太陽の南中高度(南中した時の地平線から見上げる角度)を使って地球の大きさを計算させる問題は、解き方を習得しておきたい問題のひとつですが、南中高度でなく経度を使って解かせるという問題が今年の立教新座で出ましたので解説します。
南中高度を使って地球の大きさを測定する方法は、紀元前240年にエジプトに住んでいたギリシア人の学者エラトステネスが用いた方法です。 夏至の日に北回帰線上にあるシエネという町の井戸にまっすぐに太陽の光が差し込むことを利用して、同じ日に北の方にあるアレキサンドリアの町で南中高度を測り、その角度と2つの町の距離から地球の大きさを計算しました。 驚くことに2000年以上前に、ほぼ正確な値を得ています。 (詳しい方法は「エラトステネス 地球の大きさ」で検索すると多くの解説ページが出て来ます。)
エラトステネスについては「エラトステネスの篩(ふるい)」という素数のリストを得る方法でも知られていて、これも中学受験の算数で出題に使われます。 このブログでも「素数のトントンパッ」というタイトルで記事にしました。
さて、エラトステネスの方法を使って地球の大きさを調べるという問題では、ほぼ例外なく南北の一直線上に並んだ都市を使っています。 また、「同時刻に角度を調べたら」という記述が入っている場合も多いです。
実はこの「南北に並んでいる」と「同時刻に調べる」って、必須の条件じゃないんです。
たとえば測定に用いる2つの都市のあいだで、経度にして15度、距離にしたら約1600キロも子午線がずれていたら?
影響を受けるのは双方の都市での南中時刻ですよね。 経度にして15度ずれていたら南中時刻はちょうど1時間ずれます。
太陽の天球上の位置は一年間で 23.4度 × 2 の46.8度、上下に動きますので厳密に言えば1時間のずれでも誤差の原因になります。 しかし半年ごとに行き来する中での1時間ですし、夏至と冬至の頃は上下の変化もゆるやかな時期ですので影響は少ないです。 そもそもエラトステネスの測定での精度は、角度が「360度の50分の1」というレベルですし、距離も歩測によるものでしたので実質的な影響はなかったはず。
もちろん経度が大きくずれていたら2つの都市間の距離が三角形の斜辺になりますので、これに対する対応が必要にはなります。
入試問題で「南北にならんだ都市」、「同じ時刻」という条件を明記するのは、無視しても良い条件を明確に示すことで南中高度の差と都市間の距離に注目させ、問題の難度を下げるという意味があると考えます。
2つの都市を赤道上に設定して、南中高度ではなく緯度の値を使って地球の大きさを計算させると、問題の難易度はかなり下がります。 一日の長さ1440分を360度で割って、経度1度あたりの時差が4分になるという計算は受験生なら必ず一度はしていますから、距離を緯度の差で割って360倍すれば一周の長さになるという計算は容易に理解できる訳です。
ところが2つの都市を赤道上以外の場所に設定すると、問題はとたんに難しくなります。 今年の立教新座(1月25日)では、大問の1番でこれが出ました。 南中高度や緯度(南北の位置関係)ではなく、経度(東西の位置関係)を北緯35.87度の場所で尋ねる問題が出たのです。 こちらも先日ご紹介したポケモンの問題に負けないくらい「ひねり」の効いた出題です。
文字数が多くなって来たので、出題のご紹介と解説は明日にまわします。