新型コロナウィルスの関連で名前が知られた測定器に、パルス・オキシ・メーターというものが有ります。 入試問題を見ていたら、これが登場する理科の出題がありました。
芝浦工業大学柏中学 2015年(平成27年)第一回入試から大問1の(7)です。
【問題】
血液の中の赤血球には,酸索と結合して全身に運ぶはたらきをするヘモグロビンという物質がふくまれています。
ヘモグロビンは酸索と結びつくと,より明るい赤色のオキシヘモグロビンになります。
図は, この色の変化を測ることで, 血液中の酸索の量を測定する器具です。
いま,図1の④(=大動脈)を流れる血液では全ヘモグロビンのうちの95%が, ③(=大静脈)を流れる血液では40%がオキシヘモグロビンになっていました。
すべてのヘモグロビンが酸索と結びつくと, 血液100立方センチメートルあたり20立方センチメートルの酸索をふくむことができます。
100立方センチメートルの血液が④(=大動脈)から③(=大静脈)まで流れる間に細胞にわたされた酸索は何立方センチメートルですか。
整数で答えなさい。
注1)設問の(1)から(6)は循環器に関する知識問題でしたので省略しました。
注2)(8)はa)b)c)の枝番がついて服用薬の血中濃度グラフの解釈に関する高度な設問で「理科が得意な人はこれで丸を一つか二つ稼ぎなさい」問題でしたので省略します。
注3)図1中の記号などについては実態名をかっこ書きしました。
注4)単位は記号から「立方センチメートル」に書き直しました。
【解説】
初めて見る知識を問題文から読み取り、与えられた条件で計算をするという設問です。
しっかり読み取れれば、計算そのものは単純です。
20 × ( 0.95 - 0.40 )÷ 100 × 100 = 11立方センチメートル
入試問題とその解説は、ここまで。
以下、関連した情報です。
【パルスオキシメーター】
皮膚を通して動脈血酸素飽和度(SpO2)と脈拍数を測定するための装置です。赤い光の出る装置(プローブ)を指にはさむことで測定します。
【武漢肺炎と酸素濃度】
これまでにサイレント肺炎という症状が多くの人(主に高齢者)の命を奪いました。
本人が気付かないうちに静かに肺炎が進行し、ある日突然に血中酸素濃度の低下が限界を超えて意識を失うという恐ろしい症状です。
それを事前に発見できるというので市中から商品の姿が消え、必要とする医院が購入できなくて困っているというニュースが有りました。
急激な酸素濃度の低下は明確な自覚症状が出ます。 そのままでは死んでしまいますから。
危険なのは今回のようにゆっくりと濃度が低下して行く場合で、いわば「鍋の中の茹でがえる」のたとえ話のように本人に自覚が出にくい状況です。
【低酸素濃度と睡眠時無呼吸症候群】
血中酸素濃度の低下は私自身がさんざんくらっています。ジワジワと低下するのではなく、突然、急激に低下するというもので、夜中に溺れる夢を見て飛び起きることが以前は何度も有りました。
睡眠時無呼吸症候群ってやつです。
今は鼻にマスクを付けて数mmAqの陽圧をかけて寝ることで解決しています。 CPAPと呼ばれる機械を受け取ってうっとおしいなぁと思いながら寝て、その翌朝「くそぉ、世の中の健康な人達はこんなに快適な朝を迎えていたのか」と驚いたことを鮮明に覚えています。
【パルスオキシメーター】
この睡眠時無呼吸症候群の簡易検査にパルスオキシメーターが使われます。 睡眠中に呼吸が止まると血液中の酸素濃度が低下しますので、この測定器を付けて寝り、記録された濃度の推移をチェックするわけです。
そのため、検査を実施していた診療所には既にこの機器が有る訳ですが、今回の事態を受けてサイレント肺炎の確認をする目的で新たに導入したい、あるいは台数を増強したいという診療所で、購入手配に市中在庫の不足が影響してしまっています。
【個人での購入は控えよう】
今回の肺炎によるゆっくりした変化を発見するために、個人で買って家庭に配備すべきでしょうか。 普及品なら数千円で買えますから無理な値段でも無いです。
しかし私は個人での購入は控えるべきだと考えます。 少なくとも当面は。
買ったとして何を測ります?何を知るために毎日2回も3回も測定します?
今はマスコミのセンセーショナルな報道で強烈な不安に覆われていますので、血中酸素濃度が正常値にあるのを見て「ふぅ」と安堵するかもしれませんが、あっという間に使わなくなるのは確実です。 膨大な数が死蔵されているであろう空間線量計のように。
この測定器は感染の有無は判別できず、あくまで派生症状を調べるために使えるだけですから、ご家族に呼吸器疾患を持つ高齢者が居られるのでなければ、現時点での個人での購入は控えるべきだと考えます。
2020-07-11追記:
東京で連日200人の新規感染者が見つかる状況は続いていますが、物流や機材の在庫状況に関しては少し落ち着いて来ましたのでパルスオキシメーターのリンクを追加しておきます。