2019年1月13日:追記:ニュートン算の解き方については新しい原稿を書きましたので、そちらをご覧下さい。 『ニュートン算:確定版の解法・たとえ話編』
今日から三連戦で<ニュートン算>を扱います。 初日の今日は苦手ちゃん対策、明日は上級者向け最速の解法、最終日は旅人算系の解法、の予定です。 3日間とも同じ例題を使います。 世田谷学園の2006年(平成18年)の大問6番(1)です。
中学受験の算数で「大人でも解けない!」という単元のひとつに<ニュートン算>があります。 大手塾はどこも小5の秋と小6の春に授業が設定されています。 小5の秋の授業では下位クラスでは扱わない場合もあるかも知れませんが、小6では全員が学習するはずです。
今日の記事は、苦手な生徒に「解ける感」をもたせることを目的とした解法の紹介です。
【問題】
一定の割合で水が流れこんでいる水そうがあります。 この水そうに水がいっぱいに入っているとき、 7台のポンプで水をくみ出すと30分で、 10台のポンプで水をくみ出すと12分で水がなくなります。 ポンプはすべて同じ割合で水をくみ出します。 これについて、次の問いに答えなさい。
(1) 満水の水を 13台のポンプでくみ出すとき、水そうの水は何分でなくなりますか。
【一般的な解法】
一般的な解法は、まず線分図を書いて、1分間に流れ込む水の量と1台のポンプが1分間にくみ出す水の量をそれぞれ比の値にして、差を調べることで両者の関係を調べるというものです。
線分図の本数を1本にしたり、流れ込む水の量を「流れこみ12分」といった言葉による表現にして見た目の比の数をひとつにしたりするバリエーションもありますが、いずれにせよ生徒から返って来るせりふは 「何やってるか、わからない。」というものです。
あまりにも「わからない」という発言が多いので、置き換えてみたのがこれです。
【置き換えした問題文】
食いしん坊の弟と怒りん坊の兄の話。
食いしん坊の弟が居ました。 ある日、弟は兄のおやつを食べてしまい、これは酷い目に会わされると思って家から逃げ出しました。 ある距離まで弟が逃げたところで兄が気付き、⑦の速さで弟を追いかけました。 すると30分で逃げる弟に追いつき、弟はここには書けないような目に会いました。
翌日、食いしん坊の弟は兄のおやつを食べて前の日と同じ速さで逃げ出しました。 うっかり者の兄は前の日と同じ距離まで弟が逃げたところで気付き、さすがに2度目なので激怒して⑩の速さで追いかけました。 すると12分で弟は追いつかれ、以下省略な目に会いました。
もしも兄が⑬の速さで追いかけると、弟は何分後に人生を後悔することになりますか?
【解説】
ニュートン算に対しては「わからない」を連発していた生徒が、<旅人算・追いつき>に置き換えたとたんに<状況図>を書き<クチビル>を作って解いてしまいます。
兄の速さを【7】と【10】とすると、 1日目と2日目の差から、
【7】 × 30 - 【10】 × 12 = 【90】 ・・・弟が18分で進む距離に相当
よって、弟の速さは 【90】 ÷ 18 = 【5】
兄が追いかけ始める時までに弟が逃げた距離は1日目も2日目も、
【210】 - 【5】 × 30 = 【60】
よって<旅人算・追いつき>で
【60】 ÷ ( 【13】 - 【5】 ) = 7.5 (分)
置き換えた問題なら解ける、その理由は何でしょう?
※ 問題そのものは<仕事算>の応用問題としての<ニュートン算>
※ 置き換えた問題は<旅人算・追いつき>を<差を調べる>で難しくしたもの
ひとつ言えることは、注目する量である「水の量」と、「ふたりの距離」の直感的な把握のしやすさの違いですが、それ以上に「慣れ」があると私は思います。
小6の春の段階なら<旅人算・追いつき>と<比>の問題は飽きるほど解いて来ているはずで、その繰り返しの経験が「難しいけど、解けそう」という前向きな姿勢を生むのではないかということです。
小6の秋頃、算数の中位クラスで私はこんな話をすることがあります。
難しい問題を前にしたとき、最上位クラスの生徒と君たちの違いが何かわかるか?
問題を見た瞬間、うわぁって顔になるのは同じなんだ。
だけど違うのはその先だ。 かれらはすごい勢いで紙の上に整理を始める。
これまで頑張って来た自分を信じて、解けない問題は無いと信じているからだ。
あと4ヶ月もある。 この4ヶ月の頑張りが君たちの2月の表情を決める。
あと4ヶ月、いっしょに頑張ろう。