2019年1月12日:追記:ニュートン算の解き方については新しい原稿を書きましたので、そちらをご覧下さい。 『ニュートン算:確定版の解法』
比の取り扱いをマスターした上級者向けの解法です。 とりあげる例題は昨日と同じ世田谷学園のニュートン算ですが、今日の解法を身に付けた生徒は問題文を読みながら表を書き、読み終わるタイミング(おそらく2分以内)で正解を出してしまいます。
例題を再掲載します。 世田谷学園の2006年(平成18年)の大問6番(1)です。
【問題】
一定の割合で水が流れこんでいる水そうがあります。 この水そうに水がいっぱいに入っているとき、 7台のポンプで水をくみ出すと30分で、 10台のポンプで水をくみ出すと12分で水がなくなります。 ポンプはすべて同じ割合で水をくみ出します。 これについて、次の問いに答えなさい。
(1) 満水の水を 13台のポンプでくみ出すとき、水そうの水は何分でなくなりますか。
【解説】
仕事算の<しはじ表>に1行追加した<じはし・みはじ表>という解法を使います。
じは:実際の早さ。問題文に書かれた汲み出される水量と流れ込むする水量の差を式で書く。
し :仕事の量。はじめに入っていた水量。
みは:見掛けの速さ。汲み出す量と流れ込む量の差で求められる「見掛けの」速さ。
じ :時間。空になるまでの時間。
計算の流れをわかりやすくするために、手順を分けて書きました。 ( 実際に解く場合は最後の手順3の表を一気に書きながら解きます。 )
【手順1】
問題文を読みながら<じはし・みはじ表>を作ります。
じは(実際の速さ)の行には 7台-増 と 10台-増 です。 (増というのは流れ込む速さ)
じ(時間)の行には 30分 と 12分
ゆっくりやっても、問題を読みながら表を準備するのに45秒以上かかることは無いでしょう。
【手順2】
(時間)と(見掛けの速さ)は反比例の関係になりますから、<タスキ掛け>をして「みは(見掛けの速さ)」を求めます。 (30分) : (12分) の逆比の 【2】 : 【5】 です。 これに(時間)を掛け算して(仕事の量)つまり初めに入っていた水の量として【60】という値を得ます。
解き始めてからここまでの合計で1分かからないはずです。
【手順3】
じは(実際の速さ)の差はポンプ台数の差ですから 3台です。
みは(見掛けの速さ)の差は 【5】 - 【2】 = 【3】 です。
今回の例題では、たまたま両者の値が同じになりました。
設問で求めているのはポンプが13台の場合ですから、ポンプ台数の差は 3台、よって(見掛けの速さの差)も 【3】 になります。 よって、(仕事) を (見掛けの速さ) で割って、はい解答です。
【60】 ÷ ( 【5】 + 【3】 ) = 7.5(分)
じは(実際の速さ)の差と、みは(見掛けの速さ)の差の関係が1対1ではなくて比例計算が必要な場合でも、この手順3に1分以上かかることは無いと思います。 ということは、全体で2分も掛からずに、おそらく早い生徒なら1分少々で正解を出してしまうということです。
ニュートン算については普通の解法で解けるならそれで良いと思います。
もしも使いこなせるようなら<じはし・みはし表>を試して欲しいです。 もう気付かれた方も居ると思いますが、この解き方でははじめの水の量を途中の計算に使っていません。 計算の手順をひとつ省けるわけで、時間も短縮できるしミスの混じる危険性もひとつ減らせます。
苦手な生徒には<食いしん坊の弟と怒りん坊の兄>を試してみてください。 参考書ではニュートン算の導入として<旅人算・追いつき>を解かせるものも多いですし、ニュートン算は本質的には追いつきの旅人算です。 問題文を読み替えるだけで解けるようになるなら儲け物ですよね。
書きました:ニュートン算:確定版の解法・たとえ話編 - 駒澤塾:中学受験の算数・理科
ニュートン算が旅人算と近いということに関連して、明日もう一本記事を書きます。
・ ふたりの距離のグラフで解く
・ ダイヤグラムで図形の相似を使う
・ 流水算として解く
という3つの解法でニュートン算を解きます。
書きました:ニュートン算:旅人算系の解法 - 駒澤塾:中学受験の算数・理科