横軸に光の強さ、縦軸にデンプンの時間当たりの増減をとったグラフの問題があります。 この問題のポイントは、水平な補助線を一本書き込むことです。
例題は、東洋英和女学院中の2012年(平成24年) B日程から大問の4番です。 (読みやすくする目的で問題文を少し変更しています。)
【問題】
植物について各問いに答えなさい。
光合成はデンプンをつくり,呼吸はデンプンなどの栄養分を分解してエネルギーをつくるはたらきです。
光合成でつくるデンプンの量が呼吸で消費するデンプンの量より多いとき,葉にたくわえるデンプンの量が増加します。
この増加した分は植物の成長量と考えることができます。
図は2種類の植物A,Bにおける「光の強さ」と「葉における1時間当たりのデンプンの変化量」の関係を示しています。
また,光の強さが変わっても呼吸によって分解するデンプンの量は変化しません。
なお,葉におけるデンプンの量の変化は呼吸と光合成だけで起こるものとします。
(1) 次のア~ウの光の強さのとき,植物Aはどのような状態ですか。下の1~5よりそれぞれ選び,番号で答えなさい。
ア. 光の強さ=O のとき
イ. 光の強さ=3 のとき
ウ. 光の強さ=15 のとき
<選択肢>
1 呼吸はしていないが光合成をしている。
2 光合成はしていないが呼吸をしている。
3 呼吸と光合成の両方をしているが,呼吸の方がさかんである。
4 呼吸と光合成の両方をしているが,光合成の方がさかんである。
5 呼吸と光合成の両方をしていてちょうどつりあっている。
(2) 植物Aが呼吸によって分解するデンプンの量は, 1時間当たり何gですか。
(3) 光の強さが3のとき,植物Aが光合成でつくるデンプンの量は1時間当たり何gですか。
(4) 図のデンプンの変化量は呼吸と光合成の両方によって決まります。植物Aの「光の強さ」
と「光合成でつくるデンプンの量」のグラフをかくとどのようになりますか。ただし,線は定規を使わずにかきなさい。なお,解答用紙の点線のグラフは図の植物Aと同じです。
(5) 植物Aと植物Bの成長量が同じになるとき光の強さはいくつですか。
(6)以降の設問は省略します。 デンプンの量から光にあたった時間を計算する問題と、図の植物Bとの違いを考えさせる問題でした。
【解説】
このグラフを見たら、なにはともあれ光の強さ=0のポイントから右に向かって水平な線を書き込みましょう。 とても簡単な書き込みですが、この線を一本引くだけで生徒の得点力が上がります。
東洋英和の出題者が光の強さとデンプンの量のグラフは受験生に想定したレベルよりすこし高めだと考えたのか、問題文の数行が関連知識の解説になっており、更に設問の中でも「光合成でつくる」という部分が強調されていて重要なヒントになっています。
上位校の入試問題にヒントを加えたような今回の出題は、授業で使う教材としても優れているので、大好きです。
上図の赤い水平線は呼吸によるデンプンの消費量、つまり減少を表しています。 ここが小学生にとっては難しいポイントだと思います。 だって、これってマイナスの概念ですから。
大人にとっては簡単でも、小学生はまだ「正負にまたがる数直線」も「絶対値」も「負の数の引き算」も習っていません。 ですからマイナスという考え方を使って説明してしまうと、「全然判らない」モードに入ってしまう危険性が生じます。
とりあえず手順として、
1:赤い水平線を引く、これが呼吸による消費量
2:そこから上に向かう緑色の矢印が光合成の量
と「覚えさせて」しまって良いと私は考えます。
小6ならあと一年ちょっと、中学に入ればマイナスの概念を習う訳ですから。
「呼吸は一日中」という知識がしっかりと入っている生徒なら、緑色の矢印が光合成の量ということを図から理解できてしまいます。
さて、問題の解説です。
(1) 光の強さと植物Aの状態
これは引いた水平線が何かわかれば簡単ですね。
ア. 光の強さ=O のとき 2 光合成はしていないが呼吸をしている。
イ. 光の強さ=3 のとき 5 呼吸と光合成の両方をしていてちょうどつりあっている。
ウ. 光の強さ=15 のとき 4 呼吸と光合成の両方をしているが,光合成の方がさかんである。
(2) 呼吸によるデンプン消費量
グラフの赤色の下向き矢印です。 2g
(3) 光の強さが3の時の光合成
呼吸による消費と光合成による生成が差し引きゼロになる点を「光合成の補償点」といいます。 上向きの緑色の矢印ですから 2g
(4) 光合成による生成量のグラフ
緑色の矢印の長さを、縦軸の0(ゼロ)を基準としてグラフにします。
グラフを書く問題で、私が指示しているポイント。
☆ 枠の端から端まで線を引く。(但し、はみださないこと)
☆ 曲がり角など直線部分の両端に黒丸を大きめに書く
☆ 黒丸をきちんと結んであれば、多少曲がった線でも大丈夫
(5) 成長量が何を示しているか、説明を読み取れれば正解できます。
元のグラフで植物Aと植物Bの線が交叉している点です。 7.5
【解法を手順として覚えてしまう事への補足】
入試問題で出題者が仕込む「いじわる」として「デンプンの量」ではなく「二酸化炭素の減少量」とか「酸素の増減」を縦軸にしたグラフを使う場合は、手順の丸覚えだと戸惑う可能性が出て来ます。
夏期あるいは秋以降、過去問の演習等で自分が受験するレベルの学校がそういった出題をすると気付いた時に対応をしても、基本の解法がしっかり身に付いていれば、仕組みに戻って応用動作を学ぶことは難しくありません。