駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

陽樹と陰樹、参考書の比較

陽樹と陰樹に対して、中学受験の参考書でどんな扱いをしているか調べてみました。 調べてみたのは四科のまとめ、マスターテキスト知識編、論述でおぼえる最強の理科、コアプラスの4冊です。 それぞれの参考書の上手な使い方も提案します。

 

前回の記事では、中学入試での陽樹と陰樹の扱いを調べた結果を記事にしました。 

絶対必須の陽樹は「クヌギ」と「コナラ」のふたつです。 

絶対必須の陰樹は「シイ」と「カシ」のふたつです。

komazawajuku.hatenablog.com

 

今日は、受験参考書ごとの扱われ方を整理しました。 まずは、陽樹。 

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論述でおぼえる最強の理科

陽樹に関しては設問#56で、ミズナラが落葉樹として登場しているだけです。 

この本は、これで良いと私は考えます。 理由は後半の【陰樹】の項で書きます。 

 

四谷大塚:四科のまとめ 理科

直球ど真ん中、っていう感じです。 

ずばりと入試に出て来る代表的な樹木の名称を尋ね、この4種で必要な樹木は網羅しています。 

 

早稲田アカデミー:マスターテキスト知識編

「光の強さとデンプン生成量のグラフ」の中でケヤキが登場しています。(ちなみに陰樹としてはシイが登場しています) 

クヌギとコナラも「ドングリを作る樹木」という出題のトレンドに沿ったかたちで扱われています。(ちなみに陰樹はシイとカシで、これも良い選択) 

 

Sapix:コアプラス 理科

陽樹・陰樹という視点での設問は#587の「典型的な陽樹」だけで、答えは「マツ」と「シラカバ」です。 

前回の記事で絶対必須の陽樹とした「クヌギ」と「コナラ」は、設問#590で「雑木林の落葉広葉樹」として登場します。 

 

 

続いて、陰樹に関しての収録状況です。 

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論述でおぼえる最強の理科

陰樹に関しては、森林がやがて極相林になる理由を尋ねる#63の問題文の中で、シイとカシが陰樹の例として挙がっています。 

また、#56の設問ではヒノキが常緑樹として登場しています。 

 

この本は、もともと網羅性を要求されるテキストではなく、一問一答形式で知識を確認するための本ですので、これで良いと私は考えます。 

利用者が#56の解答ページに「陽樹:クヌギとコナラ」と書き加えたら完璧です。 

 

四谷大塚:四科のまとめ 理科

こちらも、直球ど真ん中、っていう感じ。 ずばりと陰樹4種を尋ねる質問で、入試に出て来る代表的な樹木の名称を網羅しています。 

前回の記事で書いたように、樹木の分類に関しては落葉樹と常緑樹を尋ねる出題が多く、陽樹と陰樹に対しては「光の強さとデンプン生成量のグラフ」との連携で出されており、数としては少ないです。 (出題例:2013年鷗友女子の大問4) 

 

四科のまとめで落葉樹と常緑樹に関しての設問が独立してあります。 

 設問#55「落葉樹?」 :クヌギ、コナラ、サクラ、イチョウ、ブナ

 設問#56「常緑樹?」 :カシ、ツバキ、ヒノキ、マツ、スギ

 

利用者が以下の事を書き加えたら完璧です。

 #55の解答欄には、「ブナだけ陰樹、あとは陽樹」

 #56の解答欄には、「マツだけ陽樹、あとは陰樹」

 

理科の暗記は、例外から覚えるのがコツですし、なぜ陰樹と陽樹の区分と落葉樹と常緑樹の区分が少数の例外を除いて重複しているのか、それを考えてみる契機になりますから。 

 

早稲田アカデミー:マスターテキスト知識編

前半の【陽樹】の項で書いたように、「光の強さとデンプン生成量のグラフ」の中でケヤキとシイを扱い、「ドングリを作る樹木」でクヌギとコナラ、シイとカシを扱っています。 さらに「ドングリを作る樹木」では、陽性落葉樹と陰性常緑樹という説明も付けられており、ふたつの区分の関連性に気付くヒントになっています。 

陰樹に関してはシイとカシを含めて「陰性の仲間6つ」という設問もあり、ブナ=白神山地、モミ=クリスマスツリー、スギ=縄文杉、クス、といったイメージで記憶するための付帯情報も書かれています。 

これ、私も提唱している「情報の冗長化(じょうちょうか)」に相当します。 

上手な暗記法:情報の冗長化 - 駒澤塾:中学受験の算数・理科

マスターテキスト知識編は「受験知識がてんこ盛りの八宝菜」です。 

よって、注意点は「この本を完全に覚えようとしては、いけない」です。 

ちなみに、市販されていないのに取り上げたのは気に入っている本だからです。 

このテキストを使いこなす方法の詳細は、もし要望が来れば書きます。 

 

Sapix:コアプラス 理科

良くも悪くも最上位生が授業での学習を仕上げたうえで、知識の再確認に使うテキストという感じを受けました。 

設問を番号順に見てみましょう。 

 #587「典型的な陽樹」 =マツ、シラカバ(クヌギ、コナラ以外の例として?)

 #588「日本古来の常緑広葉樹(照葉樹)」 =シイ、カシ(陰樹の頻出)

 #589「落葉広葉樹林(夏緑樹林)」 =ブナ、ミズナラ(陰樹では例外的な落葉樹)

 #590「雑木林の落葉広葉樹」 =クヌギ、コナラ(陽樹の頻出)

 #591「植林する経済林」 =スギ、ヒノキ(社会科とも連携)

こうやって出題意図も書き加えて並べてみると、みごとな配列です。 

みごとすぎて、陽樹・陰樹の樹木名を完璧に覚えていない生徒にとっては「ちょっとなに言ってんのかわかんない」単なる知識の羅列になる危険性も含んでいます。 

 

今回も感じたのは、(方針として非常に明確で私は大好きなのですが)Sapixのカリキュラムが最上位生のみを対象に構成されていることです。 

中堅クラスの生徒に対する利用上の注意点としては、指導する人がしっかり補ってやることだと考えます。 

陽樹と陰樹、落葉樹と常緑樹に対しても、「両者が重複する理由」や「例外の樹木名」を補足説明しながら本人に確認させ(られ)れば、とても良い学習の流れになっていると思います。  

 

 

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