Sapix生の保護者様のブログで一回は登場する話題が「教材の整理がたいへん!」ではないでしょうか。 多くの方が整理の方法について論じておられますが、何を使うかという「道具」に視点が偏っているように感じます。 大切なのは基礎となる考え方と設計です。
教材の整理に大切なのは、以下の2点の目的を明確にすることです。
★何のために整理をするのか? →子供の円滑な学習のため
★整理することで何を実現するのか? →教材を適時取り出すため
それらの目的を実現するための手段として考えれば、必要な設計が明確になります。
☆教材はライフサイクルの有る生き物であると認識する。
☆サイクルの各時期において入手に要する時間を設計する。
☆出来る限り資料が誕生する時に廃棄の時期を設定しておく。
そしてそれらの設計に何が必要か考えれば、準備する道具が明確になります。
整理・整頓の話は使用する道具から入りがちですが、実はこれ、順番が逆です。
最初の目的に関しては、その要素が対策として次の設計に含まれるので省略し、必要な設計に列挙した3項目の話を以下に展開してみました。
資料はライフサイクルの有る生き物であると認識する。
考えてみれば、あたりまえのことです。
その週の教材は週末までの期間には頻繁に使われ、マンスリーの前に見直しに使われ、弱点補強の目的で過年度の分が掘り起こされ、・・・最終的に、受験が終われば不要になります。 そのライフサイクルの中の折々で資料に何を求めるか、ということから次の検討に進みます。
ライフサイクルの各時期において入手に要する時間を設計する。
教材は使うために保管する訳ですよね。これもあたりまえのことですが。
保管するということは、そこから取り出すという作業が必須になります。
もちろん、どんな場合でも瞬時に手元に得られるのがベストですが、ライフサイクルの各時期で手元に出すための許容時間は変わって来ます。
・週末までの期間には、瞬時に出せるようにしたいです
・マンスリーの前の見直しなら、数分かかっても良いでしょう
・弱点克服の目的で過年度の教材を確認するなら、最大で何分で出せれば良い?
これが物理的な保管方法を決める際の要件になります。
整理・整頓の道具から検討に入ってしまい途中で頓挫するのは、入手に要する時間を全てに対して『瞬時』で設計してしまい、教材の量に追いつかずに破綻するというケースが多いです。
教材は、そのライフサイクルの各時期において、保管の形態を変えて行けるとうまく管理できます。 その時に設計の基本になるのは「何分で目的の教材を取り出したいか」です。
出来る限り資料が誕生する時に廃棄の時期を設定しておく。
ある意味で、教材の場合は廃棄の時期は明確ですね。
受験が終わったら、です。
廃棄の時期を明確にする効果が出るのは、教材よりも「お知らせ」とか「予定表」などです。 これらについては、手にした瞬間に廃棄の時期を書き込んでおくことをお勧めします。
たとえば資料の右肩に赤で『6/末 ハイキ可』と書き込んでおけば、いちいち内容に目を通さなくても7月になっていればスパっと捨てられます。 捨てられれば資料全体の量が減ります。 量が減れば目的の資料を見つけ易くなります。
検索の対象となる教材の量を減らすというのは非常に効果の有る対策です。 たとえば教材についても、そのライフサイクルに対応して、即座に見つけたい物は出来るだけ量が少なくなるようにし、時間がかかっても良い過年度の教材は大きな箱にまとめて保管、という方法が有効です。
教材に関して廃棄する時期は受験が終わったらですが、大きな箱に詰める(アーカイブする)ということは、廃棄の一歩手前の処理をすることだと考えて良いと思います。
という事で、
教材の保管と再利用に関して骨格を作るために必要な設計を考えてみました。
必要な設計に対応して準備する道具に関しては、次の記事で書きます。
Sapixの教材管理:お薦めの製品 - 駒澤塾:中学受験の算数・理科
さて、
整理の事例を知りたくていくつかのブログを読んだのですが、得意な科目(社会)に関しては教材のうちの問題部分を捨ててしまうという方がいらっしゃいました。 それを見て、私は「なるほど」と思いました。
Sapixの教材は、なぜ保管したり、時間が経ってからの再利用が難しいのか?
保管したり、再利用をそもそも考えていないからではないでしょうか。
その週の単元をその週のうちに「仕上げてしまう」なら、保管も再利用も不要です。
あの量を週内に仕上げてしまう・・・御三家レベルに合格する子なら可能。
授業や教材を御三家レベルだけに狙いを絞ってデザインしている。
Sapixは、そういう学習塾だと私は感じています。
その潔さ、シンプルさ、嫌いではありません・・・むしろ好きだと言っても良いかも。
今の在籍生の規模になっても基本設計を変えていないのは尊敬します。
もしもSapixが中間層に合わせて授業や教材のレベルを下げたりしたら、
学習塾として凋落の第一歩になるのでは?と危惧しているほどです。
あくまで私見ですし、繰り返しますが私はSapixの方針の明確さが好きです。
ただ、二月の勝者に登場した「Phenix」生の上杉陸斗君のように繰り返し演習のために教材を3部コピーしてもらっているような生徒以外、つまり人数的には多数派の生徒には大人によるフォローが重要な意味を持つはずですので、教材の保管と再利用を効率的に実現できるようにして、良い手助けを出来るようにしてあげたいです。