駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

SAPIXの復習主義:その1

前回、前々回、「予習主義」をうたう四谷大塚本体と、「復習主義」を取る準拠塾との比較をしました。 予習主義と復習主義の話でSAPIXに触れない訳にはいきませんね。 なにしろ授業をプリントで行い、予習という行為そのものを不可能にしている塾ですから。

 

SAPIXにも冊子の形のテキストはありますが、それらは「理科コアプラス」とか「算数分野別問題集」といった補助教材だけで、授業はその都度配布されるプリントで行われます。

 

プリントによる授業というと私の記憶に鮮明なのは算数専門塾の「深沢塾」です。 黒板の脇にリコピー(いわゆる青焼き)のコピー機があって、授業を進めながら進捗に応じた問題をその場で作って使っていました。 最前列に座って寺子屋式の長机で問題を解いている時にただよって来るリコピーの匂いが記憶に焼きついています。

NHK土曜ドラマの「みかづき」でもプリントによる演習をやっていましたが、こちらはもっと範囲を絞り込んだ「個人ごとの問題プリント」でした。 

深沢塾ではクラスの進捗に応じたプリント教材、みかづきでは生徒個人に対応したプリント教材でした。 SAPIXの教材も見た目は同様なプリント教材ですが、内容は大きく違います。

 

小5の算数を例に挙げれば、授業と自宅学習で使う教材はデイリーサポートとデイリーサピックスが軸になります。

導入授業の教材はデイリーサポートという名称で、B4サイズ横長のプリントをホチキスで綴じたものです。 レベル別にAからEまでの5枚で構成され、表と裏には同じ問題が印刷されています。 所属するクラスに応じて授業で取り上げる問題の範囲が変わり、下位クラスでは途中までしか取り扱いません。 授業後にはA4サイズの解答を受け取り、これにはAからEまで全ての解説が印刷されています。

自宅での演習では指示された問題(基本的に授業で説明されたもの)に対して、プリントの裏側に印刷された同じ問題を解きなおします。 またデイリーサピックスという問題冊子もあり、授業で使ったデイリーサポートの数字を変えた問題が収録されていますが、デイリーサポートとは違い難易度別ではなく問題の種類別にページが構成されています。 解説は同じ冊子の後ろの方のページに印刷されている形式です。 

 

本当はこれに加えてデイリーチェックやウィークリーチェックなどのテスト類や、基礎トレや小6の分野別補充プリントなどの教材類が有り、それらも含めたトータルの学習環境として「どの時期に」「どの教材を使って」「何を学習する」といった体系として考えるべきですが、複雑になりすぎるので、シンプルに小5の算数、それも導入授業と自宅演習のみを切り取って流れを追ってみます。

 

SAPIXのデイリーサポートと四谷大塚の予習シリーズを比べたときに即座に気付くのは、解き方の説明が書いてあるかどうかです。 

SAPIXのデイリーサポートはAからEの5ページに問題だけが4問(ないし3問)ずつ並んでいるだけのシンプルな構成です。 

対して四谷大塚の予習シリーズは初めにいくつかの例題が詳細な解説付きで並び、それぞれの例題に対して類題が2つ有り、その類題についても詳しい解説が解答冊子に有ります。 そしてその後ろに基本問題と練習問題がセットになって一つの単元が構成されています。 もちろん基本問題と練習問題にも詳しい解説が解答冊子に有ります。

予習主義の四谷大塚では指示に従って前半を自宅での事前学習に使い、復習主義の提携塾では後半の問題を宿題として自宅で解く形になります。 

 

このような形式のテキストを使って生徒が教室でどのように授業を受けるのかイメージしてみます。 SAPIXでは、まず問題の演習ありき、ですね。 演習の進め方としては「Aの1番から順番に」ではなくて、AからEのシートの中からあっちへ飛びこっちへ戻りしながら演習させ、解説していくのだと聞いています。

  参照:学研新書『有名塾では何を教えているのか?中学受験 SAPIXの授業』 | 学研出版サイト

 

まず「解法」を習い、それを問題演習で拡げていく進め方を「演繹的」と言うなら、SAPIXの演習の中から生徒が解き方を発見していく進め方は「帰納的」と言えると思います。 

上に挙げた本でも、新しい発見にワクワクしながら演習に取り組む生徒の様子がレポートされています。 じっさい、知的な発見をするというのは心躍る体験です。 御三家、難関校の合格者を輩出する塾であるというのも良く判ります。

 

とても良い体系なのですが、SAPIXへ通塾する生徒から数多く発せられる悩み 「ついていけない」に対して次回で考察します。

 

 

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