滑車の問題は、シンプルな手順で解けるようになります。 覚えるポイントは3つだけです。
1:黒点を打ち張力の値を書き込む
2:どんな滑車でも左右の張力は同じ
3:上下の力の合計は絶対に同じ
滑車の解説では、しばしば次のような説明を見ます。
「糸の脇に力の大きさと向きを書き込みましょう。」
これ、やってはいけません。
この書き込みをすると、解けなくなります。
私が滑車の解き方を教える時には、次の3点を即答レベルになるまで覚えさせます。
1:黒点を打ち張力の値を書き込む
2:どんな滑車でも左右の張力は同じ
3:上下の力の合計は絶対に同じ
ただし、「張力」という用語は指導要綱の範囲外でテキストにも出て来ませんから、「張力というのは、糸を引きちぎろうとする力」と何度も口にして覚えさせます。
1:黒点を打ち張力の値を書き込む
図の中の、あらゆる糸に黒点を書かせ、そこでの張力の値を順に考えさせます。
この時に力の向きを矢印で書かせてはいけません。
向きの有るベクトル量ではなく、スカラー量として把握させることで、
「おもりを上向きに引き上げる力 = ばねを下向きに引き下げる力」
という事を直感的に認識させるのが目的です。
中学高校で「作用・反作用の法則」として習う事ですが、小学生にとっては初めての知識であることを忘れてはいけません。
2:どんな滑車でも左右の張力は同じ
滑車に関して、次のような説明を丸暗記しているだけの生徒が多いです。
・定滑車は力の向きが逆になり、力の大きさは同じ。
・動滑車は力の向きは同じで、力の大きさが半分になる。
導入授業ではこのような説明も必要ですが、丸暗記のままで次へ進むと複雑な組み合わせ滑車の問題で急に解けなくなります。
もっとシンプルに覚えた方が応用が利きます。
「滑車の左右両側の糸には、定滑車だろうと動滑車だろうと、かならず同じ張力がかかる! もし1グラムでもどちらかの力が強かったらどうなる? 糸はカラカラと抜け落ちてしまうよね。」
3:上下の力の合計は絶対に同じ
この三番目のポイントは、「重さの有る滑車」の問題を演習するタイミングで伝えます。
「ひとつの物体、あるいはいくつかの物体の集まったかたまりを考えると、下向きの力と上向きの力の合計はかならず同じ! もし1グラムでもどちらかの力が強かったらどうなる? 下向きの力が大きかったら落ちるし、上向きの力が大きかったら宇宙まで飛んで行ってしまうよね。」
「黒点打って張力の値」について、滑車の問題を考える前にばねの問題で例を示します。
・30gのおもりの、すぐ上の糸の張力は? →30g
・滑車の左右の張力は絶対に同じだから →30g
・ばねの左右の張力も絶対に同じだよね →30g
だから、このばねは30gのおもりをぶら下げた時の長さと同じになるんだ。
この両側に滑車の有るばねの問題は、パターンとして覚えて正解できる生徒も多いです。
ところが、「太郎君と次郎君がばねの左右を持って、それぞれが30gの力で引っ張ると・・・」の形式になると急に正答率が落ちます。
その場合でも、黒点を打って張力を書き込ませると「あっ!」と言って納得します。
今回のポイントを使って実際の入試問題を解く例は、明日の記事で書きます。
2022-01-28追記:書きました。