駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

「水槽におもり」の解法整理:その1

水槽におもりを入れた時の水の深さに関する問題は、苦手な生徒の多い問題です。 と言うか、ウン10年前、私自身が中学受験の勉強をしている時に、苦手なジャンルのひとつでした。 今回はこれへの対策方法をまとめてみます。 

 

水そうにおもりを入れる問題は、アルキメデスの原理を使う解き方と、面積と深さの反比例を使う解き方が有ります。 

テキストの導入編では、おもりが完全に水の中に入ってしまう場合にはアルキメデス、棒状のおもりが水面の上に出ている時は反比例を使う方法で説明していることが多いです。 

苦手感を持つ生徒を見ていると、この二つの解き方のどちらを使えば良いのか混乱していることが有りました。 

 

四谷大塚の予習シリーズでは、水槽におもりを入れる問題を5年生・下巻・第14回で扱っていました。

予習シリーズは昨年(2021年度)の4年生から大幅なカリキュラム改訂がスタートしていますので、今年度(2022年度)の5年生のテキストは変わりますが、とりあえず手元にある旧版から取りまとめてみました。

 

テキストでは、まず「見かけ上増える水の体積は、水中にある物体の体積と等しい」ということを、このような図を使って説明しています。

f:id:komazawajuku:20220106001958j:plain

この[図1]と[図2]は、実は後で効いてくる重要な位置関係を含んでいるのですが、導入授業のしょっぱなで、それを見せる必要が有るのかな?

どうせ含まれている意味は伝わらないのだし、最初の一歩は「水の中に入れた物体の体積の分だけ、水面は上昇する」で良いのでは?

無駄に難しく書かれている気がします・・・

 

さて、例題として解き方が示されるのは、3個の必修例題と1個の応用例題です。 

【必修例題1】

f:id:komazawajuku:20220106002554j:plain

おもりが完全に水没する場合の解き方です。 

水が容器からあふれる場合が(2)として続きますが、そちらの図は省略。 

 

【必修例題2】

f:id:komazawajuku:20220106002845j:plain

今度は、おもりが水面上に顔を出す場合の解き方です。 

水の中に入ったおもりの体積から考えるということはせず、水面の面積が減ることによって水深が大きくなる、という解き方だけを見せます。 

生徒から見れば、完全に別の解き方として習うことになります。 

解説では、おもりが水没していないかの確認作業も続けて説明されており、このあたりでついて来れない生徒が続出します。 例題2の段階で、この判定を織り込む必要ある? 

 

【必修例題3】

f:id:komazawajuku:20220106003737j:plain

立てたおもりを横倒しにしたら水没した、という設定の例題です。 

★印の部分の体積が新たに水中に沈むので、斜線部分の水面上昇が起きるという説明です。 

寸法の設定から「たまたま」斜線部分が横倒しにした時のおもりの上面とぴったり一致しているのですが、これも生徒の理解を邪魔していると考えます。 なぜ、こんな寸法にしたのだろう? 

 

【応用例題1】の(1)

f:id:komazawajuku:20220106004833j:plain

面積の比と水面が上昇した高さだけが与えられて、水の深さを求める問題です。 

解き方ではいきなり、「見かけ上増えた水の体積(図の斜線部分)は、水中にある棒の体積(図の太線枠内)に等しくなります」と言い切っています。 

生徒からの質問がすごく多いポイントです。 

 

【応用例題1】の(2)

f:id:komazawajuku:20220106005316j:plain

底までついていたおもりを少し引き上げると、という問題です。 

ここに対する質問はほとんど出ません。 って言うか、(1)を乗り越えた生徒にとっては簡単すぎる課題に思えます。 

 

という訳で旧版の予習シリーズから引用しました。 

この単元の例題はとても扱いづらく、私は例題を無視して独自の流れで導入授業をして来ました。 例題の流れの中で難易度が入り乱れていることに加えて、アルキメデスの原理を使った解法と、水面の面積比を使った解法が断絶して説明されている事が困ります。 

 

今年リリースされる大幅改定版でどのように変わるのか、楽しみです。 

 

実際の入試問題を使って一つの問題を両方の解法で解いてみましたので、次の記事でその解説をします。 

 

 

 

 

このブログはリンクフリーです
リンク(はてな用語で「言及」)に事前連絡は不要です
出典を示して頂けるならコピーペーストも自由にどうぞ。
って言うかリンクやツイートでgoogleの表示順が上がるので大歓迎