中学入試の理科で、生物分野、特に植物に関してどこまで覚えなければいけないかというのは難しい問題です。 「種子とは何か?」に関しておもしろい問題があったので、紹介します。
取り上げた入試問題は、鷗友学園女子中学校の2018年(平成30年)第2回の、大問1冒頭部分です。
【問題】
1.種子の発芽について、次の各問いに答えなさい。
被子植物は花が咲いた後、めしべの( A )がふくらみ果実になります。 ( A )の中には( B )があり、果実が熟すと( B )は種子になります。
問1 文中の( A )、( B )に当てはまる語句を答えなさい。
問2 次のア~カの写真は色々な植物の果実や種子を示したものです。 種子のみを示している写真をすべて選び、記号で答えなさい。
このあと、しっかりした知識を「なぜ?」という視点で学んでいれば解答できる、種子の発芽実験に関する記述式の問題が続きますが、長くなるので略します。 (発芽に関する良問なので、略すのは惜しいのですが。)
という訳で、
【解説】
問1 学校の発表している公式解答です。
(括弧の中は、漢字で書いた場合です。)
A 子ぼう ( 子房 )
B はいしゅ ( 胚珠 )
問2 これは問1が重要な誘導になっていますね。 種子とは胚珠が変化したものである、ということを問1で明確にしてくれていますので、受験生は次の用語を正しく理解しているか問われるわけです。
「胚珠」「種子」「胚」そして一般に言われる「種子(たね)」
・胚珠とは、成熟後に種子になるつくり
・種子とは、無胚乳種子なら胚+種皮、有胚乳種子ならそれに胚乳を加えたもの
・胚とは、発芽した時に体を作る、子葉(+幼芽)+胚軸+幼根
「種子のみを示している写真」を選ぶという今回の問題で ウ.オクラ と エ.キュウリ は、すぐに除外できたと思います。 まだ成熟していないとは言え、種子が中に見えていますから。
また、イ.ラッカセイ も中に入っている茶色の皮に包まれた一粒一粒が種子で、写真に見えているのは種子が複数入ったカラだというのも判るはず。 ちなみに、ラッカセイの花が咲いた後、地中に向かって伸びるつくりを子房柄(しぼうへい)というそうです。
ア.カボチャ と カ.アサガオ は簡単。 種子ですね。
さて、問題の オ.ヒマワリ です。
記事のタイトルでネタバレしていますが、写真で見えているのは理科で言う「種子」ではありません。 ヒマワリのタネの固い殻は種皮ではなく「乾果」と呼ばれる、もとの花の子房が変化したものだそうです。
という訳で、問2の正解は ア、カ
今回登場したオクラやキュウリに関連して質問です。
ピーマンは、植物のつくりの名称でいえば、どこを食べているのでしょう?
植物に関する入試問題では、「食卓にのぼる野菜は、それぞれ植物のどのつくりを食べているでしょう?」という問題が色々な形で出題されていますので、いずれ改めてご紹介します。