2020年(令和2年)の立教新座中学では理科の大問2にポケモンを素材とした生物の問題が出ました。 「進化」と「変態」に関するとても良い設問です。
立教新座の入試に関して私が感じているのは「くじけない心を求めている」という学校からのメッセージです。 多くの設問に何かしらの「ひねり」が入っています。 問題を読んだ瞬間には「わぁ、難しい」と感じても、あきらめずに考えれば解ける、そういう問題のつくりです。
頑張って来た自分を信じて「必ず解けるはずだ」と考えるのは、裏返してみれば「解けない問題を出すはずが無い」と、学校を信じることかも知れません。
とは言え、今回のポケモンを素材にした出題には二段階で「ひねり」が入っていました。
ひねりの1:
ポケモンの進化に関してはバタフリーとモルフォンの進化が逆じゃないか?という都市伝説が有りますが、今回の出題にはいっさい取り込んでいません。 それを扱うとポケモンのマニアが有利になってしまいますから。
ただし、父親と息子の会話のかたちでポケモンで言う進化は生物学的な進化とは違うという話題からはじまって、後半の5分の2はDNAのATGC配列の話題です。 ここで「なにこれ?全然わからない」と泣き顔になった受験生が少なくなかったはず。
ひねりの2:
枝番の(1)、冒頭の設問でかましています。 ウツドン→ウツボットのモデルであるウツボカズラに関して昆虫を捕らえる仕組みを問う4択です。
ポケモンの話題で驚いて、DNA配列の話で眼を白黒、枝番の(1)で食虫植物のマニアックな選択問題・・・ 心が折れます。
二段階の「ひねり」を乗り越えて、どうやって6割、7割の正解を稼ぐか解説します。 本文を全て引用すると長くなりすぎるので、設問ごとに必要な部分だけを引用しました。
(1) 下線部aについて、ウツボカズラの特徴として適切なものを、次の(ア)~(エ)から選び、記号で答えなさい。
(ア) つぼ状の構造に昆虫が落ちると、底から登れなくなり、外に出られなくなる。
(イ) つぼ状の構造にに昆虫が落ちると、すぐにふたがしまり、外に出られなくなる。
(ウ) つぼ状の構造の入り口に粘り気のある毛があり、それに昆虫がくっつくと動けなくなる。
(エ) つぼ状の構造の底にはとげがたくさんあり、昆虫はとげに刺さると意識を失ってしまう。
【関連した本文】
健児 ウツボット知っているの?
父 たぶん存在する食虫植物の ウツボカズラを参考にしているんだ。 形がよく似ているぞ。
【解説】
この設問は正解しなくても良いです。 受験生に対する「ひねりの2」ですから。
とは言え、解説します。
(ウ)はモウセンゴケですから除外。
(エ)は生物が得意な生徒にはすぐに除外して欲しいです。 昆虫は外骨格ですから容易にはとげが刺さりません。
で、残るのは(ア)と(イ)ですが、イラストがトラップになっています。 ウツドンは単純に口を開いていますがウツボットには明確な「ふた」が描かれていますのでいかにもふたを閉じて昆虫を捕らえそうに見えます。 しかし、昆虫を捕らえる時にすばやい動きを見せる食虫植物はハエトリソウです。
と言う訳で正解は (ア)
(2) 会話文中の①、②に入る適切な語句を、それぞれ漢字2文字で答えなさい。
【関連した本文】
(途中省略:父が進化について説明し、フシギバナは開花であると説明します)
健児 じゃあ、キャタピラーがトランセル、バタフリーに変わるのは?
父 それは( ① )だろ。 bモンシロチョウなどの昆虫で見られる変化だよ。
父 それは( ② )だろ。cセミの幼虫の背中が割れて、成虫が出て来ただけだ。
【解説】
ポケモンだけでなく、きちんと昆虫での事例を説明しています。 正解しなければならない設問です。
① : 変態
② : 羽化
(3) 下線部bについて、モンシロチョウと同じような①が起こる昆虫を、次の(ア)~(オ)からすべて選び、記号で答えなさい。
(ア) ツクツクボウシ
(イ) ミツバチ
(ウ) トノサマバッタ
(エ) オニヤンンマ
(オ) カブトムシ
【関連した本文】
設問(2)の引用部分です。
【解説】
昆虫の不完全変態に関する基礎知識ですから、これも正解しなければならない設問です。
選択肢の中で完全変態する(=さなぎになる)のは (イ) ミツバチ と (オ) カブトムシ
(4) 下線部cについて、セミの特徴として適切なものを、次の(ア)~(エ)から選び、記号で答えなさい。
(ア) オスメスの違いは成虫ではわからない。
(イ) 泣き声は胸からだしている
(ウ) 幼虫のころは根から樹液を吸っている
(エ) はねは2枚しかない
【関連した本文】
設問(2)の引用部分です。
【解説】
(ア)・・・メスには産卵管があります。
(イ)・・・腹です。
(エ)・・・4枚です。
と言う訳で、正解は (ウ) 根から樹液を吸っている でした。
ちなみに成虫はおもに師管から吸い、幼虫はおもに道管から吸うという文献がありました。
理由も含めて興味深い知識でした。 そのうち慶應か中央大横浜あたりで出題されるかも?
長くなってしまったので、最後の設問2つ、DNAに関する問題は省略します。
リクエストが有れば解説を書きますが(5)は問題文の解説を読み取れれば容易に正解を出せる計算問題で、(6)は遺伝子に関するちょっと深い「知識が有るなら、あと1問取らせてあげるよ」問題でした。
まとめると(2)、(3)、(4)は受験生なら正解しなければならない基本的知識で、(5)は説明を読み取れれば正解できる計算問題ですから、これらだけで6問中4問の得点が取れたはずです。