駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

立方体の切断:斜めに4回削ぐ

立方体の切断を作って体験する紙製のキットの中から、複数回の切断をした模型の紹介です。 この模型を手に取って眺めれば、四谷大塚の予習シリーズにある必修例題の別解が容易に見つかります。

 

まずは、予習シリーズ 小6 上巻 第15回「立体図形(2)」から問題の紹介です。 

【問題】必修例題2 「立体の構成②」

図は、1辺が 6 cmの立方体の4つの辺の中点A,B,C,Dを結んで作った立体です。 この立体の体積は何立方センチメートルですか。

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【解法】 ・・・まず、予習シリーズで説明されている解き方です。

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AB(あるいは CD) の長さが 6cmとわかっていますから、この辺が高さとなるような底面を考えます。 高さと底面は垂直な関係にあることに注意すると、辺 AB の中点を M として、三角形 MCD で、2つの合同な三角すいに分割すればよいことがわかります。 

 6 × 6 ÷ 2 = 18 (cm3) ・・・三角形 MCD

より、これを底面とすると、2つの三角すいは、 底面を共有する、高さの和が 6cmの立体 になりますから、この立体の体積は、

 18 × 6 ÷ 3 =  36 (cm3)  

 

以上が予習シリーズに記載された解説です。 

以前は私も、この解説で説明されている手順通りに理解させようと教えていたのですが、算数が苦手な生徒から返って来るのは 「わかんない、わかんない、ぜんぜんわかんない。」の合唱でした。

 

そもそも求める立体とは、立方体から4回削ぎとった残りです。 この時点で、見取り図と説明文から立体の姿を正確にイメージ出来るのは、相当な「立体感覚」を身に付けた生徒だけです。 

更にこの解説では、その求める立体を半分に切断しています。 切断する目的は垂直の位置関係になる高さと底面を新しく作り出すためです。 

ここ、大人には気付きにくいのですが、小学校6年生はまだ身に付けていない知識を使っています。 それは「平面と直線が垂直の位置関係にある」とはどういうことか、ということ。

そんなの簡単ではないか?と思われますか。 

空間における直線と直線や、直線と平面の「平行」「垂直」「ねじれ」を学ぶのは中学校の数学です。 簡単だと思われるのは、中1で飽きるほど繰り返した演習の記憶を忘れているからです。 

 

平面図形の解法のポイントのひとつ<三角形の面積は直角を探せ!無ければ作れ!>を骨の髄まで叩き込んである生徒は、比較的に早く底面と高さを垂直な関係の中から探す手順を身に付けるのですが、理解への敷居の高い解法であるのは確かです。 

 参考:<三角形の面積は直角を探せ!無ければ作れ!>を書いた記事

komazawajuku.hatenablog.com

 

立方体 切断キット05 は、今回取り上げた例題の切り方そのものの模型です。  

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この模型をさわらせながら、「知りたい立体の体積ではなく、要らない立体の体積を計算する」という手順で解かせると、正解を出せない生徒は居ません。 

 

それでは一度ケースから部品を全部出して、それを戻しながら要らない立体の体積を求めて行きましょう。 

(なお、立方体の大きさは上の問題に合わせて一辺6cmとします。)

 

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三角柱が2本です。

 3cm × 6cm ÷ 2 = 9cm2 ・・・底面積

 9cm2 × 6cm = 54cm3 ・・・三角柱

 54cm3 × 2(本) = 108cm3

 

 

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体積を求めたい立体が合体しました。

まだ体積を計算していない空間は・・・四角錐が2個です。

 

 

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最後に置いた四角錐を上下逆にして容器の上に置いてみると

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点線で示した長さが四角錐の高さで、立方体の一辺と同じ6cmです。

よって

 3cm × 6cm × 6cm ÷ 3 = 36cm3 ・・・四角錐

 36cm3 × (2個) = 72cm3

 

元の立方体の体積は 6 × 6 × 6 = 216cm3 ですから、

 216 - 108 - 72 =  36 (cm3) 

 

ひとつも難しいことをしていません。

『場合の数』の「余事象」もそうですけれど、問題の正解率を下げるテクニック(=出題者のいぢわる)を打ち破るワザのひとつが「逆を考えてみる」という解き方です。 『推論』でもそれをするかしないかで天国と地獄に分かれるケースが多々ありますので、難関校を受ける生徒は頭の片隅に置いておくと役に立つはずです。

 

立方体の切断模型の話、明日も続きます。

 

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