駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

SAPIXの復習主義:その3

その2ではSAPIXの生徒が「予習」をした場合に何が起きるか考え、先取り学習の目的で中古教材や他塾の解説資料を購入して勉強させるのは反対ですと書きました。 今回はクラスアップ目的で【授業後の「復習」にテコ入れをする】ことについて考えました。 連続投稿した『SAPIXの復習主義』は、これで一区切りです。

 

クラスアップあるいは現状クラス維持のために、自宅の学習で標準カリキュラム以外に何らかの取り組みをできないか検討しなかったご家庭は無いと思います。 ましてや、一時的な不調、高学年での入塾、生徒本人の成長に伴って伸び代が出て来たなど、追いつき・追い越す必要が高まった場合、そのために何をすれば良いか、何ができるかというのは切実な課題になります。

 

SAPIXとしては当然ながら、塾からの指示をしっかりやっていれば大丈夫、外部の補習塾や家庭教師は不要であると言うはずです。 塾の方針としては授業で取り扱わなかったEの問題を無理して解かせるよりも、取り扱った(=解き方を指導した)問題を繰り返しの演習でしっかりと定着させるべきだということで、これは正論です。

 

私はSAPIXで講師をした経験はありませんが、おそらく保護者様からのこんな相談をたくさん受けているのではないかなと想像します。

・ なんとしてもクラスを上げたいんです。

・ 授業で扱っていないEまで全部やらせたいのですけれど、駄目ですか?

・ だって組分けにはEの問題も出るんでしょ?

・ アルファの子たちってEの問題もやっているんでしょ。

・ だから解説を読んでやらそうとしても「わからない」って言うんです。

・ 先生、どうしたら良いでしょう?

この問い合わせと同じものを、どこかで読んだ記憶の有る方もいるかも知れません。 これです。

komazawajuku.hatenablog.comスキーでのたとえ話がわかりにくいと言われ、翌日ゴルフのたとえ話を書いたらもっとわかりにくくなったと言われた話です。

それはともかく、

言いたかったことは、授業のクラスや演習させる問題は生徒のレベルに合ったものとすべきであり、無理に難問をやらせるとかえって学力は伸びなくなる、という当然なことです。

SAPIXにおいても「授業で取り扱った問題」をデイリーサポートの裏面で解き直し、さらにデイリーサピックスなどの補助教材でしっかり定着させるのが基本です。 

 

しかし、

こんな状況を想像してしまいました。

AからEの教材のうちCあたりまでを授業で取り扱うクラスに居た子が、がぜんやる気を出せてクラスアップをはたせたとします。 スパイラルフローにより以前やった単元をしばらくたって授業で受けますが、今回の前の方にわからない所が有ったので前回のデイリーサポートを引っ張り出して調べてみたとします。 すると、前回はDやEに入っていた問題が今回はAやBに割り振られていることがわかったりするのです。

前回は下のほうのクラスだったのでDやEの問題は解説を受けていない、今回はクラスが上がったのでAやBは取り扱わなかった。 解説を読んでみても個々の数字はわかるけれど、解き方をどうやって組み上げるのかわかった気がしない。 ぽっこり抜けてしまった。 さて、どうしよう?

 

このような状況では、それでなくても手一杯の負担となる通常のカリキュラムと並行して抜けている問題の解き方を学ばなければならないわけで、教材プリントの解説だけを頼ったのでは厳しい作業になります。 解説資料を予習目的で購入するのは大反対ですが、この目的で入手するというのは仕方が無いのかもしれません。 

 

小5の算数という状況で考えると、ぽっこり抜け問題への対策には二通りあります。

対策1: AやBに抜けが出たことに気付いてから対策する

対策2: 予防策的に毎回の授業でDやEまで全て解いておく

 

《対策1: AやBに抜けが出たことに気付いてから対策する》

AやBの抜けに気付いたのが授業直後ならば、プリント後半の問題に対して授業で教わった知識を応用すれば解ける問題も多いはず。 その時点でぽっこり抜けた穴に気付くためには、授業でプリント前半の問題を扱わないクラスに居る場合でも、帰宅後すぐにAやBを含めた全問を解いておくべきと考えます。

困るのは、DやEについての解説は比較的容易にネット上で見つけ易いけれど、AやBについての詳しい解説は見つけにくいことです。 といって全問解説をうたう有料教材を毎回買うとのいうのも出費面において厳しいものが有ります。 

授業ごとに1回限定という先生への質問の機会をこれに使うしかないですね。 出来る限りのところまで自分で勉強して、それを持参することで最大限の指導を引き出しましょう。 

komazawajuku.hatenablog.com

 

《対策2: 予防策的に扱わなかったDやEまで解いておく》

できれば抜けた問題に気付いてから対策を取るのではなく、毎回の授業のたびに「全問の解き方に触れておく」方が望ましいです。 

対策1とひとまとめにして、「デイリーサポートは全問解いておく」ということになります。

 

ただしこちらの場合、自宅で解いてみるのは授業で扱わなかったDやEですから難しいです。 手を付ける前に必ず設定しておいて欲しいのは「到達レベルの目標」です。

① 全問を解けるようになっておく

② 解き方を見た直後には正解を出せる

③ なんとなく解き方に触れてみた

もしも何も言わずに「授業後には全ての問題を解いておきましょう。」と言うと、ほとんどの保護者様は目標を ①としてしまい、「解けるように」ならせようとして苦労をするはずです。 しかし、後の方の問題を扱わないクラスに居る状況では、②か③までで留めるべきです。 

 

②や③のレベルで次のスパイラルで大丈夫なのか?

大丈夫だと考えます。 SAPIXのカリキュラムを追ってみると「あれ? なんでこのタイミングでこの解法を教えているのだろう?」と感じることが有ります。 そのような時に少し引いてスパイラルフローの流れを鳥瞰的に眺めると「なるほど、将来のこの単元に向けて考え方や解法の仕込みをしているのか」と気付くことが有ります。 

そうです。 今回の復習では軽く触れておくだけに留めても、その単元が次のスパイラルで登場するまでには色々な考え方や解法を身に付けている訳で、次回は解けるという可能性が高いのです。 

 

まとめると、

小5の算数では授業後にAからEまでの全問をひととおり解いておくべきと考えます。 ただし、DやEを授業で取り扱わないクラスに居る場合は、無理をして「解ける」レベルを目指さず「解法に触れた記憶が残る」レベルで留めて良いと考えます。

もちろん、復習で「解ける」レベルに達しておくのがベストですが、そのレベルまで到達させられるのはよほど良い環境を準備できた場合だけです。 

 

小6なかばの時期に入って来ると、全問を解いてみる、という原則は変わって来ると考えます。 なにしろ、塾の授業として「次のスパイラル」というのは無い単元が増えてくるわけですから、受験する学校のレベルによっては後の方の問題はやらなくて良いものが出て来ます。

「何をしないか。」という選択や、入試まで時間の少なくなった時期、たとえば小6の秋に苦手が発覚した場合にどう補うのかといった話は、その頃にいずれ、また。

 

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