5月14日にサル学やイモ洗い行動で知られる河合雅雄さんが亡くなりました。 ご冥福をお祈りいたします。 来年の入試に著書が出題される可能性を考えてみるために出題実績を調べようと、ひさしぶりに日能研の読書ガイドというデータベースを使ってみました。
【河合雅雄(かわい まさを)】
霊長類の行動研究(いわゆるサル学)において、ニホンザルのイモ洗い行動、小麦の砂金採集法の発見や、アフリカにおけるゴリラ、ゲラダヒヒなどの調査観察などで、類人猿が高度な社会性を持ち、文化として世代間で伝承されていることなどを明らかにされた方です。
草山万兎(くさやま-まと)の名前で児童文学もたくさん書かれています。
【日能研の読書ガイド】
右のサイドバーに置いた「お勧めサイト(はてなブックマーク)」にリンクを登録してあります。
今日の記事を書くにあたり、下層ページへの直リンクは避けたくて日能研のホームページからの入り方を探したのですが、リンクするボタンは見つからず、サイトマップのページにも読書ガイドの名前は見つかりませんでした。
Googleで検索すると出て来ますので、ページとしては公開された形で現存しているようです。
ページ右上の「検索」ボタンから詳細検索のページを呼び出し、検索条件最下段の「年度」のプルダウンメニューをクリックしてみると2002年度から2014年度までしか候補に登場しませんので、サービス提供終了ページとして更新停止されているのかも知れません。
著者名を河合雅雄にして検索してみました。
8冊のタイトルがみつかりました。
読書ガイドのページで本のタイトルをクリックすると出題された学校名と年度が表示されます。
その中から3冊ほど例を挙げてみます。
この下に並べたのはAmazon の商品ページへのリンクです。
「子どもと自然」
出題校:高田中学2003年、開智中学2004年、横浜英和女学院2004年、森村学園2005年、星野学園2005年、攻玉社2010年、玉川学園2012年、東京家政学院2012年
「小さな博物誌」
出題校:浦和明けの星女子2005年、跡見学園2005年、明星学園2005年、横浜中学2019年
「学問の冒険」
出題校:市川中学2005年、成城中学2006年、開智中学2014年
【開智中学の入試問題例】
開智中学2014年の問題を四谷大塚の過去問データベース(はてなブックマークに入れてあります)から取り出して見てみました。
入試問題として切り出された部分は、河合さんがサルの研究を始めるために大分県の高崎山に行き、それまでの飼いうさぎの個体識別がサルには通用せず、半分ノイローゼになった(原文ママ)というエピソードから始まります。
サルの個体識別は、研究者がサルの群れの中に浸り、かれらと生活の場を同じくすることによって、相貌認知という能力を得ることで出来るようになったそうです。
しかし共感法と名付けたこの観察方法は、外国の学者をはじめとして欧米流の方法を至上とする学者達からは批判を浴びた手法でした。
引用の後半では共感法が日本的な発想の上に構築された研究法であり、それは欧米流のキリスト教的世界観からの脱却でなされた物であると述べられています。
このパラダイムシフトについては、私も科学雑誌やテレビの科学番組でたくさん見て来ました。
高崎山のサルのイモ洗い行動とか、初めて見たときにはびっくりした記憶が鮮明にあります。
【国語の入試問題として見ると】
開智中学2014年の問題を中学受験の面から見ると、今回の引用部分で下記の記事の 5) に書いた「変化」に当たるものは二つあったと思います。
国語で「学ぶ」こと:知識と倫理の土台 - 駒澤塾:中学受験の算数・理科
一つ目の変化は、河合さん自身の考え方の変化。
もうひとつは、動物行動学の「研究方法に関する常識」の変化。
その二つの「変化」が何によって起きたのか、変化の結果として何が変わったのかに注目すると、学校の出した各々の設問が受験生に何を問うているのか想像できると思います。
【手元の過去問の検索】
日能研の読書ガイドのデータ収録が2014年度まででしたので、手元にある過去問のPDFを「河合」というキーワードで横断的に検索してみました。
読書ガイドに収録されていない著書では、「望遠鏡から見た世界」が青陵中学の2014年第2回A試験で出題されているのを発見しました。
また、「ふしぎの博物誌」は読書ガイドに登録された学校以外に、玉川聖学院の2011年第2回試験でも出題されていました。
あとは、2020年の浅野中学で試験が検索にヒットしたのですが、そこに使われていた作品は、安野光雄さんの「かんがえる子ども」でした。
あれ?と思って確かめてみたら、問題文として引用された文中で河合雅雄さんの本に触れていました。
【河合隼雄さんの本も多く出題されている】
河合雅雄さんの兄の河合隼雄さんの本も多くの入試に使われていますので、要チェックです。