駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

ニュートン算:旅人算系の解法

ニュートン算に関する連投の3日目です。 今日は<ふたりの距離のグラフ>、<ダイヤグラムで図形の相似を使う>、<流水算>を使って解いてみた結果です。 一昨日書いた<旅人算・追いつき>への置き換えや、昨日書いた<じはし・みはじ表>の基礎になる話ですが、理解できなくてもそれらの解法は使えますので今日の話は流し読みで大丈夫です。 

 

今日も同じ例題を使います。 世田谷学園の2006年(平成18年)の大問6番(1)です。 

【問題】

一定の割合で水が流れこんでいる水そうがあります。 この水そうに水がいっぱいに入っているとき、 7台のポンプで水をくみ出すと30分で、 10台のポンプで水をくみ出すと12分で水がなくなります。 ポンプはすべて同じ割合で水をくみ出します。 これについて、次の問いに答えなさい。

(1) 満水の水を 13台のポンプでくみ出すとき、水そうの水は何分でなくなりますか。 

 

【解説】 <ふたりの距離のグラフ>

ダイヤグラムを使った問題の正答率をどんっと下げようと出題者が考えたとき、縦軸を「ある場所からの距離」から「ふたりの距離」に変えるだけで難易度が上がります。 (参照: 2018年6月25日 「ふたりの距離のグラフ」 )

旅人算を解くコツのひとつとして「一定の物が無いかさがす」というものがあります。 ニュートン算を単純に旅人算に置き換えた段階では「距離」、「時間」、「速さ」のどれも一定ではありません。 ところがふたりの距離のグラフにすると、「距離」が一定、すなわち「速さ」と「時間」が反比例という問題に変身します。 

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 上の図の上半分が<ふたりの距離のグラフ>で解いた事例です。

 

ポンプ10台のときとポンプ7台の時間が 12分と30分ですから、はやさの比は 5:2 です。 

<速さの線分図>を書いてポンプの台数と見掛けの速さの<クチビル>を作ると、

ポンプの台数と見掛けの速さの比は 1:1 となり、水の流れ込む速さは⑤とわかります。

するとポンプが13台の場合の見掛けの速さが 13 - 5 = 8 になりますから、

その8とポンプ10台のときの5を逆比にして10台のときの時間である12分に対する比例計算をすることで解答が求められます。 

 12(分) ÷ ⑧ × ⑤ =  7.5(分)  

この解法も、<じはし・みはし図>と同様に、はじめに有った水量を使わずに解いています。

 

 

【解説】 <ダイヤグラムで相似を使う>

 さきほどの図の上半分が<ふたりの距離のグラフ>で解いた事例です。

 

 算数が得意な子はダイヤグラムを書いたら図形問題として解けないか考えてみます。 相似を見つけられれば比の値にして計算することで楽に解くことができますので。 

実際に解くときには分かった数字をどんどん書き込み、知りたい場所を目立たせ、補助線を引くなどして図面はグチャグチャに近くなるのですが、この例題の解説では試行錯誤部分を省いて解答までの一本道で流れを書きました。 

 (参照: 2018年6月9日 「平面図形:角度を聞かれたら長さを調べろ」 )

 

まず流れ込む水量の線とポンプ10台の線から ABFのピラミッド形の相似はすぐに見つかると思います。 ここからはじめの水量の【60】を求められます。 

 【10】 × 12(分) = 【120】 ・・・CEの長さ

 【7】 × 12(分) = 【94】 ・・・DEの長さ

 よって 【120】 - 【94】 = 【36】 ・・・CDの長さ

 ABFのピラミッド形は 12分 と 30分 という時間から相似比が 3:5 

 よって 【36】 ÷ 3 × 5 = 【60】 ・・・ABの長さ、つまりはじめの水量

 

次にポンプ13台のときの時間を求めるための相似形を作ります。 グラフ問題の基本は「数字のあるポイントを探す」ですから、ポンプ13台の線を12分まで延長します。 するとGEの長さは

 【13】 × 12(分) = 【156】 ・・・GEの長さ

 よって 【156】 - 【120】 = 【36】 ・・・CGの長さ

 これでクロス形の相似が作れました。 相似比は 【60】 : 【36】 = 5:3

 この比を使って BEの12分を比例配分して

 12(分) ÷ ( 5 + 3 ) × 5 =  7.5(分)  

 

【解説】 <流水算>

次のような置き換えをすることにより、<流水算>に読み替えることができます。

はじめの水量は、A市とB市の間の距離

流れ込む水量は、川の流れる速さ

ポンプの台数は、船の静水での速さ

【問題】

一定の速さで流れている川があります。 A市から上流のB市に船でさかのぼるとき、静水での速さとして時速7Kmで進むと30分で、時速10Kmで進むと12分でB市に到着します。

この船が静水での速さ13Kmで進むと、B市には何分で到着しますか。 

 

くどくなるので解き方は省略しますが、基本的な解法の流れとしては「岸から見た船の速さ」と「所要時間」が反比例の関係になることを利用して、速さの差を調べるという方法で解答を求めます。 

「岸から見た船の速さ」というのは「見掛けの速さ」そのものですよね。 

<じはし・みはじ表>が分かりにくい場合、この流水算で解く流れを考えてみるとヒントになるかも知れません。 

 

三日連続で書いて来たニュートン算の攻略法はこれで一段落です。 

「自分が知っている解法との類似を探して解く」という手法は、受検算数の根底に流れている和算や、方程式が主流になる前の数学の世界で広く使われていた考え方です。 

単純だけど抽象度が高くて直感的に把握しづらい方程式の世界より、私は好きです。 

 

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