表を使って説明して、表情がぱっと明るくなるのを何度も見ました。 法政第二の2004年(平成16年)大問2番の(6) 、頌栄女子の2012年(平成24年)の大問1の(4) 単元は<消去算・加減法>です。
法政第二 2004年(平成14年)大問2番の(6)
【問題】
りんご3個とみかん2個の値段の合計は550円です。 また、りんご4個とみかん6個の値段の合計は900円です。 りんご1個の値段はいくらですか。
【解説】
四谷大塚では<消去算・加減法>の解説で式の変形を使っているので、それをこの問題の解説で再現してみました。
【り】×3 + 【み】×2 = 550 ・・・式1とする。
【り】×4 + 【み】×6 = 900 ・・・式2とする。
ここで 2 と 6 の最小公倍数は 6 ですから、式1を3倍するとみかんの個数は式2と同じ 6 個になります。
【り】×9 + 【み】×6 = 1650 ・・・式1の3倍。
【り】×4 + 【み】×6 = 900 ・・・式2そのまま。
この代金の差が、りんご( 9 - 4 =) 5本分の代金ですから、りんご1個のねだんは、
( 1650 - 900 ) ÷ ( 9 - 4 ) = 150(円)
りんご1個 : 150円
【この問題を表で解く】 図で示しました。 問題文の内容を表に整理して矢印の向きに計算すれば・・・明解に答えに到達できます。
頌栄女子 2012年(平成24年)大問1の(4)
【問題】
ノート2冊とペン3本の代金があわせて1020円で、ノート3冊とペン5本の代金があわせて1600円のとき、ノートは1冊□円です。
【解説】
声の教育社の過去問集の解説からすこし引用します。
ノート 2 冊とペン 3 本の代金は 1020円だから、5倍すると、ノート 10冊とペン 15本の代金の合計は、1020 × 5 = 5100(円)になる。 また、ノート 3 冊とペン 5本の代金は・・・(以下省略)
という調子で4行の文章を使って答えを得ています。
ノート1冊 : 120円
【この問題を表で解く】 図で示しました。 問題文の内容を表に整理して矢印の向きに計算すれば・・・明解に答えに到達できます。
私は表で解くのが好きです。
理由その1: 表で解くとケアレスミスが減ります。 見直しも楽です。
理由その2: 問題文の数字を表に書き込むだけで、表が解き方を教えてくれます。
とは言え、消去算を表で解くという方法は、大手塾で同僚だった算数担当からは賛同を得られなかったことが多かったです。
「えぇ? なんでそんな面倒なことするの? 式の変形なんて簡単じゃない。 」
そう言われます。 これまでにも書きましたしこれからも書いて行きますが、式の変形が簡単に思えるのは幻想だと私は思います。 中学・高校と何年も方程式を勉強して来た大人には簡単であったりまえのことでも、まだ訓練を受けていない小学生にとっては難物です。
声の教育社の解説のように文章で説明して行った場合、説明として読むには分かりやすいです。 けれど、これ、生徒が試験中に書く途中式は、どのように書かせようとしているのかな?
これも今後何度も書いて行くことですが、試験問題は「分かるから得点できる」ものでは有りません。 試験中に生徒が紙の上に整理しながら解いて行く姿を想定していない解説なんて《自粛》です! 更に加えて「解ける」と「得点できる」も違います。 解ける力があってもケアレスミスをしたら、そしてミスを見つけられなかったら・・・結果は解けなかったのと同じです!
私も式の変形を全面的に否定しているわけではありません。 必要な部分だけを内容を絞って教えます。 それを使って解かせた方が楽な問題、たとえば<比例式>や<倍数変化算>などがありますし、問題集の解説にも登場して来る場合がありますので。
四谷大塚のように実質的には方程式で解くというのも否定はしませんが、その場合には指導する先生には途中式の書き方をしっかり指導して欲しいです。
特に項のたての位置をそろえて書くということをしっかり習得させて欲しいですけれど、そこまで注意して途中式を書いて行かせるなら、
いっそ、表を書かせた方が早くないでしょうか?