苦手な単元が見つかり、昔の教材を使おうとして見つからなくって困ったことはありませんか? 『Sapixの教材管理』と題して書いて来た連続投稿の3弾目として年度をまたいだような古い教材の整理方法について提案します。
『Sapixの教材管理』に関する記事のまとめ
第1弾: Sapixの教材管理:要点は所用時間 - 駒澤塾:中学受験の算数・理科
教材の管理を3つのステップに分けて「その教材を取り出すために何分までかけて良いか」という視点で考えることを提案しました。
・週末までの期間には、瞬時に出せるようにしたい
・マンスリーの前の見直しなら、数分かかっても良い
・過年度の教材を確認するのは多少の作業を伴っても良い
第2弾: Sapixの教材管理:お薦めの製品 - 駒澤塾:中学受験の算数・理科
教材を使う3つのステップ毎に、どのような製品を使って整頓すると便利かを、取り出すための時間だけでなく次のステップに移行する時の手間も考えて、具体的なファイリング用品の例として提案しました。
それぞれのご家庭の状況によって使いやすい製品は変わりますので「これがベストです!」と押し付けるような書き方はしていませんが、読んでお分かりになるように、次の2つの組み合わせが気に入っています。
Bセット: ハンギングフォルダー+専用スタンド
どちらもフォルダーは2つ折りの形状でありフルオープンになるので、入れた教材全体を確認する際の見通し性が良いです。
Aセットですと、マンスリー前の復習が終わった後にそのまま保管用の段ボール箱に放り込めるという取り扱いの楽さがあります。 一方のBセットですと、基本的に詰め直しの作業が発生しますが、それはそれで意味が有ります。
ここからが今日の本題。
段ボール箱に詰めてアーカイブ状態になった教材を快適に取り出すための整理法です。
製造業では3Sと称して「整理・整頓・清掃」を重視します。
清掃とは、あきらかに不要な物を無くすこと。 捨ててよいお知らせのプリントや、演習を終えた計算用紙などを廃棄するのがこれに当たります。 捨てるという作業を助けるために、日付印を活用しましょう。
整頓とは、とりあえず物をきれいに揃えることです。 工場や倉庫の写真で、床に通路を示す線がペイントで描かれているのを見たことがありませんか。 資材や道具を置くときに、あの線をはみ出して置いたら(まともな事業所なら)殴られるほどの勢いで叱られるか、場合によってはグーで殴られます。 それぐらい駄目な行為です。 つまづいた場合に大怪我をしたり、事故を起こしたりしてしまいますから。 しつけの良い事業所は、資材の山もぴしっと端がそろっているものです。
教材においてフォルダーに入れるのは、ひとまとめにするということに加えて、外形を揃えて見通しを良くするという意味も持っています。
整理とは、清掃および整頓を終えた後に、利用する際の手間を最少にする対応を施しておくことです。 利用する状況を想定し、その目的のために何をしておけば良いか考えておけるとベストです。 前回の記事では、サピックスの教材を整理する方法として次のような対応を列挙しました。
※ 時系列をたどるのか(=日付や通し番号)
※ 分類の樹形図をたどるのか(=単元名や解法名)
※ ピンポイントの抽出を可能にするのか(=マトリックス表の事前準備)
さてここで、困ったことがひとつ出て来ます。
教材を段ボール箱にしまう段階で、それを将来どのような形で利用するか、正確な想定は無理ですよね。 上に兄か姉が居て経験している場合には、目の前の教材が受験までにどのような形で再利用されるか、ある程度の想像ができますが・・・
結論を書いてしまうと、Sapix教材のメインである演習問題+解答のプリントについては、一番単純な時系列、要は番号順で良いと思います。
ただし、2番目の分類の樹形図をたどるという検索方法の助けになるように、授業予定表をコピーして段ボール箱の蓋に糊付けしておきましょう。 各学期のシラバスの冊子も段ボール箱のそばに常備しておくと、もう少し詳しく取り出す号を絞り込みたい時に役立ちます。
2つ目のステップまでハンギングフォルダーを使っている場合、フォルダーから出して段ボール箱に詰めなおす作業が発生しますので、保管を前提とした処理をするチャンスです。 前の記事にも書きましたが、段ボール箱に教材を詰める場合は「戻しやすさ」を重視しましょう。
B4のプリントを平らに伸ばした状態で箱に詰めるよりも、2つ折りにして詰めた方が出し入れが楽だと私は感じます。
床に並べて置くスペースが有るなら、書類保管用の段ボール箱を使わなくても、これで良い訳です。
ここから下は、もっと高度なレベルを望んだ場合の教材管理の話です。
二月の勝者に登場した「Phenix」生の上杉陸斗君のように繰り返し演習のために教材をコピーするような場合、どうせ機械に読み取らせるのならコピーでなくPDFにスキャンしてしまい、ついでに解答・解説の冊子もPDF化しておくと、キーワードで自由に検索できます。
シラバスから第何号に載っている単元なのか選び出し、そのPDFファイルをキーワードで検索すると一発で探している問題にたどりつけます。
私は大判サイズのスキャニングがしたくて、エプソンの複合機をジャンク品で買って使っています。
教材をPDF化して扱い始めると、向きの変更やトリミング、ページの追加・削除・順番の入れ替えなどをしたくなります。
ScanSnapに付属の管理ソフト「ScanSnap Organizer」などでも、かなりの所まで出来ますが、機能が網羅された専用ソフトにはかないません。
PDFを取り扱うソフトは、値段の安いJustSystemsさんの製品に浮気していたこともありましたが、結局は使い勝手の良いアドビのAcrobatに戻って来ました。 現在のサブスクリプション版は、パソコンが急に壊れたような場合にも、前のマシンの使用権をオンラインで廃棄すれば新しいマシンですぐに再登録できるので気に入ってます。
日付順(番号順)で段ボール箱に詰めた場合も、PDF化して検索する場合も、調べたい問題の単元の名前や、解き方の呼称が最初の一歩になります。 つまり、列挙では「マトリックス表の事前準備」と書いた整理方法です。
3年分くらいの塾の教材から家庭内で取り出す場合でしたら、ある程度まで絞り込めたら残りは力技で検索できますので「△△算」の単位での分類で問題ありません。。 しかし先生として生徒を指導する場面では、「速さ・旅人算・円周路・出会いと追いつき・比の利用」くらいまで絞り込んで、ぴったりの問題を即座に取り出したいです。
分類の樹形図で、家庭内では2段階目あたりまでの絞り込みが出来れば充分なのに対して、指導の場面では4段階目あたりまでの分類整理が出来ている事が望ましいと言える訳です。
その段階まで追い込んで行こうとすると、「分類学」の視点からの体系つくりが必要になります。 私は、この何年かコツコツと算数の単元の一覧表を作って来ています。
komazawajuku.hatenablog.com上の記事の中でも、いずれ「分類学から見た受験算数の解法」という切り口で記事にしたいと思っています、と書いていますが、たぶん「算数の単元とは何か」という表題で改めて書くことになると思います。