浮力の問題が苦手という生徒への対応方法です。 そういう子に「密度」とは何かという質問をすると、相当数の子が即答できません。 はじめに「密度とは何か」をしっかり確認しておくと浮力への苦手感が無くなる場合が多いです。
浮力の大きさは、次の式で習うのが普通だと思います。
浮力の大きさ[g] = 押しのけた液体の体積[㎤] × 液体の密度[g/㎤]
簡単な式のはずなのですが、なかなか定着しない生徒が居ます。
冒頭のやりとりから、初めての概念である「密度」ではないかと推測されます。
ならば、密度を使わない浮力の計算から教えてみたらどうなるか?
ためしに、次のような教え方を導入授業でしてみました。
・おもりを水槽の水に沈めると水面が上昇する。
・持ち上げられた水は元に戻ろうとする。
・水が下へ移動しようとする力は、おもりを上に押し戻そうとする力と同じ。
・だから、おもりにはたらく浮力は上昇した水(液体)の重さと同じ。
密度を使わない浮力の計算 = 押しのけた液体の重さ
まず、このことを定着させた後に液体の密度の概念を導入してみました。
教えていて気が付いたのは「液体によって密度に差が有る」という部分でキョトンとする生徒が居ること。
考えてみれば、「液体によって密度に差が有る」というのは多くの生徒にとって実感の無い初めての概念です。
そこで、液体の密度について実感を持たせるために、こんな話をしています。
中東にある塩分濃度の異常に濃い塩水の湖。
湖面の海抜はマイナス430m。
海水の10倍くらいの濃さが有る。
そのため、同じ1立方センチでも重い。
この数値が密度です。
同じ体積でも重いから、発生する浮力は大きい。
この湖は泳がなくても水面に浮いていられる。
逆に密度が小さい方の例。
川の上流、流れの激しい急流では細かい泡が水を白く濁らせる。
これをホワイトウォーターという。
泡、つまり空気が混じっているから、この水は見かけの密度が小さい。
密度が小さいから発生する浮力も小さい。
もし白く濁っている谷川があったら、そこでは絶対に泳いでは駄目です。
どんなにあがいても水面に顔を出せず、おぼれて死にます。
こういう谷川で川下りをするカヌー乗りの人は、特別に大きなライフジャケットを着ます。
浮力で「わからない」が出たら、密度の理解を見直してみることをお勧めします。