<仕事算>の解説は多くの参考書で仕事の量を「1」として説明しています。 なんで? どうしてそんな無駄なことをさせるのかな? 例題は、成城学園 2008年(平成20年)第1回試験の大問3 です。
【問題】
ある仕事をA君が1人ですると 36日、B君が1人ですると 45日かかります。 このとき、次の問いに答えなさい。 (式または考え方を書きなさい)
(1) この仕事をA君とB君の2人ですると何日かかるか求めなさい。
(2) さらにC君が加わり A君、B君、Cさんの3人でこの仕事をすると、12日かかりました。 このとき、この仕事をCさんが1人ですると何日かかるか求めなさい。
【解説】
声の教育社の解説は定石通り次のように始まります。
仕事全体の量を1とすると、A君、B君が1日にする仕事の量はそれぞれ、 1 ÷ 36 =(以下、それぞれの仕事の速さを分数で表した計算が続きますが、省略します)
私の教え子は問題を読みながらこう考えます。
「36は9×4、45は9×5、4×5は20、20×9で、仕事の量は180にしよう。」
この問題で仕事全体の量は何でも良いわけで、ここではたまたま最小公倍数になりましたが、私は「迷うようなら 360とか 600にして計算して良いですよ。」と言っています。
(1)
仕事の量を 180 とすれば、
Aの速さは 180 ÷ 36 = 5
Bの速さは 180 ÷ 45 = 4
AとBの二人分の速さは 5 + 4 = 9
よって、 180 ÷ 9 = 20(日)
(2)
こちらは解き方を2つ書きます。
ひとつは仕事の量 180 を使ってCさんひとりの速さを求めて割り算をする方法です。
A、B、C 3人の速さは 180 ÷ 12 =15
Cさんひとりの速さは 15 - ( 5 + 4 ) = 6
よって、 180 ÷ 6 = 30(日)
もうひとつは速さと時間が反比例になることを使って、仕事の量を使わない、解き方です。
AひとりとA、B、C 3人の時間は、36日と12日。 比の値にすると、3:1 。
仕事量が一定の場合に速さと時間は反比例だから、表の上で比の値をたすき掛けにして ①:③
よって、A、B、C 3人の速さは 5 ÷ ① × ③ = 15
Cさんひとりの速さは 15 - ( 5 + 4 ) = 6
A君とCさんの速さと時間の表を作って、
速さの比 5:6 を表の上でたすき掛けで逆比にして ⑥:⑤
よってCさん一人での時間は 36(日) ÷ ⑥ × ⑤ = 30(日)
説明を文章にするとちょっと長くなりますけれど、図を見ていただくと分かるように<テントウ虫>と<しはじ表>を使ってやっていることは単純で明解です。 書式を覚えてそこに数字を埋めて行けば、表のたて横の位置関係そのものが解法の手順を教えてくれます。
中学受験の算数において比を使った解法は、得点力向上に非常に大きな役割をはたします。 四谷大塚は小5の下巻冒頭、サピックスやグノーブルは小5の夏期講習で比の導入があり、以降の学習の基礎となるたいせつな回です。
(栄光ゼミの新演習は2018年7月中旬に大きな改訂がかかります。 旧版では下巻の途中から比の導入が始まり、比を使う単元はとびとびに配置されていました。 どのように変わるか、ちょっと楽しみです。)
比の導入は大きく「抽象度」の上がるタイミングです。 詳しい話は改めて書きますが、具体的なアクションとして小5のお子様をお持ちの方は今のうちに分数の取り扱い(約分、通分、加減乗除の特に除算の処理)を徹底的に見直しておくことをお勧めします。 難しいことは言いません。 分数の計算を素早く正確に出来るようになっていれば、とりあえず大丈夫です。