2020年の立教新座の地球の大きさを計算させる問題の解説です。
問題は、こちら。
以下、解説です。
検索した限りでは、まだどこの塾も解答速報を出していませんが、それらが出た時点で答え合わせをしてもしも間違いが有ったら追記の形で訂正します。
【問題】
(1) 文章中の①~④に入る適切な数値を、それぞれ答えなさい。
【解説】
①~④に入る数字
①距離 48.2 - 39.2 = 9.0 (Km)
②角度 139.84 - 139.74 = 0.10 (度)
③円周 9.0 (Km) ÷ 0.10 (度) × 360 (度) = 32400 (Km)
④半径 32400 (Km) ÷ 3.14 ÷ 2 = 5159.23・・・ よって 5200 (Km)
【問題】
(2) 下線部が示す作図(円Aの半径)を、解答用紙の図に描きなさい。
【解説】
エラトステネスの例では南北に並んだ都市を使って緯度から円周の長さを求めていました。 今回の立教新座の問題は経度を使っています。 経度(東西方向)を使った場合に何も考えずに360度に相当する距離に換算して良いのは 「2つの都市が赤道上にあるとき」 だけです。
まぁ理科の先生なら間違える人は居ないと思いますが、今回のように北緯 35.87度に並んだ2つの都市を使った場合、単純に求めてしまうと赤道での半径よりもだいぶ小さくなります。 立教新座さんは受験生にそれを気付かせるために図2の「鉢巻を締めた地球の絵」を見せ、さらに加えてこの(2)で作図をさせて気づかせている訳です。
角度を示す斜めの線を書き込むかどうかは迷いました。
図3のように分度器を置き、円Aの半径がわかるように両矢印(←─→)を用いて作図
求められているのは下線部の記述をどうやって図の上に示すかなのですが、35.87度という角度を判っていますよという表現として斜めの線を入れました。 まだ各塾の正答は発表されていませんが、ここをどう扱うのか興味深いです。 問題文に「作図に使用した線は消さずに残しなさい」という指示が有ったら明確なのですが、さて?
【問題】
(3) 円Aと赤道の半径の比
【解説】
作図した図3を測ってみると、円Aの半径 : 赤道半径 = 1 : 1.2 となります。 勘違いで比の左右が逆にならないよう、注意が必要です。 比の左右でどちらが大きいか考えてみるのが見直しのコツです。
よって選択肢は (ウ) 1.2
【問題】
(4) 赤道半径の算出
【解説】
計算そのものは単純ですが、「①~⑤の数値を使うこと」という指定に注意が必要です。
5200 (Km) × 1.2 ÷ 1.0 = 6240
よって十の位を四捨五入して 6200 (Km)
ちなみに最後の(4)で得られた答えは受験生が暗記している数値とはだいぶ異なる値ですが、これはわざとだと思います。
説明された手順で計算するという指示を無視して、単純に覚えていた直径を2で割って解答を書いた場合には不正解になるようにしているのだと思います。
参考:地球・月・太陽の寸法や距離に関する楽な暗記方法
前回ご紹介したポケモンを題材にした生物の問題や、今回の地球の寸法を北緯35度の地点で考えさせる問題など、立教新座の理科は基本知識で解くことは出来るけれど「ひねり」が入っているという構成です。 入試問題で難度を上げる手段として「重箱の隅をつつくような知識問題」を加えるという安易な方法を取らず、深く考えられた「ひねり」を入れてあるこの学校の入試問題、私は好きです。
ちなみに、2020年度の他の2問もかなりの「ひねり」が加えられた出題でした。
大問3:金属と水溶液の反応を題材にした化学分野の出題ですが、3層構造の金属球にすることで整理する力を要求しています。
大問4:導入部分は通常の「ふりこ」の問題、2ページ目でスクリーンに写る影を考えさせて直線状の往復運動に変換させ、3ページ目では回転ターンテーブル上の小球の影がスクリーンに写っているという運動を考えさせています。 入学後に学ぶ「振動」につながる出題でした。
このような出題構成ですから、2月入試の一週間前の受験校としては偏差値以上に「手ごわい」相手です。 心してのぞまないと返り討ちにあいます。
受験生に求められているのは
『頑張って来た自分を信じて、あきらめず粘り強く正解への道筋を探す姿勢』
そんな感想を持った入試問題でした。